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ドリーム  作者: りとかた
悪夢のはじまり
21/42

美しい景色

扉を開くとお店の扉から出てきたようだ。

人通りは多いが僕らを気にしているような人間はいない。

「ここは?」

そういえば場所を聞いてなかった。

学校につなげた時にあんなに怒ったのに間抜けな話だ。

「ふふーん、ここはねぇ。一回行ってみたかったブティック!あんまセンター街の方のこと知らんけどさ、ここはずっと気になっててんな。」

そう言うとルカはディスプレイ越しに中を覗き込む。

「だけどここを扉にしたら入れないじゃん。」

そう言って笑いかけると

「みてる時が一番楽しいから。別になんか買いたい訳やないねん。そら買ったら買ったで嬉しいもんなんやろうけど。今回はそれが目的やないしね。」

楽しそうに腰を曲げ顔だけ僕の方に向ける。

これが普段の生活ならなんでもないがとても幸せな場面だろう。

しかし、ルカの言う通り僕らは遊びに来たんじゃない。

能力の限界を試しに来たんだ。


僕らの顔はドリームランド中に知れ渡っているはずだ。

前回散々知らない奴らに追われたのに今回は全く追われないどころか見向きもされない。

ルカの力がうまく作用している証拠だ。

「ドリーマーにも勘付かれてへんかな?こんな人がおったらスーツ男がおったとしてもなんもできひんのかもしれんけど。」

「そうだね、もし気づいていたら2人だけになった時に接触してくるかもしれない。」

警戒は怠らない。

周りの人間が日常を過ごす中、隣にいる人間が非日常を過ごしていることもあるんだと自分がその身になって初めて知る。

みんながみんな同じじゃないのだ。

「さて、何から始めよか?どこまでバレへんかやってみる?思い切って空飛んでみるとか。」

「いいね、飛べるなら飛んでみたい。」

そう言うとルカは僕の手を取ると

「では参りましょう。」

そう畏まってもう片方の手でキラキラした粉を撒き散らす。

そうすると2人ともゆっくりと地面から足が離れていく。

「ねぇ!今の粉は何?」

「ピーターパン知らん?やっぱ雰囲気作りは大事やと思ってさ。」

なるほど、大事なことだ。

ルカの空間でも杖を持てば簡単にベッドを出せた。

雰囲気作りや自分を信じる力が大事なのかもしれない。

そうこうしているうちにブティックのあった屋上よりも高くなる。

ルカは僕のもう片方の手を取りクルクルと回ると屋上へ降り立った。

「すっげえ、気持ちよかった!」

「ほんまにな!ちょっとお腹がスースーして怖かったけど空飛べるなんて最高やな!」

ルカも興奮した様子で僕の手を握ったまま手を合わせている。

遊びに来た訳じゃないと思いつつ楽しくてしょうがない。

割り切らなくてもいい。

この際楽しめる時はうんと楽しもう。

いつまた大変な時が来るかわからないんだから。

ルカは屋上をピョンピョン飛び跳ねている。

もし月にウサギがいるなら彼女のように飛び回っているのだろう。

楽しそうなルカの表情が眩しいのか見上げた時の太陽が眩しいのか目が眩むようだ。

ルカは宙に浮き近くのものを引き寄せて一緒に浮かべている。

そしてそれらを自分の周囲を回転させるようにして縦横無尽に飛び回る。

僕に近づいてきて手を伸ばすその手を取ると僕も途端に自身の重さを感じなくなり宙に浮かんでいく。

2人で無重力のダンスを踊る。

2人で過ごす時間が永遠のように感じる。

ここまで濃密な時間を2人で過ごせたことがあったろうか?

僕らは周りの目も気にせずようやく自由になった気分になれる。

今まで周りの目を気にしてルカと付き合っていたことが馬鹿のようだ。

ドリームイーターになると言うことは世界の理から外れると同時に周りと合わせる必要のない自由を得られるのかもしない。


2人の時間はあっという間だった気もするがこれまでにないくらい長いこと一緒にいた気もする。

僕らは能力を色々試しながら楽しく話した気もするし何も言わずにずっと戯れていた気もする。

水を出せるか試して2人してびしょびしょになった後ようやく落ち着いてビルのヘリに座る。

でかいスクリーンにはハイボールのCMが流れている。

2人で夕焼けに照らされながらぼんやりしている。

不意にルカが僕の方に頭をもたれさせる。

僕は一瞥もしないで当たり前のことのように対応したが内心バクバクで肩越しに僕の心臓の音が聞こえるんじゃないかとさらにドキドキする。

「ずっと一緒におられたらええのにな。」

「僕はずっと一緒にいるつもりだけどルカはそうじゃなかった?」

そう言ってルカの方に目をやるとルカは頭をもたれさせたまま僕を上目遣いで見る。

「意地悪やなぁ。そらうちもずっと一緒におりたいがな。」

「そうだね。」

言葉が出てこない。代わりに涙が出てきそうになるのを必死に堪えながら前を向き直す。

そう、ずっとこの時間が続けば僕らは幸せなんだ。

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