乂阿戦記2 第一章 桜の魔法少女神羅は女神ユキルの生まれ変わり-3 魔法学園のドタバタな日常
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巨大ロボを召喚した馬鹿者は、私の血のつながらない弟と、私の政略結婚上の婚約者だった。
……あれ?
純粋に拳だけで喧嘩してた獅鳳くんとキースくん、もしかしてすごくまともな常識人だったのでは……?
いやいや、それよりこれは――まずい!!
ロボって、あの赤いロボットと黄色いロボットのことだよね!?
超兵器・封獣クトゥグァと、封獣ベリアルハスターだよね!?
あんなもの暴れさせたら、校舎どころか街ごと吹き飛ぶってば!!
私が慌てていると、なぜかタット先生は落ち着いた様子で一言。
「うむ、分かった。すぐ行く。おい、お前ら。今すぐ変身を解いて大人しくするんだ」
――えぇぇー!?
そんな冷静でいいんですか!?
早く止めないと、大変なことになっちゃうじゃないですかぁ!!
私たちが大急ぎで現場に駆けつけると、すでにロボ同士のバトルが始まっていた。
赤と黄色の巨大な機体がぶつかり合い、その周囲では生徒たちが逃げ惑っている。
……ああもう、めちゃくちゃだよ……
その時だった。ひとりの生徒が叫ぶ。
「先生! あそこ、女の子がいます! あの子も勇者みたいです!!」
――女の子?
視線の先、逃げる人波を逆らって立ち尽くしている白い人影があった。
見覚えのある顔。異世界スラルで共に冒険した――白水晶。通称“白ちゃん”。
「ジャミング展開……メタモルフォーゼキャンセラー、起動」
静かに手を掲げた白水晶の足元に、魔方陣にも似た光の紋が咲いた。
空間にノイズが走る。直後、雷音とオームのロボが白光に包まれ――
ごうん、と鈍い音を残し、巨体は仮面と魔剣の姿へと還元された。
ロボの咆哮も、暴走も、まるで最初から“存在しなかった”かのように。
時間にしてわずか数秒。だがそれは、戦場をまるごと塗り替える神業のような介入だった。
メタモルフォーゼキャンセラー。
それは、封獣の変身や巨大顕現を抑える特殊能力である。
――ああ、良かった。
とりあえず被害は出なかったみたい。
私は胸を撫で下ろした。
「白水晶、助かった。礼を言う」
タット先生が白ちゃんの頭を軽く撫でながら言った。
……どうやら、知り合いらしい。
「礼は不用……これも、仕事……」
白ちゃんはいつもの無表情な声でそう返し、微かに微笑んだ。
「おおっ、白! やっぱお前もこの学校来てたのか! まさかこんなとこで会うとはな!」
赤いロボ――封獣クトゥグァが消えたことで、空から落っこちてきた雷音が叫ぶ。
どうやら久々の再会にテンションが上がっているらしい。
「同意……私も驚き」
「ねぇ、どうしてここに?」
「はい、実は……」
「おい、コラお前ら!!」
そこへ割って入ってきたのは、カンカンに怒ったタット先生だった。
「喧嘩に伝説の封獣を持ち出すとか、一体何考えてんだ!?
ええい、雷音、オーム、アクア、フレア、リリス、セレスティア――お前ら全員、懲罰室行きだ!!」
「……ああ、やっぱそうなるよね……」
「それと! そこの狗鬼絵里洲と浪花明人!!
お前らも来い! 誰が勝つか賭けようとして金を掻き集めてただろ!? 学校で賭博は禁止だ!!!」
うわぁ、すっごい怒られてる。
……まあ、当然だけどさ。
いくら何でも、学校で封獣兵器を使うとか、ダメに決まってるじゃん。
っていうか――
「え、絵里洲ちゃん!? 賭博って!?!?」
「うわ〜ん!誤解なんです先生〜っ! 私FXであり金溶かしちゃって今超ヤバいんです〜!!
バレたらパパとママに叱られるぅ〜!!」
「だからって喧嘩賭博で稼ごうとするなよ!!」
「違うんですぅ〜! アキンドくんが“賭けやらね?”って唆してきたんです!
だから全部アキンドくんが悪いんです! 私じゃないんですぅ〜!!」
「なにぃ!? お前俺にだけ罪擦りつけてんじゃねぇよ!!
つーか、俺の名前は“アキンド”じゃなくて“明人”だっつってんだろ!!」
「やっかまし〜!! 二人ともまとめて来い!!
