第一章 プロローグ『 追跡者 』
異世界転生で、特別な力を持って生まれた少女のお話
すれ違い様、絹のように美しい銀髪がなびくのを見て、足を止める。金木犀の香りがした少女に視線をやる。
少女の右眼だけ、眼帯で不自然に隠されているのが気になった。少しでも可能性があるなら見過ごせない。
男が身に付けていた宝石が反応し、光を放っている。
風魔法を唱え、こっそりと眼帯の結び目を切る。
綺麗な青の瞳が露わになった。それに珍しい銀髪の髪ときた。これは間違いようがない。
「やっと見つけた、碧眼の少女…!」
「逃げろ…っ、アイリスー!!」
大きな手が目の前に迫ってくる。足が震えて動かない。
一瞬、雷の稲光が見えた気がした。
「大丈夫か!アイリス、怪我は?」
「かすり傷だから、大丈夫…!ありがとう」
「……無事で良かった」
心から安堵の表情を浮かべ、額を合わせる。そうだ、彼と約束したのだ。私だけは絶対に、いなくならないと。
碧眼の少女を抱えて軽々と跳躍する。さすがは亜人だと関心する。
「……碧眼の少女を、守ろうとしているのか」
追跡しようとする男の行手を拒むかのように雨が降り始める。うっすらと霧も出てきた。水魔法の一種か。
「おい、碧眼の少女ってどういう意味だ!?」
周囲に少年の声だけが響く。霧で姿は見えない。
「お前が知る必要はない。関わらない方が、身のためだぞ」
その言葉だけを残して、茜色の髪の男は炎のリングの中へと消えていった。恐らく転移魔法の一種だろう。
そっと木陰に着地する。
四人は心配そうにアイリスの顔を覗き込んだ。
右の頬には血が滲んでいる。初めて見る、眼帯で隠されていた素顔。
「アイリス、その目……」
とある国の庭園にて。
「碧眼の少女を見つけました。ええ、間違いありません。宝石も反応を」
男はブルーサファイアの指輪を見せる。
「む…一刻も早く捕らえよ。碧眼は危険じゃ」
「仰せのままに」
右手を胸に当てお辞儀をしてから、手入れの行き届いた広い庭園を出る。
漆黒の瞳が、複数の人影を捉えてからこう言った。
「……監視を続けろ。碧眼は必ず、俺が捕らえに行く」
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