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中2の春休み、神様が白石くんを駆け抜けていった  作者: Dicek


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第10章 第3回 神様Q&Aは、クリスマス直前公開収録スペシャル(上)

これは前作「中2の夏に、白石くんが神様になった」の続編です。

今年の夏休みに不思議な体験をした、日向ひなた ゆいと白石くん。

秋から冬、そして早春に季節は進んでいく中で、さらに不思議さは増していきます。

人間の“思考”と“感情”、“魂”と“心”をめぐり、少女が成長する物語をどうぞ最後まで見守ってあげてください。

第10章 第3回 神様Q&Aは、クリスマス直前公開収録スペシャル(上)


(1)


 12月10日(木) 7時30分 応神天皇陵


 うちの自動車に白石くんも乗せて、わたしたち家族は応神天皇陵にやってきた。運転はパパ。第3回 神様Q&Aの当日だ。

 ママは前に働いていた管区事務所を借りて、着替えをさせてもらっている。

 わたしと白石くんは制服。パパはモーニングコートを着ていてかっこいい。


 ママは着替えに時間がかかるので、あとからパパと一緒にくるらしい。白石くんと2人で森のような陵墓の方形部分へお濠を越えて歩いていく。


 前に忍び込んで以来の、祭祀場復元広場に着いたら、何人かがあれこれ作業している。

 宮内庁からは3人立ち会うという話だったんだけど、お手伝いの人たちはいっぱいいるんだ。

 以前は透明アクリルの柵があったんだけど、取り外されていて、いろんな形の埴輪がずらっと並んでいる。


「見て、白石くん。お家の形の埴輪があるよ」


「……うん」


「どうしたの?」


「なんか、埴輪に近づくと、もう来ちゃいそうで」


「あっそっか、今日感度が良さそうだね、白石くん」


「うん、なんか緊張がすごい」


 祭祀場の中央部分、地下に埋まっている石室の真上部分には小屋が設置してあった。

 四方の壁は竹で編んだような簾で、外と仕切ってある。四隅の支柱には“紙垂しで”が付けられて、時々吹く風に揺れている。

 風通しの良いテントみたいだなぁと思って、白石くんとふたりで見ていると、御簾みすの向こうから人影が現れた。黒い紋付きの和服を着ていて草履を履いている。


「よう、結さん、白石くん」


 なんと矢納さんだった。


「なんですかその格好」


「なんですかじゃないよ、紋付羽織袴は男の第一礼装だぞ。大学院の先輩に借りてきたんだ、似合ってるか」


「うん。かっこいいよ」


「そうかそうか、よしよし」


「この小屋はなんですか?」


「この竹で編んだやつは御簾といってな、中と外界を隔てる結界の役目を果たすんだ。今回はこの中でチャネリングしてくれということだ」


「ふーん、この間のテントよりは広いですね」


「そうだな、皇室関係の行事で使うこともある、由緒正しきものらしい」


 白石くんといっしょに中を覗いてみたり、柱を揺すってみたりしていたら、パパとママがやってきたらしく、わたしを呼ぶ声がする。


「結、白石くん、矢納さん、ちょっとこっちへ」


 ママは女官だったときに行事で着ていた“袿袴けいこ”という、昔のお公家様のような服に着替えていた。ふわっとした軽そうな生地でできていて、妊娠中でお腹の大きいママにも無理なく着られるようだった。

 ママの横には年配の男の人が立っていて、こちらもお公家様みたいなというか、雛人形のような、袖がとても大きく広がった服を着ている。“狩衣かりぎぬ”というらしい。


「結、このお方はが私が女官としてお仕えしていたとき、大変お世話になった、最上様です。ご挨拶なさい」


「はじめまして、最上さん。日向・D・結です」


 ママがわたしにだけ、小声でそっと(片膝をついてするのよ)と教えてくれたので、言われたとおりに地面に右膝を付けて


「どうぞよろしくお願いします」


 と、挨拶した。きっとママが本当にお世話になった偉い人なんだろうなと思ったんだ。

 白石くんと、矢納さんは口々に「はじめまして」とか「よろしくお願いします」とか言ってペコリと頭を下げている。


 最上さんはニッコリと笑っている。


「結さんか、お会いできて光栄じゃ。普段通りでいいですよ、お楽にお楽に」


 なんかやさしいおじいさんという印象の人だった。京都の人のような訛りがある。


「では、後ほど。よろしゅうに」


 最上さんが祭祀場の前の方へ行ってしまったあとで、矢納さんが近寄ってきて、ものすごい小声で話しかけてきた。


「あの人がPEOのボスだぞ。資料を探してやっと写真を見つけたんだ。衣装は今のものとは違ったが、名前も“最上源泉”とあった」


(えーーっ!)


