乂阿戦記1 終章 これは始まりの物語の終わりの闘い-17 ドアダ最終兵器エクリプス
\超展開✖️熱血変身バトル✖️ギャグ✖️神殺し/
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――ドアダ秘密基地におけるナイン族との戦いは、ついに終わろうとしていた。
だが、それは“勝利”によるものではない。
新たなる“呪い”の幕開けにより、戦場は静かに終焉を迎えたのだ。
その頃、別の場所――
ドアダ秘密基地の最奥部。
そこは、首領と七将軍、極一部の研究者以外、誰ひとり足を踏み入れることを許されない禁忌の領域。
魔導と科学が融合した超重警戒施設にて、巨大な柱状構造物が静かに鼓動していた。
その名は――
《エクリプス》
全高100メートルを超える“柱”の中には、赤紫の培養液を湛えたカプセルが設置されている。
その中心。眠っているのは、一糸纏わぬ女神。
その姿は神のようであり、魔のようでもあった。
顔立ちはユキルに酷似していた。
だがその瞳、その微笑み、その身体は――“神子”ではない。
女神の皮をかぶった、魔性の災厄だった。
――彼女の名は《カンキル・ドアーダ》
ナイトホテップの前にあるコンソール画面に文字が表示された!
【パスワード入力】
(この文字が表示されるまで5分以上かかった)
画面にメッセージが浮かぶ
『妾を呼ぶ者は誰か?』
「……俺だよエクリプス……いや我が姉カンキル!」
『ほう、サタンか?』
培養液の中の女が薄っすらと目を開く。
その女の顔立ちはユキルにそっくりだった。
だがユキルとは違い、女として成熟した肉体と傾国とよべる魔性の美貌を誇っている。
女の名はカンキル・ドアーダ。
ユキルの前世の母にして、ドアダ首領の娘。
15年前、封印されたエクリプスを蘇らせ、その力をわが身に宿した“稀代の悪女”――
現在のエクリプス、そのものだった。
「いきなり叩き起こして悪いんだが、この秘密基地がナイン族に見つかって攻撃を受けてる。姉貴の力であいつらを呪ってくれねーか?丁度いい生贄が来たと思ってよ……」
カプセルの中でカンキルがニィと嗤う。
その笑みはユキルならば絶対に見せないであろう邪悪な笑みだ。
『ふん、ナイン族か…あの虫けら共め、しつこい奴等じゃのう』
「まぁそう言うなって、わざわざ出向いて姉貴の養分になってくれるんだ。殺していい人間を探す手間が省けたってもんだろう?」
『まあよい、奴らの血肉が妾の復活の儀式に必要なのであれば利用してやろうではないか』
「助かるぜ姉貴」
『して、汝は何を望む?』
「ああそうだな……まずは手始めにこの俺の邪魔をするあの愚かな下郎共に罰を与えよう」
『よかろう』
カプセル内、カンキルは妖しく笑う。
その笑みはユキルのそれとはまるで異なる。悪意と毒が交差する、純粋な“魔の女”のそれだった。
その瞬間――
地下空間が激しく揺れた。
ズズン……ッ!
地響きとともに、床を突き破るように無数の触手が現れる。
それらは明確な意志を持つように、ナイン族の兵士たちだけを狙って襲いかかった。
叫び、逃げ惑う兵たち。
だが触手は正確に彼らを捕らえ、身体中の養分を吸い上げていく。
数秒後には、干からびた骸となり、動かなくなった。
一方、ドアダ兵たちは一切傷つけられていない。
――これは選別された“呪い”だった。
まさしく地獄絵図。
だが、これはまだ“序章”に過ぎなかった。
呪いが、発動した。
空が割れ、異形の光が滲み出す。それは星でも、雷でも、理のある光でもなかった。光であるのに、暗かった。
それは星でも太陽でもない。歪みを孕んだ、忌まわしい輝き。
その輝きが広がり、天を覆い尽くすと――そこから、**無数の“黒い手”**が出現した。
その手は、飛行戦艦に乗る兵士たちを次々と捕らえ――
身体の内へと“侵食”する。
叫び声もむなしく。
ナイン族の空中兵士たちは、次々と変貌を遂げていく。
人の思考を失い、理性を失い、ただの“化け物”と化して。
同胞に牙を剥き、襲いかかる。
――かくして、空中艦隊は、一人残らず“ゾンビ”と化した。
上空に浮かぶ戦艦は、まだ6隻。
だが、それらはすでに“帰還不可能”な罠を積んでいた。
あとの6隻は、すでに乂阿烈により撃沈済み。
残る戦力は、自らの“本拠地”に戻っていく。だがそれは、滅びの種を持ち帰る行為に等しい。
阿烈は地上からその様子を見上げていた。
その目は、獲物を逃した獣ではなかった。
ただ、無表情に――勝利の確信を見つめていた。
その横に立つのは、ジャムガ。
「阿烈よ……さっきの光は……」
「……うむ。エクリプスの“呪い”だ」
「ならば、あの戦艦に乗っているナイン兵は……」
「ああ。全員、ゾンビか、邪神の眷属になっている。
かつてのラキシスやアシュラと同じようにな」
「帰還したと同時に、仲間を襲って……ゾンビを増やす気か」
二人の会話には、哀れみも正義もなかった。
冷静な観察者として、ただ事実を分析するだけ。
「……まわりくどい真似をする。
どうやら、エクリプスはまだ完全復活には至っておらんようだ」
「本来なら惑星一つを一瞬で化け物に変えるレベルの呪いだろう?
それをしないってことは、まだ力を温存してるわけか」
「……人間のほとんどは、あの呪いを防げん。
魔法少女の加護という“例外”を除いては、な」
阿烈とジャムガは、静かに顔を見合わせる。
彼らの脳裏をよぎるのは、“人類の未来”ではなかった。
いかにしてあの超兵器をドアダからだし抜いて手に入れるか、そしてその超兵器を使っていかにして天下の覇権を狙うか思案に暮れるのであった。
地の底で、カンキルの妖しい笑みが再び灯る。
地の底にて、まだ誰も気づいていなかった。
それが、神々の“遊戯”の始まりであることに――。




