乂阿戦記2 第四章 漆黒の魔法少女鵺は黒馬エリゴスに騎乗する-2 フレア姉妹が遊びに来た
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来客者はシルフィスちゃんだった。
彼女は雷音の母ホエルを見るとペコリと頭を下げた。
「こんにちは、紅阿ちゃんいるですか?」
「くれにゃにゃかにゃか?」
隣でニカもペコリと頭を下げる。
「こんにちは、紅阿ちゃんのお母さんお邪魔します。」
シルフィスとニカを連れて来たのはフレアだった。
彼女はニカ用のオムツ着替えと手口拭きセット一式をカバンに入れ、子供達に同行していた。
もちろん携帯ゴミ袋と水分補給用のお茶も用意している。
ちなみに今日のフレアはいつものポニーテールではなく、右にサイドテールしていた。
とても可愛い。
シルフィスとニカの母親役をしているイサカが、出かける前この方が可愛いとフレアの髪を結ってくれたのだ。
「オイ、あれフレアちゃんじゃないか?」
「雷音君の家に入って行ったわよ」
「丁度いい、彼女なら蔭洲升町の事とか知ってるかもしれないし、私達も隣に移りましょ」
一同はゾロゾロと雷音の家の中に入っていった。
「ウッス!フレア、いらっしゃい!」
雷音が手を上げてフレアに挨拶する。
「な!?お前らなんでここに来てるんだ!?」
「ここ俺ん家なんだ」
面食らうフレアに雷音が説明する。
「え?じゃあお前紅阿ちゃんの兄貴なのか?」
「ちなみに私は紅阿のお姉さん、今ワケあってお隣の狗鬼家の養子になってるけどね。ちなみに絵里洲ちゃんと獅鳳君はお隣の子だよ。アクアちゃん達は丁度遊びに来てたとこだったみたいよ」
神羅の説明を聞いてさらに驚いた顔をするフレアに、アクアが話しかけた。
「……ごめんフレア、アンタが午後のホームルーム参加しないのは子守りがあったからなんだね。私そんな事も知らずにホームルームのことであんたに突っかかってばかりいた……」
「い、いや、別に謝る必要なんかねーよ。アタシの勝手でやってる事だからな」
そう言って、恥ずかしそうに頭を掻くフレア。
「それより、そっちこそ何でここに来たんだ?」
「そ、そうだった。実はフレアに頼みがあって来たんだ」
「頼みって何だ?」
「ああ、それが……」
獅鳳が言いかけたその時、突然家の庭の方から大きな爆発音が聞こえてきた。
「何事だ!?」
慌てて庭に出ると、そこには……
雷音の家の庭に、奇妙な金属音と爆音が響き渡った。
――ギギギギィッ!ドカァン!!
「ひゃっほーい!!飛んだ飛んだぁ♪」
「キャッキャッキャッ♪」
「にゃにゃ〜〜〜!!」
庭のど真ん中で、3人の幼女が、巨大な蛇型ロボットをぶん回していた。
そう、ぶん回していたのだ――全長10メートル超、ミリルが引っ越し祝いにくれた防犯用重装ロボ《メガルヨムルガント》を。
鋼鉄の鱗がひしゃげる。
油が飛び、パーツが庭中に転がる。
しかし彼女たちは涼しい顔で、まるでぬいぐるみのようにロボを放り投げているのだった。
「な、なんじゃこりゃ〜〜〜!?」
アキンドが思わず絶叫する。
……メガルヨムルガントは軍用兵器だ。にもかかわらず、それが今、幼女たちの”おままごとセット”にされている
――もはや防犯でも何でもない。ただの鉄製ジャングルジムだった。
「お〜、最近のちびっ子達はなかなかパワフルだな〜」
筋肉馬鹿キースはノンキに笑っている。
「ちょっと!あれってパワフルの一言で片付かない現象なんですけどーっ!?幼女3人が大型ロボを振り回すってどんな光景!!?」
絵里洲がキースに突っ込んだ。
「え?なになに!?あれって重そうに見えるけど、ハリボテか何か!?」
アクアが目の前の光景を疑い目をこする。
「おー懐かしい光景だな。昔羅刹姉ちゃんと神羅と雷華がよく捕まえたモンスターぶん回して、投げ合いっこしてたっけ?小さい頃思い出すなぁ」
雷音がしみじみ呟くと獅鳳が尋ねて来た。
「……ら、雷音達って子供の頃あんな遊びしてたの?」
「ううん、ぶん回し遊びしてたのは私と羅刹姉さんと雷華ちゃんの三人よ」
神羅が答える。
雷音が遠い目をして話す。
「乂家の女はみんなどういうわけかパワフルでな、ああやって大きな物をぶん回して遊ぶのが大好きなんだ。俺も羅漢兄さんも弟の阿乱も何度か巻き添え喰らって死にかけたな……まあ、その経験が今の俺達の戦闘力に生かされてんだけど……。ああ、でもよかった。シルフィスちゃんとニカちゃんを見るにウチだけが特別だったわけじゃなかったんだ……」
「いや、普通じゃないから!これ明らかに普通の子の遊びじゃないから!雷音、現実逃避するのやめよ?」
アキンドはすっかりツッコミ役が板についていた。
