乂阿戦記2 第四章 漆黒の魔法少女鵺は黒馬エリゴスに騎乗する-3 蔭洲升町に潜む闇
\超展開✖️熱血変身バトル✖️ギャグ✖️神殺し/
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蔭洲升町は周囲を湿地に囲まれている。
どうもこの町は、地球にある町ではなく、地球と黄緑宇宙との狭間の世界にある特異な町らしい。
深き者達が使う異世界転移バスだけが蔭洲升町に通じるアクセス方法である。
町はかつて栄えたが今は、寂れて陰鬱な空気がただよっている。
異常なほど磯臭く、滞在しているだけで気分が悪くなってくる。
また町のほとんどが深き者達の血筋なのだろう、ほとんどの住民は顔が青白い。
訪ねた人が帰ってこないなど物騒な噂がつきものの不気味な町であり、どうしても訪れなければならなくなった場合でも早々に用事を済ませて立ち去るべきだとフレアは言ってた。
街の中心を流れる川の南岸には、ほとんど人が住んでいない。
街の中心地であるタウンスクエアは、南岸にあるが多くの住民は、北岸に住んでいる。
そして西岸は、古い遺跡が数多く残っており、そこに住んでいるのは、かつてこの町を治めていた一族の末裔達だった。
そんな旧市街のとある建物の地下に、一人の老人が住んでいた。
彼は、若い頃にこの町にある地下迷宮の最下層まで辿り着き、そこで見つけた謎の機械を使って自らの肉体を改造し、不死の体を手に入れたのだそうだ。
そんな彼の元に訪ねて来た二人の訪問者を見て、老人はこう言った。
「ああ、お前達か……良く来てくれたな……」
「ゲヒヒヒヒ!マクンブドゥバ長老、お久しぶりでござんす。一族の一大事と聞き出稼ぎから戻って来やした……」
「…………」
訪問者のうち一人はせむし男の様なカエル面の男
もう一人は無口で小柄だが恐ろしく筋肉質な体躯の、鮫の如き面相の男だった。
「よく来てくれた。"蛙冥刃"ヒキガエル、そして"速射爆拳"鉄心よ…」
彼らはそれぞれ『クトゥルー教団』と呼ばれる組織の構成員であり、彼らの目的はただ一つ……それは、彼らの神クトゥルフを復活させこの世界を支配する事だった。
そんな彼らに対して老人が言う……
「……実はな、クトゥルフ様の復活はもうじき実現する……だから、お前達に最終段階の仕事を頼みたいのだが良いか?」
それを聞いた二人は一瞬驚いた様な表情を見せた後、すぐに跪いて言うのだった。
「勿論でごぜえやす!!何なりとお申し付け下さい!!」
するとそれに答える様に老人も答えた。
「そうか……ならばお前達に任せるとしよう……奴らを倒す為に力を貸して欲しい……」
その言葉に今度は二人が驚く番であった。
「奴らってのは町に入って来た連中の事で?連中の中にはドアダの王子龍獅鳳と乂阿烈の弟乂雷音も含まれますぜ?」
「それがどうした?……この肉体はもう百年、心臓を止めていない。だが、なお思考は澄み、血は熱い。――我らが神が降臨するまではな」
蛙冥刃ヒキガエルは嘆息する。
何故ならその言葉の意味するところは即ち……クトゥルフ勢力とスラル勢力の全面戦争の引き金を引くと言う事に他ならないのだから……しかし、それでも尚二人の意思は変わらない……いや寧ろ決意を固めたと言っても良いだろう……それ程までに彼等にとって老人は絶対的な存在だったのだ……そしてそれを知っているからこそ老人も命令するのであろう……。
「鉄心、ヒキガエル……お前達の暴力が必要だ。あの“乂家の血”を根絶やしにせねばな」
「……分かりやした……」
そう言うと彼等はゆっくりと立ち上がったかと思うと次の瞬間にはもうその場から姿を消していたのだった……。
「あークソ!めっちゃ疲れた!」
とある高級ホテルの1室でロキはグチをこぼしながらベッドに倒れ込む。
裸ワイシャツのナイアがロキに膝枕してやりながら尋ねる。
「おやおや、随分お疲れのようで?会議はどうなったんだい?」
ナイアの問いに答える気力もなくロキは愚痴をこぼす。
「オームめ……せっかく人が気分良く、脳筋どもを煽ってからかっていたのに、人の言葉尻取って揚げ足とりやがって……!なんて狡賢い奴だ!まんまと連合軍を蔭洲升町に招きよせる口実を与えてしまったよ!」
「それは災難だったねぇ」
ナイアは苦笑しながらロキの頭を撫でる。
「それにしてもまさかオームめ!あそこまで頭が切れるとは思わなかったよ。流石は謀士と名高かった『覇星ゴームの後継』だけある」
「やれやれ、面倒な事だ。で?連合軍の人選は?」
「……まあ一応今回は斥候隊を送り出すだけと言う体になったから、人数は少数で五十人程だ。ただ小隊指揮官の面子がやばい。」
「ん?誰が蔭洲升町に来るの?」
「まず、作戦立案者のオームとその姉エドナ、アシュレイ族からイブの妹機白水晶、ジャガ族から鵺、乂族から乂羅刹にドアダから新任の七将軍"銀仮面"羅漢が選抜された……他にも何人か居るけどまあ、そいつらは雑魚だ。」
「うーむ……それで私達は何をすればいいのかな?」
「ああ……俺達は今回はお留守番しようぜ……」
「え!?何で!?」
「僕達はあくまで裏方で煽るだけで、目的は戦争じゃないだろ?それに向こうには羅刹が居るんだ……そんな所に行ったら一瞬で消し炭だよ……だから様子見てここに残る事になったって訳さ……本当はクトゥルフ復活を特等席でみたかったんだけどなぁ……仕方ないだろう……」
確かに言われてみればそうだ……羅刹こと灰色の魔女ラスヴェードはヤバい……何より銀仮面こと羅漢も強すぎる……
封獣もベリアルハスター、エリゴス、ナインテイル、ケルビムベロスと四体揃えてきてる。
………これは斥候部隊じゃなく殲滅部隊かもな………
「けどマクンブドゥバの爺さんも面白い奴等を蔭洲升町に呼び寄せた。それにクトゥルフ本来の根城、暗黒のゾス星系にも妙な動きがある。あと今回の僕達のおもちゃアクアちゃん!正義感の強い彼女が蔭洲升町にノコノコやってくるようにカルマストラのじいさんに手を回してもらってある。彼女は必ず故郷に来るだろうよ?」
そう言って彼は邪悪な笑みを浮かべるのだった。




