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ドリーム  作者: りとかた
悪夢のはじまり
6/14

焦燥と安心

いつものピロティに着いたが誰もいない。一瞬焦ったが気持ちが逸りすぎて時間を見るのを忘れていた。まだ朝の8時だ。さすがにこんな早くから来ていないことに気づき笑ってしまう。夢の話だ、何をそんなに慌ててるんだ。僕は自分が思っているより肝っ玉が小さいらしい。こんなことでは仗と凛の笑われ者になってしまう。

少し安心はしたがやはり一人ではいたくない。仕方がないので授業を受けに行こう。いつもは日課にすぎないけど今日ばかりはありがたい。イマジナリーティーチャーと言えど人の形をしたものに会えると思うと不安をまた少し忘れられる。ルカを出しても良かったけどもし仗たちに見つかってもめんどくさいのでやめることにした。

ジェーンはいつものように微笑みを湛えている。

「今日は前回の続きです。覚えていますか?ちゃんと復習してきましたか?」

そう僕に確認してくる。しかし今の気分で戦争の話はごめんしたい。なので

「先生、すいませんが今日は明るい話題がいいです。」

「あら、そう?まあ確かに戦争なんてカリキュラム選んでるのもあなたぐらいだしね。じゃあ、今日は歴史じゃなくてSFチックな話なんてどうかしら?」

ジェーンはそう言って明るい話題ができると嬉しそうに話し出した。

「問題です。元の世界で宇宙に進出したけどどうやって何光年、それ以上の距離を移動できたのでしょうか?」

僕は唸るしかできない。

宇宙に行ってる人たちがいるのは知ってる。

だけど僕は地球でまともな教育を受けれる環境になかった。

そもそも興味すらなかった。

だって僕には無関係だと思ってたから。

僕が答えれないのを見ると満足そうに鼻から息を吐き出しジェーンは続ける。

「答えはワープです!なんと人類は空間の圧縮に成功してある一地点から他の一地点に瞬時に移動する術を身につけたんですね。それを使うことで遠くの星まで移動できるようになりました。まあ、実際のところはワープは成功しても出た先で爆発して移動することしかできなかったと言うのが本当のところらしいんだけど。」

先生は少し残念そうな顔をしながら原理を軽く説明してくれる。

相対性理論なんて言われてもよくわからない。

けど理解できなくても面白い話がたくさんある。

「ワープにはね、何種類かあったんだけど主に使われてたのは重力発生装置を使った方法と光速で移動して空間を歪める方法ですね。ただ、その二つの方法に耐えられる箱が作れないのに飛ばし続けて爆発させ続けたことが問題となって資源を無駄にし続けてる分野なんて呼ばれちゃったりしたわね。けど先生はロマンがあるからこの方法に期待したいな。」

そう言って普段とは違ったジェーン先生の授業は集中できるか不安だった僕も休憩を入れながらしっかりお昼まで授業を受けてしまうくらい面白い内容だった。

凛と仗にも教えてやろうと思いハッとする。そうだった、二人の無事を確認したかったんだ。朝はあんなに心配だったのにジェーン先生の授業に集中しすぎて忘れてしまうなんて驚きだ。改めてドキドキしてくる。


校舎から出て角を曲がればピロティが見える。二人はいるのか?怖くて踏み出せない。普段通りに行くだけだろう!意気地なし!と自分で自分を鼓舞することでようやく角から覗き込む。

1、2、3人いる。よく見えないけどひとまず安心だ。近づくとちゃんと識別できるようになる。仗の姿が見える。後ろ姿だが女の子が2人いるところを見るに朱里と凛だろう。拓斗はいないようだ。

