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ドリーム  作者: りとかた
悪夢のはじまり
3/12

3.ドリームイーター

学校のピロティに2人の人影が見える。近づくと短髪でガタイのいい男が

「よう!ご苦労さん!真面目くん!」

と立ち上がり声をかけてくる。友達、中でも親友と言ってもいいやつ、名前はジョーだ。

「うるさいな、授業を受けるわけでもないのに毎回律儀に学校に来る方がよっぽど真面目だろ。」

そう言ってにっと笑ってやると、今度はお互い手を叩きながら座り込む。

「学校に通ってても相変わらず憎まれ口が減ってねえみたいで安心したわ。」

「僕たちは今精神だけなんだぞ、今更この性格を良くすることなんてできないしむしろ悪化する一方だろ。」

そうして話していると横からため息が聞こえてくる。綺麗な黒髪で顔立ちは可愛いより綺麗よりな女の子が冷めた目で僕ら2人を見ている。彼女はリンだ。

「毎日毎日、同じような馬鹿なこと話してて飽きないの?」

「いーや、飽きないね。なんせ俺らはドリームランドに来る前からずっと同じことして遊んでたんだから今更飽きるわけねえだろ。」

そう、仗と僕は現実世界からの仲なのだ。そして一緒にドリームランドに来てからも付き合っている腐れ縁という奴だ。

「僕は正直飽き飽きしてるけどね。こんな単細胞の顔を毎日毎日見るのは誰だって嫌だろ。」

そういうと仗はしばらく僕を睨みつける。僕も睨み返すが我慢できず片眉を吊り上げると2人してまた笑い始める。凛はそれを見てさっきよりもさらに大きなため息をつき、バカの相手はしてられないと言った様子で話し出す。

「あんたらねぇ、最近ドリームランドで何が起きてるか知らないの?みんな不安がってるのよ。ここ数日で何人もいなくなってるの。死ぬことがないこの世界でよ?意味わかる?」

「まあ、最近よく聞く話だわな。ドリームイーターってやつがみんなを生きたまま食ってるって。」

仗はそういうと気だるそうにあくびをしながら続ける。

「だけどさ、いなくなってるやつって変なやつが多いって聞いてるし俺らは大丈夫だろ?宗教関係とか、意識高くこの世界でも活動してた奴らばっかだってニュースでもやってんじゃねえか。だったら、怠けてりゃ問題なし!」

「そんな短絡的な考えしてるのはあんたくらいよ。最近じゃこの学校でも消えてる人がいるのよ?本当にニュースの言うとおりなのかもわからないんだからちょっとは深刻に考えなさいよ。」

凛は不安なんだろう。噂は聞いてる。凛の仲良くしてた子の1人が消えたのだ。身近な人がいなくなった不安は僕らとは比べものにならないだろう。だからと言って僕らに当たられても仕方ない。そう思っていると

「まあ、そうだな。もちろん、軽く見てるわけじゃないけどあんまり構えすぎてもドリームイーターの襲う基準なんて決まってねえのかも知んねえしどうしようもないとこじゃねえか。だったら、できる限り1人にならないように気をつけようぜ。」

仗はこう言う時大人だ。普段はずっとふざけてるようなやつだけど人の気持ちに気づけないやつではない。むしろ人の感情の機微によく気づくやつだ。僕は内心八つ当たりするなと思ってたことが恥ずかしくなり黙っていると

「ごめんなさい、友達が消えちゃってさ…不安になってあたっちゃった…。」

「気にすんなよ、な!」

仗はそう言って僕に同意を求める。僕は黙ってはにかみながら頷く。少し気まずそうに凛も微笑む。

正直、僕も少し怖くなっている。最初は引きこもりが増えたくらいの報道だったものが、ドリーマーの調べで存在自体が消えてることが発覚したことで一気に不安が走った。心なしか世界も少しどんよりしてる日が増えてきているようである。精神体のせいか僕らは生身の時より不安が伝播しやすい気もする。

「そういえば、今日朱里と拓斗は?」

凛は少し不安そうに聞く。思わずふざけてブラックジョークで答えそうになった時、それを察したかのように仗が話し出す。

「あいつらは2人で過ごす日だとよ。今頃ノーテンキにメリーゴーランドで回ってんじゃねえか?ドリームイーターもあいつらは甘ったるすぎて胃にもたれるから食いたくないだろうよ。」

そして僕にウインクする。今はいつも見たいなジョークの出番じゃないぞと釘を刺された気分だ。でも実際危なかった、仗がいなければまた凛を怒らせていただろう。凛は安心したように笑うと

「2人とも羨ましいんじゃない?こんなところで毎日たむろしてないであんた達も彼女でも作ったらどう?」

僕と仗は2人でムッとした顔で凛を睨みつけ

「お前には言われたくないね。」

「ほぼ毎日来てるのはお前もだろ?同じ穴の狢じゃないか。」

そう2人で捲し立てると得意げに鼻を鳴らしながら胸を張る。

「同じ穴の狢?意味わかって言ってんの?だとしたらとんだ勘違いね。私は彼氏ができないんじゃなくて作ろうとしてないだけだもん。その証拠に今日も化学専攻のリックにデート誘われたのよ?」

「うげぇ、ほんとかよ?瓶底リックがお前をデートに誘った?あんなやつとデートなんてするのかよ?」

仗は汚いものでも見たような顔をしながらすぐ反応する。リックは悪いやつではない。しかし彼のめがねが牛乳瓶の底のように分厚くてちょっと、いやかなり変なやつなのであまり友達はいないはずだ。だけど仗の反応はそれだけが理由ではないだろう。ちゃんと聞いたことはないけど僕の見立てでは凛のことが好きなのである。凛はわかっているのかいないのか、よく仗を相手に色恋話をする。凛は仗の反応を見て満足したようでまた鼻を鳴らすと

「だから出来ないんじゃなくて作ってないだけって言ってるでしょ?ただ、大変ありがたい申し出ではあったけどお断りさせていただいたわ。」

「はん!そらそうだろうよ!瓶底メガネでどうこうできるならこんなにお高く止まってねぇって話だよな。」

そう言って安心したように大笑いする。僕も

「僕だったら毎日毎日仗みたいな万年発情期の奴の近くにいる女はお断りだね。」

「なんだと?」

睨みつけるがもうすでに口は笑っている。3人で笑い合いながらまたいつもの日常を過ごしていく。

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