乂阿戦記2 第三章 イブ・バーストエラーは復讐の女神の胡蝶の夢-6 アキンドはツッコミたい
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放課後になると雷音はすぐに帰宅の準備をした。
そしてカバンを持つと急いで教室を出る。
すると後ろから声をかけられたので振り返るとそこには親友であるアキンドが立っていた。
「おいおい、そんなに慌ててどうしたんだよ雷音!」
不思議そうに尋ねる彼に対して、雷音はこう答えた。
「漢児の兄貴から連絡あってさ、イブさんを正気に戻す手がかりが見つかったらしいんだ!」
それを聞くと途端に目を輝かせたアキンドは雷音の肩を掴むと言った。
「へぇーそうなんだ!!なら俺も行かせてくれよ!!俺も保険室のイブさんには世話になってるからさ!!」
それを聞いて嬉しくなった笑顔で答える。
「ああ、もちろんいいよ!!なんなら今から一緒に来るか?」
そう言うと彼も嬉しそうに頷いた。
「おっ、いいのか?んじゃ遠慮なくお邪魔させてもらうぜ!!」
そして二人で家に向かうことにしたのだが、途中でコンビニに立ち寄りたいと言う彼に付き合うことにして、最寄りのコンビニエンスストアへとやってきたのだ。
店内に入ると早速菓子コーナーへと向かった彼はそこで大量のスナック菓子を買い込んでいく。
その様子を見て呆れながら尋ねた。
「おい、いくら何でも買いすぎじゃないか!?」
それに対してアキンドは平然と答える。
「別に良いだろこれくらい。それに今日は久しぶりに本気を出す予定だからエネルギー補給が必要なんだ。まあ見てなって、絶対に俺が役に立つからよ♪」
自信満々にそう言う彼の姿を見て、改めてノーテンキな奴だと思った。
(全く、コイツは本当に底なしの馬鹿だな……)
そう思いながらも頼もしい奴だとも思った。
それから会計を済ませると店を出て、そのまま自宅へと向かう。
そして玄関の扉を開けると家の中に入った。
するとそこには珍しく雷音の兄阿烈の姿があった。
阿烈は雷音に気付くと声をかけてきた。
「うむ、帰ったか雷音」
玄関の扉を開けた瞬間、空気が変わった。
それは温度でも光でもない、“気配”の違いだった。
居間の奥、鋼のように静まり返ったその場所に、ひとりの男がいた。
それに対し挨拶を返す。
「ただいま阿烈兄貴!」
「ほう、学友を連れて来たか…」
地の底を這うような低声。
その男――乂阿烈は、まるで時代錯誤の武人のような風貌をしていた。
荒削りな筋肉に覆われた巨体。
顔の半分に刻まれた乂の戦痕。
ただそこにいるだけで、壁が軋むような圧を放っていた。
しかしそんな俺達の様子を見ていたアキンドはと言うと……
「え?兄?え?……お父さんじゃないの?……」
「はあ?なに言ってんだアキンド?」
「あ、あのう失敬ですが、お年はいくつでしょうか?」
などと言いつつどこか他所他所しい態度で阿烈に接していた。
そんな彼を阿烈はジロリと興味深げに視線を向けながら尋ねた。
「……ほほう、ワシの年齢が気にかかるか……小僧、ワシはいくつに見える?」
するとアキンドは阿烈に対しておずおずとビビリちらしながら答えた。
「そ、そうですね、見たところ50代と言ったところでしょうか?」
阿烈はアキンドのその言葉に一瞬驚いたような顔をしたもののすぐに豪快に笑い出した。
「グルァーッア"ッア"ッア"ッア"!!50代とは参ったな!ワシは今年16になったばかりよ!まあ、ワシの場合は老け顔だからよく年上に間違われるのだがな!!」
無礼は百も承知だが突っ込まずには居られなかった!
