乂阿戦記1 第一章- 赤の勇者雷音と炎の魔剣クトゥグァ-4後編 拐われた神羅、そして銀の勇者の絶叫
「神殺しの拳が交差する最終決戦。そして神羅、羅漢、ナイア──三者の運命が交錯する《因果転移》編、ついに決着!」
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第5部きちんと執筆中です。とりあえず読みやすくなるよう一度全部清書してみる予定です。
空が赤く染まり、大地が裂ける。
火山の脈動が、地獄の序曲のように唸りを上げた――
その絶望の波は、遥か山麓の町にも及び始めていた。
火山の麓、避難する民たちの混乱は極限に達していた。
天を覆う火山灰。地を引き裂く地鳴り。逃げ惑う人々。
まさにそこは、終焉を映す“煉獄”であった。
だが。
その混乱を、神々しい白き光が断ち割った。
「皆さん、落ち着いて! 避難ルートは確保されています!」
「このままじゃ、山が爆発するぞォ!! 早く離れるんだッ!!」
そんな中、空を切り裂き、白銀の光が舞い降りる。
あまりの神々しさに、人々は一瞬、恐慌すら忘れた。
白き巨神――そして、それに並ぶ天使の如きふたりの姿。
一人は、荘厳なる白の装束をまとい、
その瞳に聖なる光を宿す少女。
もう一人は、研ぎ澄まされた美しさを持つ美丈夫
その姿はまさに、神話の“再臨”だった。
スピーカーから、澄んだ声が響く。
『我が名は──リーン・アシュレイ。アシュレイ族族長の代行者』
『そして私は従者・白水晶。汝らに告げる──恐れるな、災厄はまもなく静まる』
その声を聞いた者たちは、皆、言葉を失い。
そして――
「し、神子様じゃああッ!!」
「ありがたや……! アシュレイ族の神子様が来てくださった……!」
人々は地にひざまずき、祈りを捧げた。
火山の災厄すらも打ち消すような、白き希望の光。
それこそが、リーン・アシュレイ。
そしてその右腕たる、白の勇者――白水晶。
「白水晶、追跡装置の準備は?」
「イエス、マスター。対象の転移波動、捕捉済み。いつでも転送可能です」
「ならば……見せてもらおうか、乂阿烈。君の“真価”を」
――そして、再び場面は地獄の戦場へと転ずる。
粉砕された白虎機の残骸。
そこから、血に濡れた羅漢の身体が、ゆっくりと動く。
意識は朦朧。呼吸は浅く。
だが、それでも彼は立ち上がろうとする。
だが――
「さあ雷音、とどめを刺しなさい」
ナイアの命令が、戦場を支配する。
雷音の手が操縦桿を握りしめ、
クトゥグァの焔剣が、再び振り上げられた。
羅漢の命が、その先に晒される。
だが、その瞬間――
「三分だ」
低く、沈んだ咆哮。
戦場の空気を一変させる、神の声。
「大人の時間は……終わりだ、雷音」
乂阿烈が、地を踏みしめ、静かに現れる。
その身体からは紅の装甲が剥がれ、
雷音の姿が崩れていく。
まるで、封印が解けるように。
「……え……ここ……は……」
朦朧とした意識の中、雷音は羅漢の姿を見つける。
「羅漢兄さん……!? どうして……こんな……ッ!!」
「俺のせい……? ……俺が、暴走したから……」
彼は駆け寄り、倒れ伏した兄を抱き上げる。
「羅漢兄さんッ!! 目を覚ましてくれ!! しっかりしてよ!!」
羅漢は、かすかに目を開く。
だが、言葉にはならず、呻き声を漏らすだけだった。
「……あれは、“治療打撃”じゃ」
阿烈の声が、空気を震わせる。
「ワシの拳はただの暴力ではない。
異常魔力を打ち消す“祓いの拳”──
弟を正気に戻すため、ワシは拳を振るっておったのよ」
「武、医、芸。三つの術を極めてこそ……真の武道家じゃ」
ナイアが、息を呑む。
「貴様……最初から……!」
雷音の目にも、戸惑いが滲む。
「……兄さん……俺……俺……」
その時。
ナイアの左腕が、突然変化する。
肉が蠢き、腕が触手と化し、
雷音の背後――カプセルを砕き、神羅の身体を奪い取った。
「待てえええええッ!!」
羅漢と雷音の叫び。
だが――遅い。
ナイアが開いたワープゲートが、彼女の背後に広がっていた。
「ワープ装置、起動ッ!!」
光の渦が、神羅とナイアを包み込む。
その瞬間。
「まだだッ!!」
羅漢が、血まみれの身体でナイアの足にしがみつく。
「離せえッ!! この……ッ!!」
ナイアの腕が、ドリルと化し――
「ぐっ……はああああああああああッ!!」
羅漢の腹部を貫いた。
「羅漢ッッ!!」
雷音の絶叫は、空虚に響く。
「羅漢が……兄さんがぁああああああああああああああッ!!!」
拳を地に叩きつけ、雷音は咆哮する。
その叫びは、天を裂くほどの慟哭だった。
──ワープゲートは、光と共に閉じた。
残された雷音は、ただその場に膝を落とした。
何もできなかった自分に、拳を握り、唇を噛みしめていた。
消えたのは――
ナイア。
神羅。
そして、羅漢。
残されたのは、沈黙と、焼け焦げた風だけだった。
──
──
その静寂を破ったのは。
乂阿烈の、ひとつの呟きだった。
「……これで、またひとつ、“因果”が動いたか」
阿烈が、崩れ落ちた雷音を抱きしめながら語る。
その声には、怒りも焦燥もない。
ただ、揺るぎなき“決意”だけがあった。
「揺籃の刻は終わった。女神を巡り、再び運命が動き出す……」
「戦がはじまる。弟達よ、これより我らが歩むは──冥府魔道、修羅の道なり」
──物語は、さらに深淵へと踏み込んでいく。
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