正夢
とんでもない勢いで飛んでいく電柱に片手だけでは耐えられない。
結局取っ手を掴みながら足ともう片方の腕を絡み付けてなんとかしがみついている。
しかしそんなに耐える必要もない。
あっという間に学校上空につき電柱は宙を漂う。
下を眺めてルカを探す。
安全なとこにいてくれれば、まだ生きていてくれれば。
だがルカはこの世界を救おうとしてるのだ。
一番いて欲しくないところにいる。
遠目からでも周囲を囲まれて円になっている真ん中に3人の影が見える。
おそらく周囲を囲んでいるのは晴に共感したものたちや人形にされたものたちだろう。
広い円形になっておりかなりの人数がいることがわかる。
今僕は気づかれていない。
晴と近くにいるのはおそらくデイブだろう。
好き好んで人を殺すのはこの世界でデイブくらいだ。
だから晴も消せないでいたはずだ。
ならこの2人を殺せばこの悪夢を終わらせられる。
電柱ごと奴らにぶつけてやれたら…。
ルカが巻き添えを喰らうかも知れない。
しかし今の距離なら破片が当たるくらいで済む気がする。
死なないならそれでいい。
ここで2人を殺せればこれからもルカと一緒にいれる。
夢で見た光景を変えられる。
ついでに世界も救える。
もしかしたらぶつけた衝撃で僕が死ぬ可能性もあるがそれもまたしょうがない。
僕はルカに死んで欲しくないだけなんだ。
自分が死ぬかもしれないと思うと覚悟がいる。
そもそもこんな高さから急降下すること自体が普通なら無理だ。
自分が死んでもルカは助けられる。
ルカを助けても僕が死ねば悲しむだろうか。
僕を思い出してくれるだろうか、忘れないでいてくれるだろうか。
ああ、ごめんよ。ルカ。
告白したのにちゃんと答えを聞く間もなくこんなことになるなんてもっと早くに伝えることもできたのに情けない僕を許してくれるだろうか?
涙はずっと流れっぱなしだ。
君のために死ぬ僕を許してくれ。
僕の代わりに人間としてこの世界を…僕が救ったドリームランドを見守ってくれ。
電柱の先を2人に向ける。
できればルカを傷つけたくはない。
後ろにいる人間に向ければ2人とも死ぬだろう。
死ななくても致命傷を与えればルカがとどめを刺してくれるはずだ。
少しずつ速度を上げて加速していく。
頭の中で僕も助かる手をずっと考えている。
途中で離脱する?しかし勢いを殺して気付かれてしまうとこの奇襲は無駄になる。
このスピードを保って落ちていくと僕が逃げる手段はない。
そんなことを考得終わらないうちにあっという間に電柱の先は地面の近くまで接近する。
「死なば諸共だ!付き合えよ、クソやろう!」
完璧だ。
晴とデイブが見える。
この勢いで突っ込めば2人とも死ぬ。
僕の勝ちだ。
ぶつかる衝撃に耐えられず僕は前方に放り出される。
ぼんやりとした意識の中、これが慣性の法則かなどと死の間際に思い浮かぶことがそんなことかと可笑しくなる。
じゃあな、世界。ごめんな、ルカ。




