乂阿戦記2 第一章 プロローグ+桜の魔法少女神羅は女神ユキルの生まれ変わり-1 魔法学園
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第二部 変身ヒーローの勇者様と歌って戦う魔法少女は魔法学園で青春を謳歌する
プロローグ
私の名前は――狗鬼絵里洲。
十二歳。青の魔法少女……だった、って言った方が正しいのかもしれない。
あの日、トラックに轢かれて――目を覚ましたら、そこは異世界スラルだった。
気づけば魔法少女になっていて、気づけば邪神と戦っていて、気づけば――世界を救っていた。
そして、気づけばまた帰ってきていた。
そう、この懐かしくて、どこか他人行儀な“現実”――地球という日常に。
でもね、帰ってきてからがまた、大変だったんだ。
卒業式に、入学準備に、新しい制服の採寸に……それから――新しい家族。
あの日、派手なピンクスーツのオジサンが突如やってきて、こう言った。
「君のパパになる男だ」って。
……は? ってなったよ、そりゃ。
でもママは本気で、その人と籍を入れて結婚した。
その名は――永遠田 与徳。
かつては“悪の組織ドアダ”の七将軍、ヨクラートルと呼ばれた男。
いまは改心して、永遠田グループっていうメディア会社の社長らしい。
見た目も発言もかなりクセ強め。でも、なぜか嫌いになれない。
なんというか……あったかい。ちょっとズレてるけど、不思議と“家族”って感じがするんだ。
そして我が家には、もうひとつの変化があった。
獅鳳くんとユッキー。ふたりも正式に養子となり――私たちは、“本当の家族”になった。
週末になると、あのドアダの首領にして永遠田グループ会長――おじいちゃんが遊びに来る。
お土産を山ほど抱えて、満面の笑顔で。
そして必ず一緒に来るのが、完璧すぎるメイド・イブさん。
私なんかが出る幕もないほど、すべてが完璧で美しい人。
たまにあのナイトホテップ――もとい、永遠田 左丹。CEOにして大伯父様も顔を出す。
そのときだけ空気が少し凍るけど……
彼が、不器用ながらも獅鳳くんに言葉をかける姿を見ると、こう思う。
――この人も、本当は優しいのかもしれない、って。
……そんな日々の中で。
ときどき、スラルでの冒険を思い出す。
雷音、雷華、ミリル、オーム、エドナ、白水晶、鵺――
異世界で出会った、かけがえのない仲間たち。
「……また、会えるよね?」
そう呟いて、私はベランダでアルバムを開いた。
そこには、南極のドアダ基地で撮った集合写真。
ミリルの笑顔は太陽みたいに明るくて、見るだけで元気が湧いてくる。
白ちゃんは静かで、儚げで、眼鏡が似合いそうっていつも思う。
エドナ姉さんは浪花の頼れるお姉さん。
オームさんはクールだけど、あのときはほんの少し笑ってた。
雷音と獅鳳くんは、まるで双子みたいに息ぴったり。
その二人の頭をわしゃわしゃ撫でて笑う、アホ兄――漢児。
雷華は真面目な乙女。獅鳳くんを見つめるその瞳が、ふんわりと優しい。
……そして、ちゃっかり隅っこに混ざってピースする羅刹さんが、もうズルい。
「みんな、元気かなぁ」
ぽつりと呟いた、ちょうどそのとき。
――引っ越しトラックの音が響いた。
時計を見ると、まさに約束の時間。
新しい隣人が、やってくる。
私は玄関へ出て、その姿を待った。
そして――
「神羅お姉ちゃ~んっ♪」
聞こえてきたのは、まさかの声。
小さな女の子が、トコトコと走ってくる。
……ちょ、ちょっと待って!? その子、知ってるんだけど!?
乂紅阿。雷音と雷華の末妹。スラルで一緒に旅した、あの少女――!
「はじめまして、乂紅阿です! 神羅お姉ちゃんに会いに来ました~♪」
ぺこりとお辞儀したその瞬間、私は確信した。
……え、まさか、今日の引っ越し相手って――!?
「ウース、よっ、久しぶり!」
「こら紅阿、挨拶は母さんが先でしょ」
「えぇ~! だってクー、神羅ネーネに早く会いたかったんだもん!」
次々に現れる懐かしい顔ぶれ。
雷音、雷華、弟の阿乱くん。
そして――
「お久しぶりです、絵里洲さん」
現れたのは、美しすぎる女性。
……ホエルさん。雷音の母親で、伝説の魔法女神。若い……美しい……!
