乂阿戦記5 幕間の章 ああ、亜突、貴方はどうして亜突なの?-16 亜突vsシャチ
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
「亜突……その機械神ブレイドブルーの力で世界を救って……」
クィンの声は徐々に弱くなっていった。
「クィン様!」
亜突が彼女に駆け寄ろうとしたその時、祭壇から巨大な影が現れた。
その影はクィンを包み込み黒い繭となる。
膨大な魔力が大気に満ちていき、リハリア親子に力を与えていく。
「ふははは!素晴らしい!素晴らしい力だ!」
リハリア・イーグスが歓喜の声を上げた。
「ついに……ついに我々は六道魔人の力を手に入れた!」
「何っ!?」
亜突は驚愕の表情を浮かべた。
「こ、これは!?」
ブレイドブルー(あどる)が叫ぶと、影の中から新たに黄色い巨人が現れた。
ずっと禍々しいが機械神ブレイドブルーとよく似た姿だった。
青い巨人に黄色い巨人が語りかける。
「俺だよ。シャチだよ……。お前が変身できるなら私も変身でき、お前が機械神を操れるなら私も機械神を操れる。同じと言うわけだ!私もお前と同じ改獣使いだからな!我らの計画の邪魔はさせんぞブレイドブルー(あどる)!」
「計画……?」
「そうだ。俺たちは六道魔人の力を得て世界を支配する!」
「そんなことはさせない!」
亜突は剣を構え、リハリア親子に立ち向かった。
赤の勇者ギルトンが亜突に叫ぶ。
「亜突!敵と闘う役目はオラたちに任せろ!」
ギルトンはそう言うと九体の狐悪魔をすべて倒し終え、リハリア達に向かって走り出した。
「ギルトン!」
亜突は驚いた表情を浮かべながらもギルトンに近づいた。
「おめーはクィンちゃんを助けるだ!」
ギルトンは亜突が乗る機械神の腕を掴んで、ブンブン振り回し祭壇へと投げ飛ばす。
巨大ロボットだろうと、十倍差のサイズだろうと投げ飛ばしてみせる!
青い機械神は投げ飛ばされながら叫ぶ。
「ギルトン……リハリア親子は危険な連中だ!油断するなよ!…」
「大丈夫だ。オラたちは強い。それに……」
ギルトンは祭壇を見上げながら言った。「クィンちゃんがオメーを待っている!」
ギルトンは、ナイアルラトホテップとリハリア親子に向き合った。
「さあ……行くだぞ!メティム!ヴァルシア!」
「ええ……!」
二人は同時に動き出した。
ギルトンは素早い動きでナイアルラトホテップに向かって突進し、メティムはリハリア・イーグスに向かって魔法を放った。
「ふん……。ガキどもが!……」
リハリア・イーグスはメティムの魔法を難なく防いだ。
「お姉さんをなめないでほしいわね……」
メティムは不敵に笑った。
一方、亜突は自分と真逆の黄色い巨人に騎乗するシャチと刃を交わしていた。
「ブレイドブルー(あどる)!お前はここで終わりだ!」
シャチの口から漏れる言葉は冷たく、かつての親友の姿とは似ても似つかなかった。
蒼の巨神と、黄金の巨神。
二体の機械神が祭壇を揺るがし、月夜に睨み合った。
「ハハハハ……見ろ亜突!」
黄金巨神を駆るシャチの笑声が、雷鳴のように境内を震わせる。
「俺は“選ばれし器”だ。父の力に縛られたのではない。自ら望んでこの座に至った! お前のような凡人とは違う!」
「シャチ……!」
亜突は奥歯を噛みしめ、操られている影を探すようにその瞳を見据えた。
「本当にそうなのか? お前は昔、後ろを追いかける俺を見て笑ってくれたはずだ!」
「黙れッ!」
シャチの黄金巨拳が振り下ろされ、大地を裂いた。
「友情だの理想だの……そんなものは虫けらの慰めだ!
権力こそ真実! 力こそすべて! それを掴めるのは俺だけだ!」
――ギィィィィンッ!
青と黄金の刃が交錯し、火花が夜空を裂く。
「それが……お前の選んだ答えか、シャチ!」
亜突は血を吐きながらも剣を握り直す。
「なら俺は凡人でいい! クィン様を守れる“ただの俺”で十分だ!」
「ハッ……だからお前は凡人止まりなんだよ!」
黄金の巨人が稲妻の鎖を振りかざし、亜突を縛り付ける。
「見ろ! 現実を縛るこの力こそ俺の証! さあ亜突――地に這いつくばれ!」
鎖が食い込み、蒼き巨神の装甲が軋む。
だが、その時――。
「シャチ……!」
亜突は呻き声をあげながらも、なお前を見据えた。
「お前を……取り戻す!」
その言葉に一瞬、シャチの黄金の瞳が揺らいだ。
わずかな隙を突き、蒼の刃が光を放つ――!
