絶望
精神体の死には続きがあるものなのか。
僕は目を覚ます。
暑い、すごく暑い。
のどか乾いた。
僕は地獄行きか。
結局精神さえあれば死後の世界に行けるのか。
肉体がないから現世に復活はできないかもしれないけど死後の世界でまた暮らすのも悪くないかもしれない。
考えていることが支離滅裂だ。
晴とデイブを探して高笑いしてやろう。
あいつらも地獄に来てるはずだ。
ぼんやりした視界の中周囲を見渡す。
燃えている。
燃料になってるのは黒焦げの人か?
まさに地獄だ。
ふと、視界に炎以外が入る。
あれはなんだ?
人だろうか?僕と同じように地獄に来たのか?
一つ挨拶でもしてやろう。
その人は一つに束ねた髪を後ろに垂らしている。
その人の奥には炎の根源となる人間が左右に降り満遍なく炎を吐き出しているのが見える。
嘘だ…。
この夢は回避したはずだ。
僕がデイブと晴を殺した。
それなのに…?
嫌だ!やめてくれ!嫌だぁ!!
目の前には間違いなくルカがいる。
両手を前に広げ炎を防いでいる。
この先も知っている。
見たくない。しかし、もしこれが最後になるなら見ないといけない。
嫌だ。今から何か打開策は?
僕にも力が残ってないか?
シールドを張るのを手伝って防ぎきれなければ僕も一緒に死のう。
いやだ、僕をひとりにしないで。
ルカが振り向く。
知っている、これが最後に見るルカの顔だ。
ルカは申し訳なさそうな顔をするとこちらに向かって手を伸ばし何かを呟く。
大きな声ではないはずだがその声が頭に響く。
ルカに駆け寄ろうとするが僕の周りにもシールドが張ってあるのか身動きが取れない。
あぁ、ルカ。僕が助けるから。だからお願いだよ。助けさせてくれ。
ルカが炎に包まれていく。
全身が灰のようになり散り散りになっていく。
右手にはめていた指輪が地面に落ち転がる。
その指輪をわざと踏みつけるように近づいてくる男がいる。
いやらしいニヤケ顔を浮かべながら地に伏している僕を覗き込んで話す。
「俺の勝ちだ。敵となりうるものは死んだ!お前のおかげだ!俺はお前がきっとあの女の邪魔をすると思っていたぞ!お前が意識を失っていた間のことを詳しく話してやろうか?聞きたいだろう?俺らを殺したと思ったのに気づけば最愛の人間が殺される瞬間は格別だろう!教えてやる教えてやるよ。慌てるな。」
僕の頭が理解をしていき晴が話している途中に叫び出していた。
にも関わらず晴の言葉ははっきりと頭に入っていく。
「お前が電柱で飛び込んでくるとは思わなかった。いい考えだったぞ。だけどどうして我々が対策していると考えなかったんだ?お前らは2人組だと知っているんだから1人を囮にしてくる可能性を考えて対策しているとは思わなかったのか?都合のいい頭だ。お前の考えなしな作戦でシールドに阻まれ放り出されたお前を助けるのに力を使ったこの女はシールドを解除した。あとは簡単だったぞ。お前を助けるために駆け寄った女を燃やす。自分を守ればいいのに無能なお前にシールドを張ってな。その後も意識のないお前を守っていたぞ。お前が起きたのに気づくと健気なことに焼けた体を元の姿に戻してお前だけを守るためにまた強力なシールドを張り直したんだ。最後のお別れはいつもの見慣れた姿でってか?ああ、泣けるな。うん泣ける。こんな間抜けのためにドリームランドを救いうる、私を殺し得た女が死ぬなんてな!」
何も考えたくない。叫び続けている。
晴の言うとおりだ。
僕は間抜けだ、無能だ。
僕のせいでルカが死んだ。
ルカを助けるために動いたことは全てルカを死なすための行動だったのだ。
僕がルカを殺した。
嘘だ、嫌だ、無理だ!
頭がガンガン割れるように痛い。
酸素が足りない。
割れる、割れる。
視界が真っ白だ。
「今更何をするつもりだ?」
晴の声が聞こえる。
そうだな、このまま酸欠になり死ぬのもいいかもしれない。
ルカのいない世界なんている意味がない。
「なんだこれは!?ふざけ…」
晴の声が途切れて消える。
何も考えられない。
視界は白から黒へと変わっていく。




