第10話 襲撃
イースが泣いていたため、しばらく休んでからヨルド達は再び奥を目指して進み続けた。
すると、先頭を歩いていたメラが、急に悲鳴をあげた。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
メラが照らした先には、巨大なトロールがいる。
「トロール‼3メートルくらいありそうだ」
ライルがすぐに剣を抜く。
「襲ってくるぞ‼……あれ?」
ヨルドも違和感に気がついた。
「動かない?もう死んでいる?」
どうやら、イースも同じことを思ったようだ。
トロールの皮膚は、ところどころ焼け焦げたように黒くなっていた。特に頭の損傷は激しく、顔面の半分以上が黒くなっていた。
「おい!もう一体いるぞ」
アルキンが叫んだ方を見るが、そちらのトロールも動く様子はなかった。先ほどのトロールと違って外傷は少なく黒くなっている部位も少ない。ただ、火傷のような跡がところどころある。
「燃えたのか?こっちの方が、損傷が少ないのは何でだ?」
アルキンは、不思議そうにトロールを見比べている。
「これって炎の魔術師の仕業なんじゃないか」
ライルは、腕組みしながらそう呟いた。
「私たちが来る前に誰か来たってこと?じゃあ、もう真鏡は奪われているんじゃない?」
メラの言葉に、周囲は静まり返った。
もしそうなら、ヨルドたちがここまで来た意味はなくなる。
「もしくは、まだ真鏡を持った奴が上にいるかもよ」
アイシャが人差し指で、奥の方を刺した。そこには、階段があった。その階段の上の方からは、明かりが漏れている。
「行ってみるか……」
イースの声に反対するものは、誰もいなかった。
誰が先頭を歩くか……。
そうみんなが悩みだした時に、真っ先に歩き出したのはアイシャであった。
「怖くないのか」
そう尋ねると「早く行けば、真鏡を手にできる確率もあがるでしょう」と自信満々に返された。
アイシャの後に、ライルとメラが続く。ライルは、不安そうに隣にいるメラに話しかけていた。
「上の階に何がいるんだろう。こんなやっぱり炎の魔術師かな」
「その可能性も高いわね」
「あんなトロールを殺せる奴なんて強いに決まっている。炎の魔術師だったら、どう戦えばいいんだ。死にたくないな。生きて帰って……楽しいことをしたい」
ライルの言葉に、メラも「そうね……」と同意した。
「ねぇ、メラ。ここから出たら、俺と付き合って」
ライルがいきなりメラに告白をした。衝撃を受けて、つい足が止まってしまう。
死ぬかもしれない戦いの前だから、テンションでも上がったのだろうか。パピルスも衝撃を受けたようで、進むのをやめてその場に立ち尽くした。
「あんたみたいにわけのわからない男は、お断りよ」
「これから俺のこと知っていけばいいだろう」
「大体、あんたは、私の顔しか見ていないんでしょう」
「そんなことないよ。君の強いところも、好きだ。めちゃくちゃかっこいいと思うんだ」
そうライルが言うと、メラは頬を赤く染めた。
「そ、そう。でも、今は……」
その時、階段の上から石の矢が降ってきた。
「危ないっ」
ライルがメラを押し倒した。メラとライルは石の矢を避けるように転がり落ちるが、先頭を歩いていたアイシャは数本の矢が刺さっていた。そして、力をなくして倒れたアイシャが階段の下に倒れていく。
「アイシャ!」
「大丈夫か!!」
そう呼びかけながら近づくが、返事はない。階段の上から誰かが石の矢を打ってきたのか?何かのトラップでも発生したのか?よくわからないが、敵の攻撃は一旦落ち着いたみたいだ。何の物音もしなくなった。
「大丈夫?意識はある?」
アイシャに駆け寄ったメラがそう聞くと「意識は……あるわ」とアイシャが答えた。
「よ、よかった」
しかし、アイシャは、ヒューヒューと空気が漏れたような声をしている。彼女の喉には、石の矢が刺さっていた。
「全然、よくないわ。もう私は、ここまでだってわかるでしょう。ごめん。誰か私にとどめをさして欲しいの」
「でも、まだ生きているだろう」
「はあ、はあ。喉と肺に矢が刺さって苦しいの……。もう戦えない。早く楽になりたい」
「アイシャ……」
「見ての通り私は、もうすぐ死ぬわ。このまま置いて行かれたら、ゴキブリの大群がやってくるかもしれない。みんなが次の階に行くまでに殺して欲しいの」
アイシャのすがるような声が、辺りに響き渡った。




