第1話:叶えたいものがある、それだけだった。
『WISH〈願い〉はWISH〈願い〉を喰らう。自分だけの世界の果てに――。』
第1話:叶えたいものがある、それだけだった。
「この装置は、君の“願い”を“武装”に変える」
黒いコートの男――科学者αは、言葉の端に熱を含ませて笑った。
白い実験室、中央に鎮座する球体は、青白く脈打つ。
「君の中の願い、その純度が高ければ高いほど――強くなれる」
その言葉を信じるしかなかった。
「妹を……助けたい」
少年がそう答えた瞬間、球体が脈動を強めた。
自動展開する構造体。無数の神経コード。意思を持った鎧が、少年に取り付く。
《WISHシステム起動。感情値:適合率92%。融合、成功》
身体が焼けるように熱い。
けれど、痛みの向こうに――“力”がある。
「やったな。君は……適合者だ」
科学者αの瞳に映るのは、少年ではなく素材。
彼の背後、ガラスの檻には、数多の失敗作が転がっていた。
「願えば、願うほど、君は強くなれる」
けれどその力は、願いの形を喰い破り、内側から君を侵していく。
それでも君は、願うのか――?
《WISH〈願い〉はWISH〈願い〉を喰らう》
世界が崩れる音が、遠くで鳴っていた。