今日はミッチリと説教してくれるからなあああああ!!」
怒り心頭のタット先生は、痛む胃を押さえながら絵里洲ちゃんの耳を引っ張っていく。
こうして、雷音たちは仲良く懲罰室送りとなったのだった――。
騒がしい校庭――
懲罰室へと連行されていく生徒たちを見下ろしながら、生徒会室の窓際で一人の青年が愉しげに笑みを浮かべていた。
黒髪黒眼、端整な顔立ちに不気味な冷笑を浮かべたその男――
露木サウロン。
だが、その名は仮のもの。
真の名は――ロキ・ローゲ。
邪神クトゥルー復活を目論む“クトゥルー教団”の実行部隊、《九闘竜》のNo.4にして、ナイン族を裏から支配する影の支配者である。
「いやはや、相変わらずだねぇ。ユキルに雷音、オームに白水晶……彼らはまるで騒がしい劇の道化たちだ。いいよ、実にいい。遊び甲斐があるってもんだ」
その背後に控えていたのは、漆黒の制服に身を包んだ妖艶な少女。
切れ長の瞳に毒を宿し、その唇には残酷な笑みが浮かんでいる。
「ふふ……ほんと、変わってないねあいつら。ああいう馬鹿が一番おもしろい」
――ナイア。
かつて異世界スラルで神羅たちを翻弄した、かの“七罪の魔女”の一人にして、今やロキの腹心。
「雷音とオーム……短時間とはいえ、魔法少女の協力なしに“機神招来”をやってのけた。正直、あれは想定外だったよ。あれだけの封獣兵器を自力で起動できるなど、並の人間じゃない」
そう呟いたのは、懲罰室に向かう二人の背に視線を投げるもう一人の男――三年生にして《九闘竜》のNo.7、紅烈人。
騒がしい校庭――
その一部始終を、生徒会室の窓辺から見下ろす黒髪の青年がいた。
美しく整った顔に、冷たい笑み。
――露木サウロン。
だが、それは仮の名。
本当の名は――ロキ・ローゲ。
邪神クトゥルー復活を目論む“クトゥルー教団”の実行部隊《九闘竜》のNo.4にして、
ナイン族を裏から支配する影の支配者だった。
「いやはや、愉快だねぇ。ユキルに雷音、オームに白水晶……
彼らはまるで、騒がしい劇の道化たち。いいよ、実にいい。遊び甲斐があるってもんだ」
その背後に控えるのは、毒気を宿した瞳の妖艶な少女――ナイア。
かつてスラルで神羅たちを翻弄した“七罪の魔女”のひとりにして、今やロキの腹心だった。
「ふふ……ほんと、変わってないねあいつら。ああいう馬鹿が一番おもしろい」
懲罰室へと向かう雷音たちの背に視線を投げながら、もうひとりの男が呟く。
三年生にして、《九闘竜》のNo.5―紅烈人。
「雷音とオーム……短時間とはいえ、“魔法少女の触媒”なしに機神を招来した。
正直、想定外だった。封獣兵器を単独で起動できるなど、規格外もいいところだ」
ロキは指を組み、静かに口を開く。
「だからこそ、早めに手を打っておきたい。彼らが“計画”の障害にならないうちに」
「ふぅん……つまり、本気でやるんだ? あの計画を」
「もちろん」
その声には、絶対の確信と冷酷な意志が宿っていた。
「世界は今、矛盾と腐敗にまみれている。宗教、国家、正義、悪――全てが機能不全だ。
僕たちはそれらを破壊し、“深淵の真理”に基づく新たな秩序を築く。
邪神クトゥルーを復活させ、旧き神々の血脈を絶つ――
それが、ナイン族の原初よりの宿願。否、我々の“生きる理由”そのものさ」
「何度聞いてもゾクッとするね、ナイン族の影の支配者サマ」
ナイアは艶やかに笑う。その声音は、毒を孕んだ蛇のように妖しい。
「だけどその前に、邪魔者たちを始末しておこう」
ロキは手元の端末を操作しながら告げる。
「フレア・スカーレット。九闘竜のNo.7である彼女は、悪ぶってはいるが本質的には善良な子供。
今進めている作戦には向かない。むしろ妨げになりかねない」
「つまり、切り捨てるってこと?」
「ああ。その代わり、本部からNo.6《アルカーム》とNo.9《セトアザス》を呼び寄せた。
戦場の狂犬と嘘の魔術師――今の作戦には、奴らのような“異端”が必要だ」
「ひっでぇメンツだねぇ、まったく……。でもさ、気になってたんだけど――
モビディックラーケンに封じられてる九闘竜No.1、《イサカ・アルビナス》の魂。あれ、解放するつもりなの?」
ロキはにやりと笑った。
「もちろん。そのためには、“氷の封獣”を守っている存在を排除する必要があるけどね」
「まさか、今代の“氷の勇者”スパルタクスに挑む気じゃ……?」
「まさか。あの男はドアダ最強だ。No.2のファウストかNo.3パピリオでなければ敵わない。
だから狙うのは――“氷の巫女”イブ・バーストエラー。美しく、冷酷で、隙がない女。だが、君なら……やれるだろう?」
ナイアの唇が艶やかに綻ぶ。
「ふふっ……美女を壊すのは、私の大好物だからね」
「この作戦は、“旧き神の目覚め”に向けた第一段階。そして、世界を手に入れる序章だ。失敗は許されない」
「いつも真面目だねロキ……でも、そういうとこ嫌いじゃないよ」
「裏切り者たち。そしてユキル。お仕置きの時間だ。君が受けた分も、しっかり返してやろう――ナイア」
生徒会室に、二人の不吉な笑い声が響いた。
クトゥルー教団。ナイン族。九闘竜。
その邪悪な牙が、静かに――確実に、勇者たちに迫りつつあった。
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