「やあホエルさん、遠路はるばるご苦労様です!」
「やっと来れたのね、ホエル!」
与徳パパとユノママも玄関に出てきて、大歓迎モード。
ユッキーが飛び出して、ホエルさんに抱きついた。
紅阿と雷華がはしゃぎながら言う。
「神羅お姉ちゃん、今日から一緒に住むの?」
「もちろん、よろしくね」
「やったー!」
歓声が、音楽みたいに空へ舞い上がる。
雷音が、私の隣でぼそっと言う。
「俺たち一家、今日からこの地球で暮らす。
とりあえず一年はこっちの学校に通うらしいぞ。……お前と同じ学校な」
「えっ!?!?!?」
思わず叫んだ私に、彼はさらりと続けた。
「お前が通う予定の“ドアーダ魔法学園”ってやつ、地球外からの留学生も多いんだとさ。
ミリル、オーム、エドナ、鵺、白水晶――全員、入学するらしいぞ?」
「マジかよっっっ!!」
思わず天を仰いだそのとき、荷物を抱えた羅刹さんの声が飛ぶ。
「おい雷音、手伝え!」
「へーい!」
「兄よ、私も手伝う!」
「ぼ、僕も!」
「じゃあクーも~!」
みんながわらわらと荷物を運び始めて、笑い声が空へと響いていく。
――懐かしい。
どいつもこいつも相変わらず騒がしくて、でもそれがすごく愛おしくて。
私はそっと微笑んだ。
「また、始まるんだね」
そう呟いたそのとき、アホ兄と獅鳳くんが玄関から顔を出した。
……やれやれ。やっぱりこの物語は――
まだ、終わらない。
第一章 桜の魔法少女神羅は女神ユキルの生まれ変わり
私の名前は――永遠田 神羅。
異世界での名前は、乂神羅。
今日から私は中学生。
そして、私のお祖父ちゃん――永遠田 加富が経営する魔法学校に通うことになった。
地球に戻ってからというもの、私の周囲には異世界スラルから来た人たちが、けっこういる。
なかでも私たちが住んでいるこの地区は、地球政府と協定を結んだ特区扱いらしく、転移者や異邦人が目立って多い地域だそうだ。
だから“異世界からの転校生”なんて、別に珍しくない。
……まあ、たいていは親の転勤や企業の異世界開拓事業でこっちに来たって人たちだけど。
そんなことを考えながら、私は今日も登校路を歩く。
「おはよう、神羅さん!」
ぱっと振り返ると、声をかけてきたのは神楽坂レイミさん。
同じクラスで、今年のクラス委員長。そして、噂の“超絶美少女”。
彼女は、両親が仕事で海外に行っているため、中学に上がるまでは母方の祖父母と暮らしていたという。
今はひとり暮らしらしいけれど、いつも堂々としていて、どこか凛とした空気を纏っている人だ。
「おはようございます、神楽坂さん」
「もう、敬語はやめようよ。同い年なんだし」
「……うん、わかった」
「その髪飾り、かわいいね」
「ありがとう。お気に入りなんだ」
「よかったら、ちょっと触らせてもらってもいい?」
「え?」
「……ダメならいいの。ごめんね、変なこと言って」
「ううん、全然大丈夫。はい、どうぞ」
私は髪飾りをそっと差し出した。
レイミさんはそれを指先で撫でて、感心したように言った。
「あら……ふわふわ。こんなの、初めて触ったわ」
「へぇー、そうなんだ」
その日を境に、私たちは少しずつ距離を縮めていった。
そして今――
私の部屋で、ふたり並んで紅茶を飲んでいる。
「ねえ、神羅さん……実は、ずっとあなたのことが気になってたの」
「……へ?」
ぽかんとする私に、レイミさんは真っすぐな瞳で問いかけた。
「……神羅さん。あなたは、本当に――“秘密結社ドアダ”の七将軍、ユキル・ドアーダなのですか?」
――時が、止まった。
「――――えっ!? なんで、それを……!」
「やっぱり、そうでしたか。安心してください。私は、あなたの秘密を外に漏らしたりしません」
彼女の口調は落ち着いていて、嘘をついているようには見えなかった。
「なぜなら、私も“同じ世界”から来た者だから」
「……同じ、世界?」
全く話についていけない。けれど、彼女の瞳はあまりにも真剣だった。
「私は、かつてスラルで神官の一族に生まれました。
異世界の王より力を授かり、邪神軍と戦い続け――そして、さまざまな事情を経て、地球に転移してきたのです」
レイミさんの語りには、重みがあった。空想じゃない、本物の記憶のような。
「そして今の私は、“銀河連邦クインブリタニア”のヒーロー候補生。……今日ここへ来たのは、あなたにどうしても伝えたいことがあったから」
「なに……を?」
「つい先月ドアダ南極基地に、“白の魔女”の動きが――確認されました。最終兵器エクリプス、再起動の兆候です。そしてそれを狙う“ナイン族”も、また――動き出しています」
「……エクリプス……?」
聞き覚えがあった。
あの白の魔女――あの存在が、再び動き出すというの?
「私たちは、争いを広げたくない。だからこそ――神羅さん。
いえ、“ユキル・ドアーダ”としてのあなたにお願いがあります」
彼女は深く頭を下げた。
「どうか、私たちと共に戦ってください」
心が、揺れた。
私はもう、ただの中学生のはずだった。
だけど――
(……違う。私は、まだ“あの力”を持っている)
胸の奥で、何かが静かに光り始める。
――この力は、隠すためのものじゃない。
誰かを守るために、あるんだ。
だから、私は答えた。
「……わかった。その話、引き受けます」
レイミさんの顔が、ぱあっと輝いた。
「ありがとうございます! ではまず――」
彼女は微笑んで続けた。
「私たち“銀河連邦”と“ドアダ帝国”は、長い間、敵対関係にありました。
でも、私たちの世代でこそ、対話の時代を築きたいんです。
そのためには、まずお互いを知ることから始めましょう。
現在、ドアダ魔法学園には私と同じヒーロー候補生が十名入学しています。
ユキルさんの仲間たちとも、交流を深めていけたらと考えています」
その語り口は、あまりに明るく、前向きで――眩しかった。
不思議とこっちまで、楽しくなってくるような気がした。
きっとこの子は、良いリーダーになる。私は、そう確信していた。
↓物語をイメージしたリール動画です。
https://www.facebook.com/reel/947823413363071/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0




