能力
眠れなくなった僕は部屋を散策してみる。
眠れなくなったとは言っても体力はもう回復している。
そこそこ広い空間だ。
何畳あるんだろう?
ダブルベットがあっても全然まだ空間がある。
今は何も置かれていない。
テレビでもあればドリームランドの様子がわかるかもしれないのにと思ったがまだ能力の詳細がわからないままドリームランドとの接点を作るのは危険かもしれない。
空間は広いがいかんせん何もないためすぐに見るものがなくなる。
ベッドの方まで歩いていき仗の様子を見る。
起きてるのか寝てるのかもわからない。
少し不規則な呼吸は聞こえるがそれ以外はぴくりともしないし目も閉じている。
ブルーシートに使ったホースのおかげで大変なことになったがあれがないと2人とも連行されていたかもしれない。
そう考えると仗が助けてくれたと言ってもいいだろう。
見えてる部分が傷痕だらけで痛々しいが仗は生きている。
僕がこれからやらないといけないのは凛と仗を取り返すこととルカを救うこと、そして僕らの暮らすドリームランドを壊させないことだ。
ルカが眠そうに目をこすりながら起き上がっていた。
「おはよう。」
あくびまじりで挨拶をするルカは無防備で可愛い。
「おはよう、何時まで寝てるつもりだったのかな?」
「んー、激務やったからなぁ。多少寝過ごしても許してぇな。」
目をこすりながらにこやかに答える。
今が非常事態でなければこのままずっとルカとダラダラしていたい。
だけど僕らは、いやルカは力を持っている。
その力で僕らの世界と友達を救いたい、いや救わないといけない。
「寝起きで悪いけどこれからどうするか考えようか?」
ルカは静かに頷く。
まず能力の確認をしないといけない。
僕らができることできないことはしっかり把握していないと能力を使い慣れた晴に遅れをとり負けてしまう。
逆に僕らだけができることがあれば有利になる可能性は十分ある。
「外に出るための扉はあの路地裏にしか繋げれないのかな?」
「んー、晴の世界から出た時は出る先なんて何も考えてなかったからなぁ。もしかしたらどっかちゃうところに開けれるかもしれん。」
だとしたらありがたい。
ドリームランドとの接点がずっと同じだったら待ち伏せされてピンチになる。
ドリームイーターが捕まっていないところを見るに好きな場所や自分のイメージのつく場所、一番嫌なパターンはランダムだがずっとあの路地裏に繋がるよりかはマシだ。
「でもさ、無防備にドリームランドに行くわけにはいかへんやん?向こうの状況がわかったら毎回情報収集せんで済むし便利やねんけどなぁ。」
「扉と一緒で監視カメラみたいにどっかの場所を見れるようにするとかドリームランドのテレビをこっちで映るようにするとか?」
ルカは大きく頷いて同意してくれてるがこの案にはどれも心配がついて回る。
まず監視カメラやテレビといったドリームランドとの接点を作ってしまうとドリーマーに探知されてしまうかもしれないこと。
この空間に攻め込まれたら僕らの方が有利なのかもしれないがどうやって逃げればいいのかと新たな問題が発生してしまう。
「んー、難しいなぁ。」
「全然さっきの案でええと思っけどなぁ。どっちにしても扉でたら探知されるんやしさ、出る直前に外の様子だけ確認して出たらええやん。」
確かにルカの言うとおりだ。
それでも悩みは尽きない。
「僕らが外に出た時に探知されたら扉を塞がれたり待ち伏せされるかもしれない。」
「でもそれやったら晴も同じ目に遭ってるはずやで?なんであいつは大丈夫なんやろ?」
「能力を使ってるのかもしれない。自分の空間を広げて探知されないようにするとか自分の存在を無かったことにするとか…。今まで使ってきた能力を考えるとそんなこともできるのかもしれない。気は悪いけど先駆者の晴がどうしてドリームランドに自由に行き来して人を攫うことができたのか。そういった目線でできそうなことを割り出していこう。」
時間の進み方をドリームランドより早くしてもらおう。
そうすれば長時間話し合っても向こうに戻れば一瞬の出来事になり向こうが対策を打つ前に動ける。
ルカがそうなるよう念じてくれたが僕らの動きが早送りのようになり何の意味もなくむしろ相手の言葉も聞き取れないし厄介な状況にしかならなかった。
この能力は使えない。もしくはもっと鍛錬が必要なんだろう。
僕が色々考えているうちにルカにはいざという時のために使える技を練習してもらう。
人を殺せるのかもしれない。
そんなことはルカにはさせたくない。
だから、ドリーマーの使いが使っていたようなビリビリ銃のように電気で相手を行動不能にするような力を練習してもらっている。
素手だと上手くいってなかったが寝る前に持っていた杖でやり直すと上手く行くようになった。
精神体の想像が具現化されたりするところを見るに気の持ちよう次第でうまく行くようになるのかもしれない。
僕の方はいくら考えても妙案は思い浮かばない。
今まで出してきた案を試してこれから実践してできることとできないことの判断を確実にしていくことにした。




