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中2の春休み、神様が白石くんを駆け抜けていった  作者: Dicek


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12/18

第9章 神様への告解、パパとママへの告白(上)

これは前作「中2の夏に、白石くんが神様になった」の続編です。

今年の夏休みに不思議な体験をした、日向ひなた ゆいと白石くん。

秋から冬、そして早春に季節は進んでいく中で、さらに不思議さは増していきます。

人間の“思考”と“感情”、“魂”と“心”をめぐり、少女が成長する物語をどうぞ最後まで見守ってあげてください。

第9章 神様への告解こっかい、パパとママへの告白(上)



(1)-a


「ママ、パパ、ただいま!」


 遅くなっちゃったので、急いで帰ってきて、わたしは飛び込むようにリビングへ入った。

 

「結、おかえり」


 パパがキッチンから声をかけてきた。


「ママ、きょうは大丈夫だった? まだ辛い?」


「おかえりなさい、結。ママはもう全然だいじょうぶ。結は遅かったのね、合唱祭の練習?」


「うん、その後でちょっとお友だちとお話してたの」


「楽しみね、合唱祭」


「うん、楽しい。練習もすごく楽しい」


「結、もうできるよ、お皿運んでくれるかい?」


「はーい」



(1)-b


 美沙は夫が淹れた、食後のカモミールティーを飲んでいた。そしてソワソワしている結を見つめていた。なにか高揚した感情が結から伝わってくる。


(結はどうしたのかしら)


「結はテストも終わったし、これから、合唱祭、クリスマス、冬休みって楽しいことばかりだね」


 結の心を探るように話し始めた美沙の顔を、結がまっすぐ見返してきた。


「ママ、パパ、実はわたし内緒にしていたことがあって……」


 食器の片付けが終わって、ソファの方にやってきたジョナサンと顔を見合わせる。


「わたし、せ、先週ね、テストの前の日の夜……、またあの、チャ、チャネリングを、神様と、その、して。応神天皇陵のあの石室の上で……」


(!!)


 美沙は知っていた。夫のジョナサンにも伝えてあった。

 密かにチャネリングをしていたことにではなく、今ここで、結がそれを告白し始めたことに驚いていた。


「それはどういうことかしら? 結」


「ごめんなさい。わたしが、白石くんと皇学館大学の矢納さんをむりやり誘って……協力してもらったの。わたしどうしても、もう一度やってみたかったの。神様にもっと聞きたいことがあって、知りたいことがあって……」


「もう、そんな大事なこと黙ってて。あそこは夜に入ったりしてはいけない場所なのよ。危ないことはなかったの?」


「うん、それは。矢納さんがいろいろ準備してくれていて……」


 結は家族に対して秘密を持っていることが、耐えられなかったのだろう。美沙はそう思った。


「結は“confession”したかったんだね」


 ジョナサンが話に入ってきた。


「コンフェッション?」


告解こっかいだよ。信者が司祭に自分の罪を告白することだ」


「まぁ、そうかな……そうかも知れない」


「結のしたことは“罪”なのかい?」


「だって、嘘ついて夜に出かけたり、入っちゃいけないとこに忍び込んだり……」


「オー、それはたしかに、だめだね。でも、神様と会話すること自体は、“罪”じゃない。素晴らしいことだと思うけどね」


「えっ」


「もう、ジョーったら。だめよ結、親に黙って危ないことをするのは」


「ごめんなさい、ママとパパに心配かけちゃうと思って。でも、嘘ついて、黙ってるのもつらくて。

 本当にごめんなさい」


 美沙は、知らない振りをして、結の告解を聞いている罪悪感を、冷めてしまったカモミールティーで飲み下した。


「それでね、矢納さんが調べてくれたんだけど、ママがお仕事してた、宮内庁のひとたちがチャネリングをしたがっているけど、できないでいるって。

 あと、宮内庁と協力して研究してるアメリカの組織もあって、その人たちもチャネリングがうまくできなくて困ってるって言ってたんだ」


「結、なんでそんなこと」


「矢納さんがね、あの謎のサーバを調べまくって判ったんだって」


「あの人がそんなに深く関わっていたのね」


「うーん、矢納さんはね、わたしと同じ。知りたいことがいっぱいある人だから、興味本位っていうか、陰謀とかとは無関係。」


 美沙は矢納という人物が、結のチャネリングに協力していたのが意外だった。あの写真に写っていた協力者は矢納だったのだ。

 単に、結が皇学館大学の研究室に通っていたときのスタッフだと思っていたのに。


「それで、矢納さんは、日本とアメリカの動きを知って、なんと言っていたの」


「チャネリングしてあげればいいじゃないかって」


(!!)


