乂阿戦記5 EXステージ 六道魔人テスカトリポカ-17 一つの終焉と再生の物語
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
氷に囲まれた壁に囲まれた、益荒男の土俵に残されたのは、ただふたり――
覇王乂阿烈
覇道を征く拳の帝王。大武神流を極めし男。
己が悪徳を正義と断じ、天をも恐れぬ傲慢と誇りを身に纏う、乂族最強の男。
そして、
テスカトリポカの赤、シペ・トテック
狂気の破壊神。理性なき殺戮の化身。
喜怒哀楽すら理解せぬ“絶対なる子供”の姿をした純粋悪。
この宇宙の全てを消し去るために、笑いながら破壊する者。
砂塵の荒野。
一撃で山が砕け、叫び一つで雷鳴が走る。
二つの異なる時空が、今、激突する。
「ホキャアアアアアアア!!!」
――笑う。理解などせぬ。
ただ楽しいから暴れる。ただうれしいから殺す。
それがテスカトリポカという災厄。
だが、阿烈は微動だにせぬ。
「その“無”なる魂、我が拳で在りにする。」
覇王の拳が唸る。
――阿烈ノ拳!
大気が鳴動し、空が割れる。
拳から放たれた気の奔流が、真っ直ぐにテスカトリポカを襲う!
しかし――
「カカカカカカカカカカ!!!」
テスカトリポカは笑いながら直撃を受け、肉体が一瞬霧散する。
だがすぐに、まるでゴムのように再生し、再び現れる!
「ぬう……再生すら超えた存在か……だが!」
阿烈は大地を踏み締め、テスカトリポカへと突貫する。
砂煙を蹴り、天地を揺らす脚技――
――覇王の蹴りが唸る!
だがシペ・トテックも笑いながら迎撃。
手刀を一閃、空間ごと切り裂き阿烈の胸へ直撃!
「グッ……!」
それでも倒れぬ。阿烈の眼は燃えている。
拳を握りしめ、己の限界すらも意志で超える。
拳と拳がぶつかる。
シペ・トテックの伸縮自在の肉体が阿烈を包み、圧殺しようとする。
だが――
「阿修羅豪打拳!!!!!!!!!」
怒涛の拳が嵐のように打ち込まれる。
空間が揺れ、地形が変わる。
シペ・トテックの身体が裂け、砕け、ちぎれる。
しかし、それでも――
「カカ!カカカカカ!カーカカカカカカカカカカ!!!」
再生する。無限に。
阿烈ノ拳――砕く。
阿修羅豪打拳――重ねる。
羅王裂脚――断つ。
三段の破壊で、荒野そのものが崩れ去る。
それでもこの不死身の神は死なぬ。
阿烈の額に、一滴の汗が流れた。
そして、ゆっくりと拳を構える。
「一瞬で消滅させねばならぬか……」
覇王の眼差しが曇る。
「貴様に理がないのならば……一撃滅殺の拳を叩き込むのみ! 惜しい! 実に残念だぞ! ウヌを消滅させるため大武神流秘奥義・灼陽紅蓮拳を使わねばならぬか……」
二人の戦いは、天界にまでその気配を届かせていた。
だがその瞬間だった。
遥か上空、雲の向こうから――
静かな“歌声”が、降りてきた。
そう、狗鬼漢児とレッドがジャムガきら託された音楽の魔法石を指定の位置に配り終えたタイミングだった。
♪「きっと大丈夫。あなたの痛みは、空が知ってる――」
透き通る声だった。
優しさに満ち、悲しみに寄り添う、光のような歌。
シペ・トテックが、ふと動きを止めた。
「……?」
阿烈もまた、眉をわずかに動かす。
「……この声は……」
歌は続く。
♪「たとえ世界が滅びても、誰かが微笑んでる――それだけで、いい」
六道魔人テスカトリポカの眼が、初めて感情に揺れた。
どこか遠くを見つめるように、静かに空を仰ぐ。
その視線の先――空を浮かぶ、水色の飛行船。
そしてその上に立つ、ピンクのドレスを纏った少女。
――女神ユキル。
彼女は空の歌姫だった。
祈りの歌を、痛みを知る者にだけ贈る存在。
「ア……ユキル……セイ…ラスヴェード……ルキユ……ヴァールシファー…モ…イル……」
「……お前も、気になるのか?あの歌が…」
阿烈が、珍しく穏やかに言葉を紡ぐ。
シペ・トテックは、こくりと頷いた。
まるで、純粋な子供のように。
その姿に、阿烈はしばし拳を下ろし、静かにシペ・トテックの前に立つ。
そして、膝をつきシペ・トテックと同じ目線になって言った。
「坊主、あの歌を間近で聴きたいか?」
シペ・トテックは素直にコクリと首を縦にふる。
阿烈は獣のような笑みをわずかに和らげた(本人的には出来うる限りの優しさだ)。
「……ならば、見せてやろう。あの空の歌を」
覇王は、両手でシペ・トテックを抱え上げ、「乗れ」と肩車をした。
シペ・トテックがきょとんとする。
「天を恐れぬこの肩は、貴様一人くらい、容易く乗せられる」
シペ・トテックは、わずかに困惑した様子を見せたが……
次の瞬間、無邪気に笑い、両手を叩いて喜んだ。
「キャッキャッキャ!!」
子供のような声で笑いながら覇王の肩に座るシペ・トテック。
そして、覇王は空を睨み――跳躍する。
「覇王天翔!!」
大地が爆ぜ、風がうねり、空へとその巨体が舞い上がる。
飛行船めがけ、雷鳴を踏みしめるように跳ぶ巨影。
神羅はその光景を見つめながら、微笑んでいた。
阿烈の肩で、シペ・トテックが嬉しそうに手を振る。
まるで、破壊と殺戮を繰り返していたあの姿が幻だったかのように。
阿烈が静かに言う。
「……お前にも、見えるのか。
あの光が……“希望”というものが」
赤いテスカトリポカは答えない。
というか言っている意味がよくわからない。
だがその顔には“童心”があった。
やがて、飛行船の甲板に着地する。
神羅はそっと歌を止め、ふたりを迎える。
「ようこそ、ここへ。シペ君私の歌を聴きに来てくれたの?」
シペ・トテックは、神羅のドレスをつんつんと触りながら、興味津々に彼女を見つめていた。
「ウオホホホホホホホ♪」
笑い、喜び、まるで本当の子供のように両手で胸をドラミングした。
阿烈は黙ってそれを見届けると、背を向けた。
そして通信機を取り出し母ホエルに連絡を入れていた。
母ホエルは常々家族に言っていた。
「戦場でみなしごを見つけたら連れて来ておくれ。私はその子達を立派な若者に育てたいの」
乂家の大母ホエルは度を越した子育てマニアだった。
阿烈も阿烈で度を越した人材育成マニアだった。
「……というわけで母者。**一人、守るべき子を見つけました。**連れて行って良いですか?」
「まあ本当!嬉しいわ!是非ウチに連れてきてちょうだい!」
「かしこまりもうした」
母への連絡を終え、覇王は再び、大地へと降りていく。
地上にいる弟雷音と妹雷華に、新しい家族が出来る事を知らせる為である。
雲間から見えるその姿に、神羅は微笑を捧げ、歌の続きを空へと捧げた。
♪「あなたが泣いたその分だけ、誰かの心が晴れていく――」
世界は、まだ滅びを選ばない。
拳と歌――そして奇跡が結んだ、終焉からの再生譚。