「う、嘘だ〜〜!!ぜってぇ嘘だああああああ!!!どう見たってこの人おっさんだよ!!成人だよ!!五十代だよ!!こんな貫禄たっぷりの16歳なんているわきゃ無ええ!!あ、わかった!!本当は16歳じゃなく60歳なんでしょ!?本当は雷音と一緒に俺をからかっているんでしょ!?実はお父さんなんでしょ!?騙されませんよ!?ね?ね?ね?」
「?、アキンド、お前は一体何を言ってるんだ?」
首を傾げる雷音
乂阿烈はアキンドの必死の言葉にも全く動じることなく、寧ろ楽しそうに笑いながら答える。
「グルァーッア"ッア"ッア"ッア"!これはまた愉快な小僧だ!」
パンンッ!!
阿烈が両手を叩くと雷音が金縛りにあったみたいに立ったまま意識を失った。
「あ、あれ?あれれれ?ら、雷音くん……?」
わけがわからず呆然と突っ立つアキンドに乂阿烈が猛獣の様な笑顔で近づき、至近距離から彼の顔を覗きこんできた。
2メートルを超える大柄な男、明らかに一般人と一線を画する猛者の面相、顔に刻まれた乂の形の戦傷
凄まじいことこの上ないプレッシャーだった。
人喰い虎か何かに至近距離で顔を睨まれてる気分だった。
そう、それは誘拐された時に出会ったDr.ファウストを思い出す威圧感だった。
「あ、あ、ああ、あるぇ〜〜、よく見たらお兄さん全然若々しいっスねえ〜、や、やだなあ、俺ってば、最近目が悪くなっちゃったのかな〜〜」
彼はしどろもどろにその場をごまかそうとする。
「……小僧、正解だ。詳しく数えておらぬが、ワシの実年齢はおそらく五十を超える。だが、妻の渾身のまやかし術を見破るとは……なかなかいないぞ?どうやらヌシは“見抜く目”を持っているな…………それに面白い相をしている。小僧、ヌシはセドゲンス殿と同じ類の英雄になるやもしれぬなぁ……」
「え?え?え?」
「色々事情があって教えてやれぬが、まあワシは16だと言うことにしとけ……」
「イヤイヤイヤイヤ!!そんなん絶対無理ありますって!!!」
「安心しろ、ワシもそう思う。まぁ妻のまやかしの術が効かないやつは何人かいたが大体の奴はワシにびびって突っ込まないか、もしくは些細なことなので横に置いとくかするのがほとんどなのだがな……貴様のように突っ込んでくる奴は新鮮だぞ。そのせいか小僧、ワシは貴様がえらく気に入った!これから仕事に出かけるのが残念で仕方ない……」
阿烈は残念そうに溜息をつくと、懐から葉巻を取り出し口に咥えた。
家の前に黒塗りの高級車が何台もやってきた。
中からいかつい顔をした、黒服の屈強なボディーガードたちが走り出してきて、ずらりと整列する。
そのうちの1人が懐からライターを取り出し、恭しく阿烈のそばに駆け寄って葉巻に火をつける。
男達は声をそろえ阿烈を迎える。
「「「ボス!お迎えに上がりました!」」」
「うむ、ご苦労…」
阿烈は肺いっぱいにタバコを吸い込んだ後、煙を吐き出す。
そして車の後部座席に乗り込むと、窓を開け手を叩き雷音の金縛りをといた。
「ん?あれ?」
雷音が目を覚ました後、アキンドに声をかけた。
「おう、アキンド!今度雷音と一緒にワシの事務所に遊びに来い!ヌシは面白い!見所があるぞ!!」
阿烈が豪快に笑うと車は発進して去っていった。
(マ、マフィアじゃ〜!あの人絶対ヤクザの大親分か、マフィアのゴットファーザーじゃ〜〜!ひいい!えらい人に目をつけられてしまったぁ〜〜!)
アキンドは頭を抱えた。
「あらあら雷音ちゃん、お友達を連れて来たの?」
家の中から可憐な声が聞こえた。
雷音の母ホエルの声である。
「ただいま!うん、俺のダチ連れてきたんだ!」
雷音が上機嫌に答えると母は玄関先に出てきた。
「あらまあ、ようこそいらっしゃいました。狭い家ですけどゆっくりなさって下さいね♪」
ホエルの姿を見るとアキンドは一瞬で身なりを整え、行儀よくお辞儀した。
「お姉様、はじめまして!雷音君の学友の浪花明人と申します!」
彼はキリッとカッコつけて挨拶したあと雷音にこそっと耳打ちした。
「なんだよオイ!お前の姉ちゃんめっちゃ美人じゃないか!今度連絡先教えてもらっといてくれよ!な、な、な!」
雷音は首を傾げながら答える。
「姉ちゃんじゃなくて母ちゃんだぞ?
