乂阿戦記5 終章 ああ、クィン、どうして君はクィンなんだ?-16 剛力無双同士の手四つ
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
チェイテ城上空では激しい戦いが続いていた。
いや、地下で戦っていた乂阿烈とスサノオミカドが上空に飛びだしたのだ。
「八卦宵!」
スサノオの筋肉が膨張し、まるで巨人のように巨大化していく。彼の肉体は人間の限界を超え、もはや神の領域へと踏み込んでいた。
彼はその神域超筋肉を持って最強覇王の一撃を耐える。
「耐えたか。だが……」
乂阿烈の目が鋭く輝く。彼の拳から放たれる衝撃波は空間すら引き裂いている。
「今度のこの拳、受け止めてみろ!」
「おっと!痛いのはそろそろ嫌だからねえ〜打撃を封印させてもらうよ!」
二人の巨体が激突する。空間が歪み、光と闇が交錯する。
手四つ。
身長2メートル半と3メートルの巨体が空中でガップリ組み合い静止している。
二匹のヒトガタ怪獣が、お互いの筋肉を膨張させ続け、おびただしい血管が浮き上がらせ、歯を食いしばりあい、身体中を真っ赤にさせ、リキイッパイの力くらべをしていた。
「ぬううううううう!!」
「ぐいいいいいいい!!」
相手を握りつぶさんばかりに踏ん張る腕が震え合う。
鼻血がでる。
血涙が流れる。
歯を食いしばり過ぎ歯茎から血が出る。
血管が裂け身体中の至る所から血が吹き出す。
「ハッ!これでどうだ!」
阿烈が手四つの形のままスサノオを腕ごと持ち上げる。
「おおおらぁ!」
そのまま城外へ投げ飛ばそうとするが
「させるかね!」
スサノオミカドが踏ん張りをみせ体勢をおしもどす。
「ぐぬうううう!!」
「ゴギイアアア!!」
二匹の怪獣人間の四つに組んだ腕から、赤黒い血飛沫が雨のように降り注ぎ、月光を浴びて紅い光を放っていた。
この怪獣人間達を中心にチェイテ城で激しい空間地震がおきていた。
その余波で城が今まさに崩れ落ちようかと言う有様だった。
だがこの程度の地震で済でいるのは、この地域に住む人間たちにとって幸いである。
本来なら主神級クラス二体がまともに戦えば、乂阿烈vsカオスクトゥルーの時と同じ様に宇宙の存続が危うい状況に陥ってしまう。
今両雄の破壊の衝撃は、4組の勇者と魔法少女の活躍により中和されていた。
総勢8名の必死の中和作業がなければ、この辺一帯は、とっくに灰燼に帰していただろう。
東、勇魔共鳴を果たしているアーレタロスと鮫島アクアのペア
「か、漢児さん、あの2人、今どっちが優勢なんですか?」
アーレタロスが答える。
「わからねー、だか同じ手4つでも、2人がその後に狙ってんのは多分別々だ」
西、勇魔共鳴を果たしてロート・ジークフリードとフレア・スカーレットのペア
「乂阿烈は一撃必殺を信条とする剛拳ストライカー。対するスサノオミカドは相撲ベースの投げ殺しタイプ」
「相撲?相撲って競技格闘技だろ?」
義理の兄の説明にフレアが首を傾げる。
「スサノオミカドが使う相撲はテレビでみる神事の相撲とは違います。彼が使う相撲の技は今は失われた実戦用の古代相撲です。」
「アップデート完了。新戦闘プロトコルを生成――仮称:神事型・儀式格闘フォーム“SUMOU_MODE”」
北、ドアダ最強の将スパルタクスが自分と勇魔共鳴をはたしているイブ・バーストエラーにスサノオミカドの戦闘スタイルを解説する。
イブはそれを即座にデータ化し新しい戦闘プロトコルを構築した。
南、勇魔共鳴を果たしているドアダ七将軍乂羅漢と七将軍候補生ネロ・バーストエラーのペア
「スサノオミカドの神事型儀式格闘SUMOUフォームは伝承武術を応用したものだ。彼の筋力増幅能力も相まって、あの格闘技スタイルは彼の最適格のスタイルなのだろう……」
「いや、もうあれ相撲だとか格闘技だとか、そういう範疇を超えてますって!」
乂羅漢の解説をネロ・バーストエラーは呆然としながら突っ込んだ。
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**西棟地下室**
地下室の揺れは激しさを増していた。カイトーランマとロキ・ローゲ達は鏡で隠された隠し扉の前に立ち、緊張した面持ちで扉を開けようとしていた。
「この扉の向こうに何がある?」
カイトーランマが尋ねる。
ロキは冷笑しながら答えた。
「それを知るためにここに来たのだろう?」
突然、地下室の壁が崩れ落ち、埃と砂利が舞い散る中から一人の男が姿を現した。銀髪に赤い瞳、そして黒い装束に身を包んだ老人は——11人委員会第六席レコキスタだった。
「おや、思わぬ客人たちだな」
レコキスタは冷静に周囲を見渡し、カイトーランマとロキに視線を向けた。
「貴様ら一体何をしている?」
カイトーランマは警戒心を露わにしながら言った。
「11人委員会第六席様こそ、こんなところで何をしているんだ?この地下室がいまにも崩れかけているのに」
レコキスタは無表情のまま答えた。
「フン、私は単に情報を集めているだけだ。特に……」
彼はアン・クィンの棺を指差した。
「このアン・クィンが封じ続けていた六道魔人テスカトリポカの復活を成すためにな」
ロキの顔に驚きが走った。
「テスカトリポカ?あの生贄神を?」
「そう」
レコキスタは頷き、さらに続ける。
「かつて15年前のエクリプス大戦で最悪の魔女エクリプスは六道魔人を復活させかけ全宇宙を滅ぼしかけた。その魔人黒き太陽テスカトリポカがこの棺に眠っている。エクリプス大戦の三竦み、最強勇者ギルトン、戦神マルス、白阿魔王ゼロ・カリオンの3名が総力を上げ封印した究極の生贄神がここに眠っているのだ。
六道魔人は失われた魔力を回復しなければ完全な力を発揮することができない。だが封印から半身のみ復活させた状態でもその力を取り込み我がものにすることは出来る……実例があるのだ。巨人族の王アング・アルテマレーザーや九闘竜Dr.ファウストは六道魔人の力を我がものにして取り込んでいる!」
カイトーランマが鋭く言葉を挟んだ。
「それで?何をするつもりだ?」
レコキスタは口の端を吊り上げる。
「私はこのテスカトリポカの半身を解き放ち、私自身が六道魔人に進化するつもりだ。ナイトホテップやディオニトロの争いなど子供の遊びに過ぎん。真の破壊と混沌の始まりはここからだ! ぐふふ……この私がテスカトリポカと一体化すれば……世界は我が掌中に!」
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――その時、棺の奥底で“何か”が蠢いた。