「おお、やっと来たか。今朱里と拓斗がデートで大喧嘩して朱里が怒って帰った話を…」

仗は笑いながら話していたが、僕の顔を見てふと口を開いたまま見つめてる。

「おい、どうしたよ。お前は死人か、顔色悪すぎるぜ。」

仗は顔を見てすぐに異変に気づいてくれたようで安心する。心配しながら冗談を飛ばすいつも通りの仗に安心する。

「ご心配どうも。僕らの場所にゴリラが座ってると思うと追い払わないといけないのかって憂鬱な気分になっちゃってね。」

と憎まれ口を叩くと仗は笑って胸を叩きながらノってくれる。しかし、凛ははにかみながらも心配そうに僕に声をかける。

「本当に大丈夫?熱でもあるの?」

どうやら真剣に心配してくれてるらしい。だが、ドリームランドで熱を出すなんてことはないだろう。凛は普段しっかりしているが少し抜けてるところがあるから笑ってしまう。

「全然問題ないよ。モーマンタイ。ただちょっと嫌な夢見ちゃってさ。」

夢なんかで悩まされているのを知られるのは少し恥ずかしいが、共有して少しでも安心させてほしくてつい話してしまう。それを聞いた朱里は首を傾げながら聞いてくる。

「ゆめぇ?私ドリームランドに来てから夢なんて見たことないよ。」

「確かにな、夢の世界でさらに夢を見るなんて意味わかんねえし。俺もそういやこの世界で見たことねえや。お前、ない脳みそ使いすぎてパンクしてなんか勘違いしてんじゃねえのか?」

仗は心配した様子を見せないようにして冗談を言ってくれてるようだ。だけど、僕は得体の知れない不安に駆られて反応できない。夢を見たことがない?この世界に来てから?僕は内容こそ覚えていないが何度か見ているんだぞ?この世界の数少ない制御の効かないものだろ?僕の反応を待っていた仗はいよいよ心配そうな顔をして「大丈夫かよ?」と声をかけてくれるが反応できない。仗の心配を無視して

「本当に夢を見たことがないの?この世界に来てから?」

そう聞くと朱里は

「だぁかぁらぁ、見たことないよぉ〜。しかもぉ、ニュースでもやってなかった?なんかぁ、休む必要ないからほんとは寝てないみたいなぁ。よくわかんなかったけど。」

「そうね、休める体も脳も本当はもうないからコンピュータみたいに電源を切ってる状態にすることで睡眠の擬似体験をしてるの。だから、夢を見てるっていうのはきちんと意識を切れてなくて想像しちゃってるだけじゃないのかな?」

凛は原因を究明しながら僕を安心させるように微笑みかけながら話しかけてくる。

「けど、けどさ。あれが僕の想像したこと?あ、ありえないよ!」

そう取り乱した僕に凛は安心させようと近づいてくる。ふと凛の顔を見ると吊り上がった目と口をした凛の生首のイメージと重なる。

「来るな!」

そう言って思わず差し伸べてくれた凛の手を払いのけてしまう。

「あ、ご、ごめん。」

何が何だかわからなくなり泣き出しそうになりながら謝る。凛は戸惑いながら叩かれた手を押さえている。朱里も何が起きたかわからず戸惑っている。仗が立ち上がり凛と僕の間に入ってくる。

「大丈夫か?凛。」

そういうと凛は黙って頷く。それを見て仗は今度は僕を見ている。その顔はいつもの陽気な仗ではない。完全に心配している顔だ。

「疲れてんだよ、お前。最近ドリームイーターの事件があったりさ、凛の友達とか身近なやつまでいなくなっていつの間にかストレスが溜まってんだよ。今日は帰って休めよ、送ってくからさ。」

そう語りかける仗の口調は優しい。僕は少し落ち着きを取り戻し

「大丈夫。ごめんね、凛。ちょっと情緒不安定だわ、僕。1人で帰れるから今日はかえる。ほんと…ごめん。」

そういうと仗は笑いながら肩を組み僕の二の腕を叩きながら豪快に話し出す。

「ちょっと休めばいつもの憎まれ口を叩きまくるお前が帰ってくるだろ!そしたら朱里たちの面白い話聞いてやれよ?」

「面白くなんかないよぉ。私たちもうだめなのかしらぁ。」

口を尖らせながら話す朱里を見て3人とも笑い出す。凛も微笑みながら

「今日手を叩かれたことは明日元気な姿を見せてくれたら許してあげる。だから今日はゆっくり休んで?」

そう言って優しく僕の手を取って包み込んでくれる。やっぱりみんなに会いに来て良かった。

「僕もお前の前に散る1人にしたいのか?わるいな、僕に色仕掛けは聞かないよ。」

そう言って舌を出しながら手を解き離れていく。仗と朱里は大笑いして、凛は「心配してるのに」と怒っているフリをしているが、僕の調子を少し取り戻した様子を見て安心したようだ。みんなから離れながら振り返り両手を大きく振る。

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