乂阿戦記1 終章 これは始まりの物語の終わりの闘い-12 蛇王の猛攻
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神羅達は作戦通り四方八方に別れて逃走した。
ナイトホテップが無造作に右足を上げ、大地に震脚を叩き込む。
足元から地面が爆ぜるような衝撃が走り、雪原が波打つ。隠れていた全員が、まるで爆風に吹き上げられたかのように宙を舞った
「うわあああああ!!!」
宙に舞う4組を見据えると今度は左足を上げて大地を踏み鳴らす。
すると4組に向かって無数の衝撃波が襲いかかり4組はそれぞれ防御結界を張ったり回避したりしてなんとかそれを防いだ。
さらにナイトホテップは両腕を交差させると気合を入れるかのように叫ぶ。
『ぬおおおおおおお!!!!』
凄まじい闘気が吹き荒れる。
同時に彼の両腕からは紫の炎が噴き出し巨大な火柱となった。
そして両手を天高く掲げるとそのまま勢いよく振り下ろす。
「フレイム・インフェルノ!!」
次の瞬間、苦心して整えられた雪と氷の闘技場は、無残に蒸発していた。
『さあ、来い!』
そう言うと、右手を高々と掲げ、左手を前に突き出し半身の姿勢を取る。
その姿はまさに魔王そのものに見えた。
ナイトホテップの背後にある魔法陣が輝きだす。
そこから出現したのは大きな黒い塊だった。
まるで闇そのものが意思を持ったかのような漆黒色のスライムである。
大きさは直径10メートルはあるだろうか。
表面は脈打つようにぐにゃりと蠢き、牙の生えた口や眼球が、意思を持つかのように這い回っている。
『テケリ・リ』
そう、この生き物はショゴス
その昔、古のものが外なる神ウボ=サスラの体組織から作りだした奉仕種族で狂気山脈の地下に蠢いていたのをミリルが見つけ召喚契約したのだ!
「いけ!テケちゃん!」
ミリルが嬉しそうに命令を下すとテケちゃんはテケリ・リと鳴きながらナイトホテップへと向かっていく。
「奥義紫電螺旋掌!」
ナイトホテップの一撃でテケちゃんはバラバラに吹っ飛ぶ。
だがバラバラになった破片達は人の形をとり獅鳳の姿となった。
「ショゴスを使った分身!?ならば本体はどこだ?」
そう言いながら辺りを見回すナイトホテップ。
「後ろだよ」
後ろから声がすると同時にナイトホテップの大将バッチを奪おうと手が飛んでくる!
「うおっ!」
咄嗟に腕でガードし蹴りを繰り出し獅鳳を吹っ飛ばす。
「まだまだ!うりゃー」
今度は正面から別の獅鳳が現れると蹴りを放つ!
「くっ」
間一髪で避けるとそのまま距離をとる。
すると背後からまた別の獅鳳の声がする。
「遅いよ」
慌てて振り返るとそこにはやはり獅鳳の姿が……
そして前後左右同時に獅鳳が出現する。
どうやら4人一気にとり囲んでバッチを取ろうとしているらしい。
獅鳳達の連続攻撃を避け続けるナイトホテップ。
しかしこのままでは埒が明かないと思ったのか、反撃に転じる。
「甘いぞ!まとめて吹き飛ばしてやる!!」
そう言うと必殺技を発動した。
「爆散震脚!!」
先ほど氷のステージをひと踏で吹き飛ばした技だ。
巨大な震脚の反動エネルギーが地面より吹き出し皆を襲う!!
