目醒め
ようやく地上まで降りてきた。
途中エレベーターに気づいて想定より早く降りれたがすでに時間はかなり経っている。
学校まで二駅ある。
その上ここはセンター街、人が掃き捨てるほどいる。
しかも僕らを探している。
僕の顔を見て気づいた男が周りに声をかける。
「おい!ドリームイーターだ!殺せ!」
やめてくれよ、邪魔しないでくれ。
僕は自分の大事な人を助けにいかないといけないんだ。
アンタらも自分や好きな人、好きな世界を守るために動いてるんだろ?
だったら僕の気持ちを汲んで見逃してくれよ。
言葉は出ない、出したって無駄なこともわかっている。
次々と僕に向かってくる。
なんで邪魔をするんだ。
僕を邪魔すれば消えるのは君たちなのに。
ぼんやり駆けつけてくる人間たちを見ながら身動きをとれないでいる。
動く先なんてないくらい人がいるんだから当たり前だ。
近寄ってきた男にぶん殴られる。
ああ、見るからに嫌いなタイプだ。
短絡的で自分の周りの小さな世界で最強だと勘違いして外に向かって子犬のようにキャンキャン吠えて威嚇しては相手が萎縮する様子を見て満足そうな顔をするタイプだろう。
邪魔だ。
僕に馬乗りになった男は気づくとチワワに変わっている。
周囲で見ていた人たちはその状況を理解できずに呆然とする者、気づいても理解できないまま僕に暴力を振るおうとする者。
「どけ!邪魔だ!逃げろ!犬に変えられる!」
「やっぱり無理だ!ドリームイーターに手を出すと殺される!」
理解の追いついた人間が逃げ出す。
途端に周囲はパニックになる。
まだ僕を足蹴にしようとする男が鬱陶しい。
邪魔だ、退け。
近くにあった標識が角度を変え男に向かってぶつかる。
当然ぶつかった男は吹っ飛んで人混みを押しやり人の壁が崩れる。
パニックになっている群衆は倒れた人間たちを踏み潰しながら逃げようとしていく。
その集団の足元を掻き分けるようにチワワが走っている。
僕にもルカがやったような力がある?
もしかすると僕を電気で痺れさせた時にもしもの時のために力を分けてくれたのかも知れない。
これを使えばルカの元に行ける。
助けないと。
ここから学校はニ駅。
そこまで遠くはないがこうも人が逃げ惑っているパニック状態では移動は至難の技。
僕は自分が出てきたビルの近くに立つ電柱に手をかざす。
こんなことができるかはわからない。
しかしこれができれば僕はすぐにでもルカの元へ向かえる。
電柱の根元が震えてくる。
まずい、どうやって自分がそれで移動するか考えていなかった。
地面から3メートルほどの位置に取っ手がついている。
力を使えばなんてことのない高さだろ。
僕ならできる。
取っ手を掴んだ途端アスファルトが盛り上がり電柱が宙に浮く。
横切るようにしてついていた電線がちぎれていく。
電柱は地面の下にも意外とまだ長さがある。
急いでルカの元に向かう。
すぐだ、すぐに向かってくれ。




