乂阿戦記2 第一章 桜の魔法少女神羅は女神ユキルの生まれ変わり-4 馬鹿3人による最低のミッション
\超展開✖️熱血変身バトル✖️ギャグ✖️神殺し/
今度は、魔法学園でドタバタだ!
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「なあ、雷音。……お前、本当にそれでいいのか?」
夕暮れの屋上に、二人の少年の影が伸びていた。
赤髪で精悍な顔立ちの少年――名を雷音。
その隣に立つのは、黒髪で目立たぬ学生、浪花明人だった。
郊外の魔法学園。周囲に高い建物もなく、空が広く澄んでいる。
静かな場所で、二人は向き合っていた。
「……どういう意味だ、明人?」
雷音が眉をひそめる。
「そのままだよ! 本当に、それでいいのかって聞いてんだよ、俺は!」
「……」
雷音は返事をしない。ただ、黙って立ち尽くす。
「お前の気持ちは、俺も分かってるつもりだ。けど……現実に背を向けたら、それって逃げじゃねぇのか?」
感情を乗せて訴える明人。その熱に対し、雷音は冷めた目を向ける。
「……俺の気持ちだと? お前に、何が分かるんだよ」
その言葉に、今度は明人が沈黙した。
……沈黙のあと、雷音が口を開く。
「俺には……何もない。何も持っていない。ただ、この“盗賊スキル”だけだ。だから、俺はこの力を極めると決めた。――それの、何が悪い」
その口調は静かで、けれど強い決意がにじんでいた。
まるで、自分自身に言い聞かせるように。
「確かに……お前のその気持ちは、本物なんだろう」
明人が言う。
「でも、それだけじゃ足りない。……極めるって言ったって、その先には“鉄壁”が立ちふさがってる。お前も分かってるんだろ、雷音」
「……」
「もう一度聞く。――挑めば死ぬぞ? 間違いなく、殺される。……それでも、お前は行くのか?」
明人の真剣なまなざしに、雷音もまた鋭く視線を返す。
そして一拍置き――
「……もういい、分かった」
踵を返し、そのまま背を向けて歩き出す。
「お、おい、待てって……!」
明人の呼びかけを無視して進む雷音。だが、途中でふと足を止め、振り返らずに呟いた。
「――最後に一つだけ、言っておく」
そう言って、ゆっくりと振り向く。
「俺は、お前と違って、まだ諦めていないからな」
その言葉を残し、彼はその場を去っていった。
残された明人は、しばらく無言でその背中を見送って――
「へっ、まったく……仕方ねぇな。いいだろう、俺も覚悟決めた。やってやるぜ!」
立ち上がり、拳を突き上げる。
「見てろよ、俺の覚悟をなぁぁ!!」
――そして現実。
(……あ~、はよ終われや授業。退屈すぎて死にそう……)
浪花明人は、机に突っ伏していた。
と、隣の席から声がかかる。
「おーい、大丈夫かー? 授業中だぞ~?」
声の主は、クラスメイトの伊藤修一――通称イポス。
小学校からの腐れ縁で、昔は同じサッカーチームにも入っていた。
「いや、大丈夫じゃねーからこうなってるんだよ……」
「そりゃそうか。でもそんなに辛いなら保健室行けよ」
「行ったところで寝かされるだけだろ? だったらここでジッとしてた方がマシかなって思ってさ」
「なるほどなー。……お前は、眠くねえの?」
「いや、ぶっちゃけ眠い。瞼がくっつく5秒前だわ」
イポスは大あくび。思わず吹き出す。
「ははっ、やっぱお前もかよ!」
「春って眠くなるんだよ、しょうがないじゃん」
「だよなー」
和んだ空気の中、教室の扉がガラリと開く。
「おいお前ら、席に着けー!」
担任が入ってきた。慌てて姿勢を正す生徒たち。
「それじゃあホームルーム始めるぞー。連絡事項は特になし。終わり!」
「起立、礼!」
『ありがとうございました!』
生徒たちは一斉に帰り支度を始め、ぞろぞろと教室を出ていく。
――その中、イポスがふと聞いてきた。
「なあアキンド。最近お前、雷音となんか深刻そうな話してなかったか?」
俺は少しだけ迷ったあと、ぽつりと口を開いた。
「……健康診断、もうすぐだよな」
「ん? ああ、たしか来週だったか?」
「その日さ。……俺たち男子の診察室のすぐ隣で、女子の診察があるらしいんだよ」
「……だから?」
「つまり――その日に“覗き”を決行するってことだよッ!!」
沈黙のあと、イポスが真顔で頷く。
「なるほど、そういうことか……ってオイ!! 正気かお前!?」
「……協力してくれるよな?」
「バカ言うな! そんなことしたら、俺たち……冗談抜きで殺されるぞ!?」
「可愛い花には棘がある。ましてやウチの女子共なんて、刃物みたいな棘だぞ……」
「言ってみろ、誰がいるか!」
「神羅ちゃんに、絵里洲に、鵺に、フレアに、アクアに、リリス、レイミ、ルシル、セレスティア、ネロ。――うちの学園の美少女ランキングトップ10全員だ!」
「しかもそいつら、全員がHERO級に強くて性格が爆弾!」
「リリスは仕返し3倍返し、アクアは正義感全開の即斬り系ヒロイン、ルシルとレイミも怒らせたら即死級!」
「ユキルと絵里洲は、電車で痴漢を半殺しにして突き出したって武勇伝あるぞ! ネロなんかセクハラ佐官に鉛玉ブチ込んだって話があるし!」
「セレスティアに至っては、セクハラ教師を洗脳魔法で全裸町内一周コースだ!」
「……そんなヤツらの前で覗き……だと……?」
「いや、雷音の奴な、覗きどころか“神羅ちゃんの下着を盗む”って公言したんだよ」
「マジか!? あの噂……盗賊スキルを極めるために神羅ちゃんの下着を狙ってるって、ホントだったのかよ!」
「しかも、当日にミッション決行って言ってたのを、オームに話しちまったらしい」
「うわぁ……神羅ちゃんの婚約者、だよな……オームって」
「うん、ガチギレして巨大ロボ召喚。雷音踏み潰そうとした」
「えっ、あの先日のロボ戦って……理由それ!?」
「そう、あの喧嘩は……全部パンツが原因だったんだ……」
「アホすぎる……! あのロボ喧嘩、校舎破壊レベルだったぞ……!」
「でも雷音のやつ、懲りてねぇ……神羅ちゃんの下着を“盗賊スキルの極致”として狙い続けてる……!」
「本気でやるつもりなのか……あいつ……」
「やるさ。男には、たとえ命を賭けてでも盗らなきゃならないパンツがある!!」
「くっ……バカだ……バカだけど……最高にロックだ!!」
※ただしパンツのために命を賭けるのは推奨されません。
「ってことで、イポス。お前、乗るか?」
「やれやれ……仕方ねぇな。雷音の馬鹿に付き合ってやるよ」
明人は心の中でガッツポーズを決めた。
そしてイポスと二人、同時に呟く。
「「いざって時はぜーんぶ、雷音に罪をかぶせて俺たちゃ知らんぷりな!!」」
こうして、馬鹿三人による、最悪にして最低なパンツ奪取ミッションが始動した――!




