表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドリーム  作者: りとかた
悪夢のはじまり
35/40

来客

能力は全回復した。

気力も多分完璧だ。

と思いたいがやっぱり焦りが生まれ続けている。

便りのないのは良い便りとよく言うが、便りがなければ世界が滅んでいる便りという可能性もある。

覚悟が決まってもそう考えると恐ろしくじっと待っているのがまるでいけないことのように感じる。

そんな僕をリックは度々宥めるが焦りは募る一方だ。


「もう一度外を見る。」

そう言ってベッドから立ち上がり世界を写そうとする。

「待ってよ、ゴラムは何か起これば連絡するはずだよ。」

リックはゴラムとの電話の後何度もしていたように宥めてくる。

しかし僕は我慢の限界だ。

「そんなこと言ってて世界が滅びたら笑い事じゃ済まないぞ。笑われ者にはなれるかもしれないけどな。笑ってくれる奴が残ってればの話だけど。」

リックは何度も僕を落ち着かせていたがこれ以上は難しいと悟ったようだ。

静かに仗の元に行き様子を見ている。

リックは悪くないとわかっているし落ち着かないといけないこともわかっている。

しかし、世界を救えるのにぼーっとしていて世界が滅びているかもしれないなんて心配をしなきゃいけない人間なんてそうはいないだろう。

そして、その心配にかかるストレスがどんなもんかなんて誰にもわからないはずだ。

だからどうか許してほしい。

こんな態度をとることを。


さて、とりあえずセンター街の様子だ。

ここなら人がたくさんいるので異常があればすぐわかるはずだ。

部屋に映し出す。

人の量がさっき見た比じゃなく多い。

まだ日も高いようだ。

ゴラムの言うとおり僕が思っていたより時間は全然経っていないようだ。

時計をつけていればよかった。

イライラしてる時は妙に時間が長く感じるようだ。

大型モニターも相変わらずCMを垂れ流し続けている。

問題ないようだ。

リックも本当は心配だったのか安心したような顔を浮かべている。

それを見て僕も緊張が和らぐ。


他の場所も見ておこう。

自分の家の周辺や通学路を移動するように映していく。

ドリーマーの使いが待ち伏せているかとも思ったが全く見かけなかった。

もっともあいつらはイマジナリーらしいから感知したらピンポイントに召喚できるのかもしれないが。

通学路を全部辿ろうとも思ったが感傷に浸りすぎるのもどうかと思い見るのをやめようと映すのをやめようとする。

しかし、ふと最後にいつものみんなで集まったピロティを見たくなり映し出す。

夢で、最後に見た時のままだ。

悪夢のようなことが起こり続けているのにこの場所は僕らを待つかのように変わらぬ姿だった。


「見つけた。」

不意に聞いたことのあるそしてデイブが死んだ今では一番聞きたくない声になったやつの声だ。

風景が歪む。

空だった場所は薄い膜同士がぶつかっているかのように一部が押され平面に見える。

やられた。

晴の現在の目的はドリームランドの侵攻ではなかったんだ。

初めから僕の世界の位置を特定し不意をつき直接僕を殺しにくるつもりだったんだ。


何が起こっているかわからず呆然としたリックを見て語気を強めて指示する。

「リック!こっちへ来い!扉を作るから急いで仗を連れて逃げろ!」

リックははっと我にかえり仗を起き上がらせ抱えようとするが体格差がありすぎてもたついている。

それを見てすぐこの世界の重さを消す。

重さのなくなった仗を背中に背負いリックが近づいてくる。

扉を開くのには集中しなければいけない上、時間がかかる。

晴がこの世界にどれくらいで入ってくることができるのかわからないが焦りは一旦忘れ映し出しているピロティにそのまま扉を開こうとする。

以前のルカほど時間は掛からなかった。

もうすでにピロティを映し出していたのが良かったのかもしれない。

「出たらすぐにこのスマートフォンでゴラムに連絡しろ!出なくても何度もかけろ緊急事態だとわかるはずだ!出たら今の状況を…晴が攻めてきたことを伝えてくれ!」

リックは何度も頷いている。

僕は一度深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとしてみるが興奮状態で無理なことだとすぐ理解した。

「リック…こっちはなんとかする。仗を頼む。僕がやられたら終わりだ。そうなったら…約束守れなくてごめんな。」

ふと思ったことがそのまま出てしまう。

戦う前に負けることを考えるなんて絶対に良くないことだと思うがそのままの感情を吐露してみると意外なほど落ち着いた。

リックは僕の力ない微笑みを見て

「ぼ、僕は君を信じてる。それに仗をずっと任されるのはごめんだよ。恋のライバルなんだから。」

そう言って必死に涙を堪えて唇を噛み締めながらも必死に笑おうとしている。

リックの冗談とリックの顔に思わず笑ってしまう。

「そら、そうだな。僕が仗を取り戻すまで生きないとな。ありがとう、リック。もう時間がないと思うから早く行って準備を進めておいてくれ。」

リックはとうとう涙を堪えれなくなりそれを隠すことなく涙と鼻水に塗れた満面の汚い笑顔で頷いて急いで扉を潜っていく。

映し出していたピロティにリックと仗の姿が見える。

良かった、これでこの世界で周りを気にせずに戦える。

今度こそ、誰も…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