亜突は悲痛な表情を浮かべながらも剣を構えた。
「ふはは……面白い展開だな……」
リハリア・イーグスが笑いながら言った。
「親友同士が殺し合う……これぞ真の悪の儀式というものだ!」
「リハリア・イーグス! 貴様、自分の息子に何をした!?」
「なに、不肖の息子が父に逆らい友を殺したくないなどとふざけよるから、暗示と薬で再教育してやったまでよ」
リハリア・イーグスはニヤリと笑いながら答えた。
「貴様はそれでも親か!?」
「ほう……。亜突よ……お前も親を語るか……。だがな、親とは子を愛し育てるものではない。子を道具として利用するものだ。貴様の父、暗黒天馬のようにな!」
「黙れ!そんな歪んだ考えがシャチを、クィン様を、民を苦しめているんだ!」
亜突は剣を振りかざし、操られているシャチに立ち向かった。
「亜突……!私は……」
シャチが何か言いかけた瞬間、祭壇から強烈な光が放たれ、クィンの姿が消えてしまった。
「クィン!?」
亜突は混乱しながらも剣を構え、リハリア親子に立ち向かった。
「ふん……。お前たちには理解できまい……。この儀式の本当の意味を……」
リハリアは嘲笑うように言った。
「世界は変わりつつある……。この滅びつつある世界の現状は今の時代の力だけではもはや太刀打ちできん。新たな力が必要なのだ……。アイナクィンシステムと六道魔人の力を得て……龍麗国を打倒する! そして我らこそが新しい支配者となる!……」
――ギャリィィィィンッ!!
蒼と黄金の刃がぶつかり合い、祭壇の上空に稲妻と残光が奔る。
衝撃で石柱が砕け、山鳴りが夜を揺らした。
その光景を、漆黒の影が愉悦に浸りながら見下ろしていた。
三つの炎眼を妖しく揺らし、邪神ナイアルラトホテップは両腕を広げる。
「フフフ……いい、実にいい」
その声音は甘美な毒のように戦場に滲む。
「友が友を斬り、理想と傲慢が刃を交える……これほど楽しい舞台があるか?」
黄金の巨神が鎖を振り回し、蒼の巨神を縛り付ける。
苦悶に呻きながらも、亜突は剣を離さない。
その姿を、ナイアルラトホテップはまるで観劇の客のように眺め、歪んだ笑みを浮かべた。
「さあ、もっと足掻け。
友情を叫べ、愛を乞え、そして絶望の底に沈むがいい。
――お前たち人間の悲劇こそ、我が最高の娯楽なのだから」
彼はゆっくりと掌を返し、虚空を撫でる。
その動きに呼応するように、祭壇の鏡が鳴動し、黒い瘴気が吹き荒れた。
「踊れ、少年たち。
この舞台は私のためにある。
……終幕の鐘が鳴るまで、せいぜい楽しませてくれよ?」
嘲笑が夜空に溶け、戦場そのものが邪神の劇場と化していった――。
ギルトンはメティムと共にナイアルラトホテップと対峙した。
「おい、邪神!お前の目的は何だ?なぜクィンちゃんを狙う!?」
ナイアルラトホテップは不気味な笑みを浮かべながら答えた。
「少年……お前には理解できまい……。この世界の真実を……。しかし……」
彼は急に真剣な表情になった。
「私はただ愉しみたいだけだ。人間の不幸を……絶望を……。そして何より……ヒト種が足掻きの底から生み出す予想外の展開を!」
「ふざけるな!お前なんかに世界を好き勝手させねえだ!」
ギルトンは拳を握りしめ、ナイアルラトホテップに向かって突進した。
月夜の山間、崩れた寺の境内。
月夜に照らされる二人の武人が、対峙する。
「……気配でわかる。オメー、イヤな奴だけど、スゲーツエーなぁ。」
ギルトンは拳を握りしめ、破顔した。
「だがな――オラがぶん殴って黙らせる! 邪神だろうが関係ねぇ!」
その言葉と共に、地を蹴る衝撃が祭壇を震わせた。




