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二回目の約束  作者: Rinne
3/3

転校生

家を出ると、昨日の天気が嘘だったかのように晴れていた。日差しが強い。


いつも電車で行っていたけれど、音海が、公共の乗り物は最低限にするとか言ってくるので、


学校に着くだけで一日分の体力を消費してしまった気しかしない。


入り口が違うらしく、校門の前で別れた。


新学年、新学期二日目。


音海大丈夫かな、時が気でない。見るからに美形なのに、そっけない感じは絶対に女子の恋の的になる。


「あーっ水無瀬じゃん!いたんだ!」


しばらくは彼の話題で持ちきりだろうと考えていると、和美が遠くで手を振っている。


相変わらず声の大きい奴だ。和美はじつは名字らしいが、なんとも、本人は女の子のファーストネームみたいで


好きになれないんだとか。


「いたんだ、ってなんだよ。」


「最近見てないからさっ? あー、怒んないでよごめんって、」


彼はまぁ、分類すると陽キャ側になるだろう。人気者なのかは何ともいえないが、ノリはいい。


「水無瀬は何組になったの?」


「2組」


「おんなじじゃん、でも俺昨日水無瀬見なかったよ?」


「和美がたまたま気づいてないだけ」


二日目の教室は、もうにぎやかだった。ほぼみんな顔見知りだ。顔と名前くらいは一致するし、喋ったこともある奴も多い。


朝礼を終え、先生が改まった口調で始める。


「突然ですが、転校生を紹介します。」


入ってきていいよ、と手招きして出てきたのは、クールな美少年____。


軽く会釈をして、


「麻木 梓です。よろしくお願いします。」


「好きな食べ物は? 」


「スクランブルエッグです。」


「趣味とかある? 」


「音楽を聴く事です。」


慣れたようにスラスラと質問に答えていく。


女子たちは皆、興奮した様子で目を輝かせている。


「ありがとう。じゃぁ席は____」


元々この学年は一人少ない。となると、どちらかの組の、誰かの席の隣が空くって訳だ。


皆の視線が、音海から自分に変わる。


これ見よがしに目だけで何かを伝えようとするひと、悔しそうに唇を噛むひと、席が近い、と喜ぶひと。


そして、ハッと口を押さえてこちらを見つめる彼女たちは、そっち系のひと。


「ありがとう。じゃぁ席は____」


元々この学年は一人少ない。となると、どちらかの組の、誰かの席の隣が空くって訳だ。


皆の視線が、音海から自分に変わる。


これ見よがしに目だけで何かを伝えようとするひと、悔しそうに唇を噛むひと、席が近い、と喜ぶひと。


そして、ハッと口を押さえてこちらを見つめる彼女たちは、そっち系のひと。



休み時間中、音海はずっと目を輝かせたクラスメイトたちに囲まれていた。


「なぁ、水無瀬も気にならない?」


「なにが?」


「だから、決まってるじゃん!あの転校生だよ。麻木、だっけ。」


「まぁ、気にならないって言ったら嘘になるね。」


「じゃあつまり気になるってことか。」


何を話しているのかはだいぶ気になっているのに、騒ぎ声で聞きたいことが聞こえない。



音海は適当にあしらっているようだが、彼女らは懲りずに攻めてくる。


本を読むフリをして、目の端で彼を観察する。


軽快なチャイムが響く。


授業開始の合図とともに、皆一斉に席に戻る。


隣にいる彼の瞳は、じっと水無瀬を見つめていた。




家に帰ると、音海はやっぱり居なかった。


ちゃんと家へ帰れただろうか。


買ってきたゼリー飲料を飲みながら、なんとなくテレビをつける。


画面越しの、緊迫した雰囲気と主人公の演技が何とも言い難い。


戦闘系、スパイもののドラマか何からしい。


主人公が銃を2発放つと、敵が一斉に襲ってくる。


『32号! 』


『電波が途切れた! 』


『通信状況は!? 』


状況が悪いのか、焦った様子でキーボードを打つ彼ら。


「__ねえ、」


画面越しではなく、そばで聞こえた声に振り向く。


「____あれ、」


帰ってきたの?


家は?


どこから入ってきたの?


その格好、どうしたの……?


色々ツッコミどころが多く、言葉に詰まる。


頰は切れ、髪は乱れている。きているのは、煤やら灰やらで汚れた制服。


「とりあえず、制服脱いで、顔洗ってきな。」


「ぁ、」


首に手をかけてボタンを外す。


「ほら、日があるうちに洗わないと乾かせないじゃん。」


「__自分でやる。」


リモコンを消すと、一気に静かになった。


 音海が脱いでいる間、ずっと今日気になっていた事を聞いた。


「あのさ、音海って名前なの、苗字なの?」


「__どっちでもいいだろ。」


「じゃあ、麻木と音海はどっちが本名?」


「どっちも偽名」


「へぇ」


内心吃驚だった。偽名を日常的に使わないといけない人なんて初めて出会った。


そして、なぜもともと水無瀬に『麻木』と名乗らなかったのか。


何か事情があるなら別だが、もし自分だったらそんなに細かく使い分けない。


考えても仕方ないので、部屋を後にして自室へ向かった。


一通りやるべき事を終了させた頃、窓辺でその声は言った。


「シャワー浴びた。

 ……包帯とかってあったりするか?」


窓辺に腰掛けているのは、肩、腹、足など色々な箇所を薄らと赤く染めたバスローブを羽織る音海。


「……?」


冗談なんかじゃない。


「包帯は、買えばあるから買ってくる。ていうかさ、どうやってそこに来たの?

 あと、外寒いから風邪引くよ?? 」


そう言うと、ゆっくり歩いてこっちにやって来た。



「なに? 」


「____なにも。」


「ちょっと色々買ってくるから、ここで静かに待ってて。絶対動かないで、」


せめて、安静にしていて欲しい。



外に出ると、涼しい風が優しく吹いていた。ドラッグストアで包帯、絆創膏、消毒液などを買う。


店の人に聞くと、良い商品を教えてくれた。あっても困らないので、複数買って帰る。


橙色に染まった夕焼けを、ただ、綺麗だと思った。



音海は、結果的にいうと、きちんと動かずに待っていた。しかし、何故だか椅子には座らず突っ張り棒のように立っていた。


「買ってきたから、脱いで。」


「__いい、自分でやる。」


「背中とか上手くできないでしょ、」


仕方なさそうに羽織ったものを落として現れた体は、水無瀬の想像以上に____。


傷の酷さに言葉を失っていると、そんなに深くないと思う、と音海は言った。


肩、腕、背中、太もも、足、腰。ありとあらゆる箇所を見ていると、だんだん見ている方が痛くなってくるような


気がしてきた。ドラッグストアの店員についでで教えてもらったやり方で、消毒をし、包帯を巻きつけていく。


たまに音海は顔を顰めたが、それに構わず早く終わらせたい一心でいた。



はぁ、と言葉にならないため息を吐く。腕が一気にやられた気分。


「これ、着て。汚れてもいいやつだから。」


そう言いながら袋の中の下着諸々を渡すと、包帯だらけになった音海が小さく頷いた。



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