 いつの間にか、すぐ横に来ていたママが、矢納さんとわたしを見て、静かに人差し指を口にあてた。

 白石くんは設営の終わった“しめ縄”やら“紙垂しで”を珍しそうに見ていて、わたしたちのことは見ていなかったみたい。

 パパは少し離れたところから、最上さんの背中をじっと見つめてる。広角は上がっていてにこやかな表情だけど、目の奥が真剣だ。


 わたしは、少し怖くなってきた。



(2)


 わたしたちは広場横にある休憩所のベンチに座って、出番を待っていた。

 ママだけは、今行われている祭祀に参加してる。

 なにやら神主さんみたいな人が、祝詞のりとのようなものを唱えていて、その後にママと同じ袿袴を着た女官が3人立っている。ママはその一番端っこだ。


「これはカムフラージュだ。神様Q&Aをここでやったことを公にはできないからな。油断をするなよ、チャネリングが終わったら僕と白石くんはまっしぐらに帰るからな。

 結さんは、結さんのご両親が対応してくれるから、安全だろうが、僕たちは用済みになったら、どんな仕打ちをされるかわからんからな」


 矢納さんが小声で囁く。


「あいつらは必ず、口止めの念押しにくるだろう。僕や白石くんにな。ここでチャネリングが行われたことを口外されたくないんだ。PEOは非合法活動はしないが、油断はできない。だから逃げるんだ」


 わたしはますます怖くなった。


「パパやママは大丈夫なの?」


「きみのお母さんは、ああやって祭祀に参加させられている。同じ秘密を持つ共犯者ということになるから、それ以上の圧力はかけてはこないだろう。お父さんも元USAID(アメリカ国際開発機関)だから、PEOの関係者ってことになる。きっと大丈夫だ」


 わたしは少しホッとした。白石くんは緊張はしてるけど、非日常的なシチュエーションに、またまた目がキラキラしてきたよ。


「僕や結さんたち家族は、こんなふうにPEOと因縁があるからあきらめもつくが、白石くんは、巻き込まれちまったな」


「矢納さん、ぼくも能力者としての運命を受け入れます」


「ん? ……そ、そうか。お互いになんとか切り抜けような」


「はい!」


 白石くんがいい返事をした。


「まぁ、そんな感じだ。

 おっ、あっちは、そろそろ終わるんじゃないのか?」


 矢納さんの言葉にそちらを見ると、ママたち女官のひとが、水に浸した枝の葉っぱで地面に雫を振りかけている。その後また男の人が紙垂を振り、全員が一礼して立ち去っていく。

 どうやら儀式みたいのは終わったっぽい。


 一番うしろで儀式を見ていた最上さんのところへ、ママが近寄っていくのが見えた。ママは膝をついて最上さんとなにか話をしている。

 スーツ姿の男の人が3人、わたしたちのいる休憩所にやってきた。


「お待たせ申し上げました。間もなく始めていただきますので、あちらの小屋の方へご移動をお願いいたします」


 なんかすごく丁寧な言葉で話してきた。


「は、はい」


 わたしと白石くんは立ちあがり、たくさん並べられた埴輪の間を抜けて、広場の中央にある小屋へ向かう。矢納さんはおろしていたリュックを手に、少しあとから付いてきた。



 小屋の中にはふたりの男の人がいて、カメラやマイクなどの機材をセッティングしていた。このふたりもスーツを着ている。

 小屋の外には大きなバッテリーが置かれ、黒いコードが何本も小屋の中に引き込まれている。

 すぐにセッティングは終わり、小屋から出ていくふたりとすれ違いに矢納さんが入ってきた。紋付きの羽織を脱いで、リュックと一緒に手に持っている。

 ドサッと座ってリュックを開けた。中からGoProと前にも使った魔法陣みたいな紋章の紙、それと今朝わたしたちが預けていた埴輪を取り出して並べた。

 

「勝手に始めていいのかな?」


 矢納さんに言いかけたところにママがやってきた。

 手になにか持っている。


「結、白石くん、矢納さん。お好きなときに始めて結構です」


 ママは、手にしていたものをわたしに差し出した。それは二つ折りになった和紙だった。


「結、最上様からです。そこに書かれている内容を必ず質問すること。それが最上様からの注文です」


 開いてみると、筆で書かれている縦書きの文章が見えた。


「はい。わかったよ、ママ。ママたちはどこにいるの?」


「最上様はもうお帰りになりました。他の人たちもすぐに撤収します。さっきここにいた3人だけは残りますが、林の奥まで遠く距離をとって待機します。ここが見えるようにはしているので、小屋を出て合図をするか、呼びかければすぐにここに来ます。パパとママもそこにいます」


矢納さんが手に持ったGoProの電源を入れながら聞いた。


「チャネリングが終わったら、どうすればいいんですか」


「やはり、小屋の外に出て合図をしてくだされば、男たちがやってきます。その人たちにしたがって、ここを――応神天皇陵を出てください。

 あとのことは気にしないで結構です。

 矢納さんはそのままお帰りになってください。そして結、白石くん。あなたたちはここを出たあと、駐車場に来てね。そこでママたちは待っているから」


 ママの声が低くて、口調も固い。あぁ、緊張する。


「それでは、わたしはこれで」


 ママが小屋を出ていった。


「ママぁーー!」


 小屋から顔を出して呼ぶと、ママは振り向いて手を振ってくれた。

 本当に周りには誰もいない。


「よし、こうなりゃ決行あるのみ」


 矢納さんがヤケクソみたいに言った。


 小屋の中は機材やコードがいっぱい。3方向からカメラが向けられていて、マイクも床と天井に付けられている。


「あの人たちがどっかで見てるのかなぁ。まるで視聴覚室のスタジオみたい」


「レコーディングランプはもう赤く光ってるからな。“NOW ON AIR”ってとこかな」


「えー、もうカメラ回ってんの? 生放送ってこと?」


「いや、それはないだろう、録画のみの収録だよ」


「じゃぁ、公開収録だね、なんか盛り上がってきた」


「白石くん、いくよー、3,2,1、キュー」


 第3回 神様Q&A 公開収録スタートだ!




(つづく) 8月15日 07:00投稿予定

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