阿烈兄ちゃん、羅刹姉ちゃん、俺、雷華、阿乱、紅阿の6人を産んだ母ちゃんだぞ?あ、羅漢兄ちゃんと神羅は訳あって養子なんだ」
「お前んちの家庭事情は一体どないなっとるんじゃ〜〜!?」
アキンドは突っ込まずにはいられなかった。
いや突っ込むだろこれは!だっておかしいもん!なんで6人も産んであの若さと美貌!?あの容姿下手すりゃ10代ですよ、10代!つーかあの阿烈って人からして2児の父親だって言われても納得する見た目だし!本人も言ってたけど、あれが16歳って言われて納得する人いないよ!?
アキンドの頭はもはやパニック寸前であった。
そんな彼に救いの手が差し伸べられる。
それは、本日の作戦会議のリーダーを務める絵里洲だった。
彼女はニッコリと笑って言ったのだ。
彼女からすれば当たり前の事を……
彼女にとっては何気無い一言だったのだが……
しかしその言葉はアキンドにとってはまさに天啓の如きものだったのである!
「馬鹿ね、年齢ギャップ萌とか最高じゃない!!」
この瞬間に彼の人生観は大きく変わったのだった……
(……ああ、うん、確かに萌える!)
その瞬間、彼の中の何かが音を立てて崩れた。
いや、新たな扉が開いたと言うべきか――。
……まさか自分に“年上ママ属性”萌えがあったとは……!
**(年齢とか関係ねぇ、美人は正義だ……!)**
性癖が歪んだとも言える。
そんなどうでもいい馬鹿話は、さて置いて、一堂は本日の本題、イブを助ける為の作戦会議を始めるのだった。
まず、イブの現在位置は、クトゥルーの本拠地、海底都市イハ=ントレイにいるらしい。
しかも、どうやらイサカによる精神侵食は進んでるらしく、既にイブの命運は尽きていると言っても過言では無い状況だという。
「くそっ! イブちゃん、待っててくれよ! 今すぐ助けに行くからな!」
「落ち着け、アニキ」
「気持ちは分かるけど……冷静さを欠いたら、勝てる戦も勝てなくなるわよ?」
「まあ、気持ちは分からんでもないが、ここは冷静に行こうぜ」
「そうだな、まずは落ち着いて状況を分析してみようぜ」
「そ、そうだね」
雷音の家にはかつてドアダ南極基地に勾留されてた時、一緒に過ごした仲間たちが集まっていた。
雷音の妹雷華と姉神羅、タタリ族の若き族長オームとその姉エドナ、お隣の狗鬼漢児と狗鬼絵里洲、そして龍獅鳳、アシュレイ族の姫ミリルとその護衛白水晶、ジャガ族の巫女鵺である。
「それで?どうするのさ、兄貴」
「とりあえず情報収集だな」
「具体的には?」
「まずフレアって子とそれとなく接触して、クトゥルー教団の内情を探るべきだろうな」
「それは賛成だけど、どうやって探すのよ?」
「もちろん手当たり次第に聞き込みだ!!」
「そんなんで見つかるのかねぇ……」
「……それに関しては心当たりがある」
そう言って挙手したのは雷華であった。
「えーと、最近妹の紅阿に魔法学校のお友達が出来たんだけど、その子の名前がシルフィスって言うんだ…ちなみに口ぶりは乱暴だけど優しいお姉さんがいて、いつも一緒に帰宅してるんだ。赤い服の金髪ポニテの美人さんだ。確か名前は……フレアだったか?」
「おおっ!ナイス情報だぜ雷華ちゃんよ!早速会いに行こうじゃないか!」
「待て兄よ!それならまずは私が行く!」
こうして雷音達は情報を集めるために動き出すことになったのだった。
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