「な、なんですって?」


「この人たちは180年後の地球に降りかかる危機について心配してるんだから、かわりに神様に聞いてあげればいいじゃないかって」


「そ、そんなことまでわかっているの? でも、大人たちの計画に巻き込まれちゃうのよ、結が。

 宮内庁―PEOの、そして、アメリカ―宇宙軍の大きな計画の中に、結が関わるのは危険だわ。

 そんな軽く言うなんて。いいの、結?」



「いいよ」



(!! な、なんで? 結。パパとママがそのことで、何日も話し合って悩んでいたのに……、そんなにあっさりと……)


「ママとパパに謝ってからね、あらためてお願いしようと思ってたんだ。

 ねぇ、ママ。ママが働いていた、応神天皇陵の人に言って、あの石室の上でチャネリングさせてもらえるよう、お願いできないかな。

 わたしね、神様に聞きたいことがいっぱいある。それに、神様に教えてあげたいことだってあるの。

 でも、忍び込んだりするのは、もういやだし、ちゃんとお願いすれば、案外やらせてもらえるかも知れないと思って……」



 美沙とジョナサンは、お互いに顔を見合わせてしばらく動けないでいた。



(1)-c


(あれで、よかったのかなぁ)


 ママは


「また、つわりがぶり返しそうで気分が悪いの、この話の続きは明日にしましょう」


 って言って、パパといっしょにお部屋に行っちゃった。

 神様Q&Aをやらせてもらえるか、それをPEOに聞いてくれるかどうかは宙ぶらりんだけど、ちゃんと伝わったかなぁ。

 でも、秘密にしていたことを正直に言えたから、少し気持ちはスッキリしたかなぁ。


 ベッドにゴロンとなって、しばらくボーっとしてたら、

 きょうの学校帰りに、白石くんの部屋に行って、ふたりっきりで話したときのことを思い出した。

 照れくさい感情で胸がいっぱいになる



「ねえ、白石くん。わたし……、わたしね、白石くんにお願いがあるの。聞いてくれる?」


「は、はい、な、なんですか?」


「あのね、わたし……、またやりたいの、神様Q&A。また、白石くんにチャネリングしてほしいの」


「えっ? あっ、は、はい。わ、わかりま…し…た」


「本当? いいの? うれしい」


「はい、ぼ、僕も、う、うれしいです」


「やったぁ、いつやるかとかは、まだ決めてないんだけどね、ほら、合唱祭とかもあるし」


「そ、そうですね」


「白石くん、なんか変だね」


「そ、そんな。でも、きょうの結ちゃん、いつもと違ってて、き、緊張しちゃいます」


「や、やだぁ、なんか変だった?」


「今日、すごく、」


「?」


「か、かわいいなって……」


「……」


「……」


「も、もう、し、白石くんのお母さん帰ってくるかな」


「そ、そうだね」


「か、帰ろっかな、そろそろ」


「そ、そうだね」



(か・わ・い・い…なって。……ふふふっ)


 わたしはもベッドの上でゴロゴロと何回も寝返りをした。




(2)


「どう思う? 美沙」


「どういうことなんでしょうね」


「PEOやUSSFが、結に働きかけたということはないよね」


「PEO側にそれはないと思う」


「USSFの方も、僕が依頼の返事をするの待ってもらうよう、メールを出してあるし、その裏で動くということはないと思う」


「じゃ、結の意思だと……」


「僕たちが、結を守りたくて悩んでいるところに、結の方からチャネリングすると言い出した……」


「……」



「客観的に考えれば、一番合理的な解決方法が降って湧いてきた、とも言える。

 美沙はPEOに対して、結を説得したと言って、チャネリングする準備を進めさせる。

 僕はそのチャネリングの情報をPEOから入手してUSSFに流す段取りをする。

 結に危険さえなければ、双方うまくいく最高の状況になったということだ」


「PEOもUSSFも、チャネリングから得たい情報は「2206年の環境大変化」の詳細で共通してる。

 PEOは、結にチャネリングを許可するかわりに、〈万物の正体〉から情報を聞き出させる。ジョーがUSSFにそれを報告すれば、すべてうまくいくように見えるわね」


「問題は結の安全だ。PEOは非合法活動はしない組織なんだろう? 結に危害を加えるということはないといえる。

 もう一方のUSSFには、僕が依頼を受ける交換条件として、結の安全の確保、以降の接触をしないという契約に持っていければ、うまく収まるかも知れない」


「そうね……」


「どのみち結は、ダメだと言われてもやるだろう。

 ならば、結が安全にチャネリングを行えるよう、まわりのしがらみを整えてあげるほうが、結のためかも知れないな、そんな気がする」


「ジョー……」


「大丈夫さ、決断しよう、美沙」


「……そうね」


「告解を司祭にしたあとは、神と会話して赦しを求めるものだ、順番は合ってる」



(3)