避けきれないと判断した獅鳳達が防御態勢を取るが防ぎきれるはずもなく次々とダメージを受けていく。
テケちゃんが化けた偽獅鳳はエネルギーに耐え切れず次々と破裂していく。
そして最後に残った1人が吹き飛ばされるとようやく攻撃が止んだのだった。
ボロボロになりながらも立ち上がれた者は勇魔共鳴で強化されてる4組のみ。
戦いはまた振り出しにもどる。
「みんな試合終了まであと4分だよ!」
小細工でもそれでも1分時間を稼げた。
(残り時間は4分20秒)
4組とナイトホテップはお互いに睨み合い牽制し合う。
そんな中真っ先に動いたのは雷音のばけた偽獅鳳だった。
他の3人に目配せをすると一斉に攻撃を仕掛けてきた。
それを迎え撃つために身構えるナイトホテップ。
そんなとき、空から桜色に輝く魔法の鎖がナイトホテップに降り注ぐ。
神羅のマジックバインドだ。
その隙に一気に間合いを詰めてくる雷音の偽獅鳳。
手には魔剣クトゥグァを持っていた。
上段からの唐竹割りに振り下ろす雷音の偽獅鳳。
しかしその斬撃が届く前に、ナイトホテップは一瞬で魔法の鎖を引きちぎり右手一本でクトゥグァを掴み取り、雷音の身体ごと獅鳳に化けたオームに投げつける。
投げつけられたオームは咄嗟に受け止めると、そのまま蹴り飛ばし距離を離す。
「あ、こらオーム!テメ蹴り飛ばしやがったな!」
「うるさい!魔法攻撃の詠唱唱えるかるから時間稼ぎしてこい前衛!」
雷音と入れ替わり様に今度は獅鳳にばけた神羅が飛び込んでくるが、それすらも左手で難なく受け止めて弾き飛ばす。
その神羅を受け止めたのは復帰した雷音。
2人は息のあった連携で攻め立てるがことごとくかわされるか捌かれ逆に反撃を受ける始末である。
その間もオームは暗黒魔法を雷華は火炎魔法を放ち援護射撃をするのだが、それも簡単にいなされてしまう。
(なんてヤツだ!)
(この強さ尋常じゃないわ!)
「こうなったらアレを使うしかないわね」
そう言うと鵺はおもむろに背のジッパーを下げ背肌を露出させる。
するとそこから現れたのは巨大な黒い翼だった。
鵺はその大きな翼を広げ獅鳳に化けてる神羅と共に飛び上がる。
そして上空から無数の闇の刃を降らせ始める。
しかしナイトホテップはそれをものともせず全て素手で叩き落としていく。
それでも諦めずに何度も繰り返すが結果は変わらない。
ナイトホテップが手をかざすと紫色のオーラが発生し、鵺を襲う。
慌てて回避するが間に合わず直撃してしまう。
吹き飛ばされ地面に叩きつけられる神羅と鵺を見てナイトホテップが言う。
「今の羽は俺に対する攻撃じゃねぇな?なんの小細工をした?」
鵺はニヤリと笑い呪文を詠唱する。
ナイトホテップに叩き落とされなかった十二本の黒羽は地面に突き刺さり魔法円を描いていた。
「おんぐ だくた りんか、ねぶろっど づぃん、ねぶろっど づぃん、おんぐ だくた りんか、
よぐ=そとーす、よぐ=そとーす、おんぐ だくた りんか、おんぐ だくた りんか、やーる むてん、やーる むてん 時よ止まれ! タイムストップ!」
その瞬間世界が静止した。
ナイトホテップも観客も時が止まった世界に取り込まれ動かない。
動けるのは鵺が時間停止世界の入門を許可した仲間達のみ
「みんな今よ!」
全員が一斉にナイトホテップの大将バッチをもぎ取ろうと手を伸ばす!
「待てお前等!」
時間が止まった世界で羅刹が皆を制止する。
その事実に鵺が驚愕する。
(時間が止まった世界でどうして羅刹が!?)
さらに時の止まった世界でナイトホテップが音では無い念話の様な何かで話しかけて来る。
「おいおいおい、たかが時間を止めた程度で俺を倒そうってのか?そんな虫ケラみたいな力でこの俺に勝てると思ってんのか?」
止まった時間の中ナイトホテップが手を掲げると巨大な紫の炎が噴き出す!