「こ、こらー!シルフィス、ニカ!その遊びは危ないから他所ではやるなっていつも言ってるだろ!!」
フレアはシルフィス達をたしなめるが遊びに夢中で耳に入っていない。
「……ユッキーって子供の頃あんな風に遊んでたんだ?」
絵里洲が呆れた眼差しで神羅をみる。
「い、言っとくけどアレは魔力を流用して持ち上げてるだけだから!私別に力持ちってわけじゃないよ!?」
「いや、たぶん絵里洲はお前の凶暴性を呆れてるんだと思うぞ?」
神羅は余計な一言を言う一カ月年下の弟の頭をはたいた。
メガルヨムルガントは無残な姿を晒していた。
外装はズタズタ、動力部は地面にめり込み、尾部に至っては庭の塀を突き破って道路に転がっている。
そして――
「ふふーん、次はあっちまで飛ばすー!」
「にゃっにゃーっ!!」
「きゃははははっ!」
三人の幼女たちはさらなる破壊を求めてロボに手を伸ばそうとしていた。
「やめろーーーーっ!! あれもう! ただの鉄クズだろおおお!!」
雷音は叫びながら飛び出した――その顔は完全に、教育係のそれだった。
ロボ遊びを止めた雷音達は庭先に出て座り込み反省会をしていた。
壊れた堀もそのまま放置してある状態だ。
ちなみにロボはもう跡形もなく消えている。
どうやら発明大好きの弟阿乱が修理、もしくは魔改造したいと研究室に持って行ったようだ。
流石は乂家随一の頭脳派、乂家のマッドサイエンティストの名は伊達じゃないな……。
まあそれはさておき問題は……。
ロボで遊んだ三人の少女達である。
「お前ら……ちゃんと反省してるか?」
俺が尋ねると三人は顔を見合わせながら答えた。
「もっとブンブンして遊びたーい♪面白〜い♪」
ロボを壊した張本人達は悪びれる様子もなく無邪鬼に答える。
「いや、面白いとか面白くないの問題じゃなくてな……?」
雷音は頭を抱えながら呟く。
そんな俺にロボの残骸を持ってきた弟阿乱が言った。
「雷音兄さん、もうその辺で勘弁してやって下さいよ~?三人とも悪気があった訳じゃないんですから~」
「はあ……ったく……お前は相変わらず甘いな……」
ため息をつく俺を見て弟阿乱が言う。
「だって可愛いじゃないですか~♪ほら!この三人を見てるとまるで妹が増えたみたいでつい甘やかしたくなっちゃうんですよ~!それにこの三人のおかげで僕の研究テーマだった『変形飛行蛇型ロボット』が完成した訳ですし!結果オーライですよ~!」
そう言ってニコニコ笑う弟に呆れていると今度は俺の袖を引っ張る者がいた。
振り向くとそこには紅い服の金髪碧眼の少女フレアが立っていた。
「どうした?」
俺が尋ねると彼女は言った。
「いや、なんかさっきお前等が私に用があるみたいだったけど、何の相談だ?」
ああ、そうだったな。俺は彼女の肩を掴むと言った。
「実はな……蔭洲升町の事なんだが……」
するとそれを聞いた途端、彼女の顔色がみるみる青ざめていくのが分かった。
そしてそのままフラフラと倒れそうになったので慌てて支えてやると、彼女が小声で呟いたのが聞こえた。
「……まさか、あの町に行く気か……?あそこは……“人間が帰ってこれる場所”じゃないんだぞ……アンタたちのことは嫌いじゃない。でも……あそこに入るなら、アタシは絶対に手伝わない。あそこは――“地獄”なんだから」
しかしそう言う彼女に俺は言う。
「違うって、そうじゃなくてだな……お前の力を貸して欲しいんだよ」
「え……?どういう事だ?」
首を傾げる彼女に対し、俺は説明した。
獅鳳の乳母で母同然のイブを助ける為、その町に行く必要がある事を……
すると彼女は渋々ながら頷いたのだった。
「……仕方ないな……場所だけ教えてやるよ……」
「そうか!助かるよ!!」
こうして俺達は蔭洲升町に向かう事になったのだ!
ただし、出発するのは雷音、獅鳳、アキンド、キースの男メンバーだけ、女子は今の時分絶対あの町に近づいてはいけない。
それがフレアが出した蔭洲升町への行き方を教える条件だった。
町に着く頃には既に夜になっていたものの、何とか宿屋に泊まる事が出来た。
町に一軒だけある酒場に入るとそこには一人の男が立っていた。
どうやら俺達が来るのを待っていたらしい。
「……やっぱお前らもこの町に来ちまったか……帰れ、と言ったところで帰らないんだろうなぁ……」
男はまいった風に頭を掻く。
狗鬼漢児ことHEROアーレスタロスは嘆息した。
https://www.facebook.com/reel/956857529332025/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0
↑イメージリール動画