 12月3日 7時30分 合唱祭前日


「いってきまーす」


 合唱祭前日の朝。朝練があるのでいつもより30分早く家を出た。

 口元までマフラーを巻いてるけど、ほっぺたが寒い。

 女子用のスラックスの制服もあるんだけど、わたしはがんばってスカートだ。


 最近白石くんと待ち合わせしてから、いっしょに登校するようになったんだ。白石くんとわたしの登校路が合流する所の、花屋さんが待ち合わせ場所なの。

 他の生徒に会わないように、少し引っ込んで立っているブナの木の横で白石くんを待った。足元にはどんぐりがいっぱい落ちている。


 白石くんが来るまで、ちょっと考え事をした。

 ママに、神様Q&Aができるように宮内庁にお願いして、というお話をしてから、もう2週間も経ってるんだよなぁ……。



 ママはあの日の翌日、


「わかったわ、結。パパともよく話し合ってみたけど、結の希望が叶えられるよう、お願いをしてみるわ」


 そう言ってくれたんだけど、しばらくは音沙汰がなかった。


「こういうことに時間がかかる役所なのよ。特に前例のないことについてはね」


 でもゆうべ、ママが知らせてくれた。


「やっと返事が来たわよ、結。祭祀場広場の使用を認める、ですって。

 ただし、宮内庁書陵部の人間3名が立ち会うこと、観光客に公開している休日以外で日にちを指定しろと言ってきてる。

 どうする、結? 合唱祭があるから、その後がいいのかしらね」


 わたしは、合唱祭の練習に毎日夢中になって、忘れてしまいそうになってたけど、ママの言葉で神様Q&Aのことを思い出して、ハッとした。


「わー、やったぁ。ありがとうママ。白石くんに都合を聞いてくるね」



 白石くんに話せる話題が増えて、わたしはちょっとうれしい。白石くん早く来ないかな。


「おはよー、日向さん、待った?」


 来た。白石くん来た。何人か生徒が通りかかるので、白石くんは「日向さん」って呼んできた。


「おはよう、白石くん、全然待ってないよ、さっき来たばっか」


「じゃ、行こうか朝練」


「うん」


 ふたり並んで歩くと、わたしの右肩と白石くんの左腕がときどき当たって、全神経が右肩に集中してるみたいだ。コート越しだけど、擦れるように当たるたび


「あっ」


 って思う。

 でも、白石くんは全く気にしてないみたいだ。


「いよいよ明日だね」


 なんて話してくる。


「ねぇ、白石くん。合唱祭が終わったらさ、空いてる日ある?」


「な、なんで」


「なんでって、あれやろうよ。やってくれるっていってたじゃん?」


「あれっ、な、なに、かな?」


「もう、あれじゃん。神様Q&A。またやってくれるって、白石くんのお部屋で言ってくれたよ」


「あぁーーー、それね。うんそれね。やる、やります」


「本当? うれしい。いつがいい? 平日で」


「平日……。学校があるから夕方か夜ってことだよね」


「そうだね」


「また、忍び込むの?」


「それがね…聞いて白石くん。今回はね宮内庁公認なの、すごいでしょ」


「宮内庁……」


「ママがね、いろいろ手続きしてくれたおかげでね、そういうことになっちゃった」


「もう学校着いちゃうから、またくわしく話すね。今日また白石くんの家行ってもいい?」


「えっ、んーんと……」


「じゃ、わたしの家に来る? ママにちゃんと説明してもらおうか」


「は、はい。うんいいよ」


「じゃ決まりね」


 わたしと白石くんは校門の手前で、少し離れて学校に入っていった。

 朝は校門の前に先生が立ってるから、なんとなくいつもそうしてる。

 さあ、朝練だ。まずはそっちをがんばろうっと。




(つづく) 8月13日 07:00投稿予定

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