「フレイム・インフェルノ!!」
その一撃で全員まとめて吹き飛んでしまう。
オームが咄嗟に魔法の盾を作り紫の炎を防ぐ。
だが余りに強力な炎の前に魔法の盾は融解しオームのバッチも消し炭になった。
「し、しまった!」
オームが愕然とする。
「こいつが模擬戦でよかったな。殺さないよう配慮してやったぜ。いったろ?余裕だって!」
「クゥッ!」
オームは悔しそうに膝を突く。
バッチを失い戦闘資格を無くしたのでルールに従い皆の変身の魔法を解除する。
全員の姿が元に戻る
(残り時間は3分40秒)
「そ、そんな!?私の時間停止魔法は確かに世界の時間を止めたはず!!」
呆然とする鵺にナイトホテップは余裕っぷりに説明をした。
「よく覚えておけ。俺や羅刹のような神域の戦士は、理の枠を越えた“理外”の存在。
戦闘中、光速すら置き去りにする瞬間がある。
その速度なら──たとえ世界が止まっていても、“割り込める”のさ。」
そう言うとナイトホテップは指で小石を弾き魔法陣の羽根を一本潰す。
すると時間制止の魔法陣が壊れ止まっていた時間が動き出す。
「それならこの呪文を!」
鵺が別の時間魔法を発動すべく呪文を唱える。
「クイックタイム!」
今度は自分達の外の世界の時間速度が早くなる効果の魔法だ。
しかしそれでもまだ足りないようだ。
このままではまた制限時間が来る前に全滅してしまうだろう。
そう判断した雷音は切り札を切ることにした。
試合前に用意していたアイテムが懐の中にある。
上手くそれを使えれば戦況を覆すことが出来るかもしれない。
そう思って懐に手を入れようとした瞬間だった。
「キャアアアア!!??」突然足元が大きく揺れ出したのだ。
どうやら地震のようだ。
それも今まで経験したことがないほどの大きなものだ。
当然その場にいた全員が立っていられない程の激しいものだった。
だがそれは地震では無かった。
ナイトホテップが爆散震脚で闘技場を激しく揺らし雷音達をまともに立てなくしたのだ。
まともに動けない中ナイトホテップが自分達に迫る!
まず最初に勇魔共鳴のパワーアップを失ったエドナがバッチを取られる。
「あ、あかん!ウチもスピードには自信あったけど光より早い相手は無理ゲーやわ!」
エドナはガックリと膝をつく。
(残り時間は2分50秒)
「まずいぞ!このままじゃあ全滅だ!」
「みんな!」
そう言って真っ先に動いたのは神羅であった。
「まずは時間加速魔法を発動してる鵺ちゃんを死守するよ!」
鵺と勇魔共鳴している神羅はナイトホテップと距離を取り、赤の勇者と翠の勇者が前面にでる。
「うおおおお!!」
「はあああああああ!!!」
二人の気合の入った一撃がナイトホテップに直撃するが、ナイトホテップはそれをものともしない。
「ふんっ!そんな攻撃が効くかあ!」
「うわあああ!?」
ナイトホテップは逆に二人に攻撃を食らわせる。
時間加速魔法を止める為、ナイトホテップはまず最初に神羅と鵺に狙いを定めていた。
まず前衛の神羅のバッチを奪い取ろうと手を伸ばす。
光の速度すら凌駕する閃光のごとき一閃が、神羅の胸元に向かって突き出される。
――だが、彼女の瞳はその“兆し”すらも見抜いていた。
「サタン叔父さん……女の子の胸に無断で触ったら、地球じゃ懲役モノよ?」
神羅は冷や汗を流しながらも、涼しい顔で舌を出す。
その双眸は、あの転生前の名──乂ユキルが有していた“未来予見の視覚”をそのまま宿していた。
(……見えてる。攻撃の“兆し”が──)
彼女は、ナイトホテップの拳が振るわれる“数手前”──意識の断片が動く“その兆し”だけで回避していた。
「──なるほどな」
ナイトホテップが唸ると、羽織っていたマントを一閃。神羅の視界を覆う。
「くっ──!?」
その隙を突かれ、彼の指が神羅の胸元へと突き出され──
「きゃあっ!!」
バッチが剥ぎ取られる。
魔力の奔流が弾け、神羅の変身が強制解除される。
同時に、勇魔共鳴していた鵺にも激しい反動が伝わる。
「黒の魔法少女よ。お前の大将バッチを奪えば──この試合は終わる」
魔王の如き言葉に、鵺は歯を食いしばりながら魔法銃を引き抜いた。
銃口から放たれる、紫電の如き弾丸──
「──無駄だ」
その言葉と共にナイトホテップの指が舞い、すべての弾丸を軽々と弾き落とす。
そして、沈黙の中──手が伸びる。
「いやっ──!」
バッチが潰され、鵺の変身が解けた。
地に膝を突いた鵺の耳元に、低い舌打ちが響く。
「……チッ。大将バッチじゃなかったか」
彼女が見上げると、赤と翠の勇者が左右へと散開していた。
インターバルの間に大将役を交代していたのだ。
「ここまで小細工を重ねてくるとは……大したもんだ。いや──見事だ。認めよう」
ナイトホテップは、顔に獰猛な笑みを刻んだまま、拳をぐっと握りしめる。
(──残り時間、一分四十五秒。試合は、まだ終わらない)
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↑イメージリール動画




