乂阿戦記5 幕間の章 ああ、亜突、貴方はどうして亜突なの?-8 世界最強魔女ラスヴェードvs十大将軍最強魔王ルドラ
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
戦場はまだ炎と血に塗れていた。
だが──二人が前に進み出た瞬間、轟いていた喧噪が嘘のように止んだ。
「……!」
兵も魔影も、互いに刃を交えていたはずの両軍の戦士たちですら動きを忘れた。
ただ一点、瓦礫の中央に立つ二人の影へと、視線が吸い寄せられていた。
炎を纏い、瞳に赤黒い光を宿した獄炎魔王・ルドラ。
そして、真紅の狙撃銃を肩に担ぎ、氷のような眼差しで睨み返す最強の魔女・ラスヴェード。
「……面白い。お前の弾丸が、この肉体を砕けるか試してみるか」
ルドラが唸るように言い放ち、全身を熱で赤々と輝かせる。大気が震え、兵の頬を焼く。
「フッ……魔王だか何だか知らないが、私の引き金一つで沈めてやる」
ラスヴェードが涼しい声で返す。銃口は決して揺れず、むしろその存在感で炎熱を押し返していた。
互いにまだ一歩も動いていない。それなのに、戦場全体が軋みを上げる。
緊張の糸が、張り詰めに張り詰め──今にも弾け飛びそうだった。
「来い、魔女!」
「望むところよ、魔王!」
二人の咆哮が重なった瞬間、大地が揺れ、戦場は再び爆発した。
──両軍最強の一騎打ちが開幕した!
炎熱を纏う巨躯。全身から黄緑の魔炎を噴き上げ、皮膚は岩のように硬化している。
──獄炎魔王ルドラ。
その眼光は、煮えたぎるマグマそのもの。視線を向けられた者は、心臓を灼かれるような錯覚に陥る。
対するは、灰色のコートを翻す一人の女。
──最強魔女ラスヴェード。
氷のような瞳は一切の揺らぎを見せず、肩に担いだ真紅の狙撃銃を軽く傾ける仕草は、酒場でグラスを弄ぶかのように冷ややかだった。
「りゃあああああああああ!!」
「クルァアアアアアアアア!!」
二人の咆哮が重なった瞬間、戦場の空気が爆ぜ、地面が軋んだ。
瓦礫が浮き上がり、石畳が砕ける。
両軍の兵は思わず目を覆う。
そして──炎と弾丸が、世界を引き裂いた。
炎と弾丸がぶつかり爆煙があがる。
やがて煙は晴れる。
次に動いたのは──ルドラだった。
「燃え尽きろぉッ!」
獄炎魔王の咆哮と同時に、緑黒の魔炎が拳に凝縮される。
振り抜かれたその閃光は、城壁を丸ごと抉り飛ばす破壊力を秘めていた。
だがラスヴェードは一歩も退かない。
狙撃銃を腰だめに構えると、指先が冷ややかに引き金を引いた。
──銃声。
紅い閃光弾が一直線に走り、ルドラの魔炎を迎え撃つ。
轟音。
今度は炎拳と弾丸が正面から衝突し、爆風が荒廃した城を更に粉砕する。
兵たちが吹き飛ばされ、空気は灼熱と硝煙で満ちた。
「小癪な……!」
ルドラは唸り、第3撃を放つ。
両腕に魔炎を纏わせ、十字に組んだ爪を叩きつける。
その一撃を、ラスヴェードは後方に跳んでかわした。
だが逃げるのではない。
すでに3発目の銃弾を放っていた。
「まだまだ……楽しませてもらうぞ!」
銃弾はルドラの肩口を掠め、炎の装甲を弾き飛ばす。
肉体は傷つかない。だが魔力の膜を削ぎ落とすには十分だった。
「フン、やるではないか!」
ルドラが地を踏み鳴らす。床石が砕け、巨体が弾丸のように突進する。
刹那、狙撃銃では間に合わない距離。
ラスヴェードは迷わず銃を背に回し、鋭い足技で応じた。
軍人仕込みの蹴りが、ルドラの顎を狙う。
「ほうっ!」
しかし魔王は顎を逸らし、逆に爪で反撃。
空気を裂く鋭爪が、彼女の頬を紙一重で掠めた。
「……やっぱり化け物ね」
ラスヴェードは冷笑を浮かべる。
爪の風圧で頬に血が滲んでも、表情ひとつ崩さない。
ルドラは楽しげに笑い、炎を更に纏う。
「そうだ……もっと本気を出せ! この俺を全力で倒しに来い!」
二人の攻防は、もはや弾丸と炎撃に留まらず、拳と蹴りが直に火花を散らす肉弾戦へと突入していった。
──神域の実力者同士。
その一撃一撃は、大地を抉り、世界を削る。
故に他の七罪の魔女達や十大将軍達は、総力を上げて二人の破壊の力を中和しなければならなくなった!
ルドラとラスヴェードの激突は、戦場そのものを呑み込んでいた。
炎と銃弾の衝突は爆発を呼び、拳と蹴りの交錯は地形を抉る。
廃墟と化した古城の床は割れ、柱は次々に崩れ落ち、瓦礫が兵士たちを押し潰す。
数百の軍勢がなお睨み合っているにもかかわらず──誰もこの二人の戦域には踏み込めなかった。
「す、すげぇ……」
七罪の兵士たちが思わず息を呑む。
「あれが……“最強同士”の戦い……」
一方、敵陣の十大将軍たちも表情を険しくしていた。
「ぬう……ルドラが女相手にここまで手こずるとはな」
金剛悪鬼ドルガが低く唸る。
「最強魔女……伊達ではないか」
「キィ〜ヒヒッ! こりゃ愉快ですなぁ!」
ザビエルが甲高い笑いをあげるも、その目は決して笑っていない。
彼の冷徹な計算すらも、この戦いは予測不能だと告げていた。
「おお……我が軍最強のルドラでも押し切れぬか!」
鉄棍聖君ウィウィヴァが静かに呟く。
彼の声音は驚愕ではなく、戦況を見極める冷徹な将軍のものだった。
ラスヴェードの体術は洗練の極みに達しており、 ルドラの爪攻撃を縫うように滑り、カウンター攻撃をしかける。
彼女の拳や蹴りには、彼女自身の強大な 魔力と、長年の修羅場で培われたシステマの戦闘術が凝縮されていた。
攻撃を受けるルドラの右手の長い爪が、彼女の一撃を受けるごとに傷つきに歪んでいく。
「面白い!」
ルドラは、左の拳から新たな長爪を伸ばし、その鋭利な爪でラスヴェードを切り裂こうとする。
しかし、ラスヴェードはそれを紙一重で回避し、カウンターの拳を叩き込む。
彼女の動きは、まるで柔術の達人のように洗練され無駄がない。
大理石の床は、二人の神域破壊力の衝突によって 見る間見る間にボロロになっていく。
地は抉られ、空には遠距離破壊魔法の残滓が尾を引く。
ラスヴェードは、時折、冷静に周囲の状況を把握する。
魔王ルドラの格闘能力 、魔力の質と量、技のパターン… etc.etc.......
極限の戦闘状況下でも彼女の頭はクールに冴え渡っていた。
そして、その分析に基づいて、わずかな隙を逃さずカウンターを繰り出す。
ルドラもまた、暗黒魔法を駆使し、受けたダメージを魔法バリアで抑えながら、 無尽蔵の魔力攻撃と爪による格闘術を織り交ぜてラスヴェードを追い詰める。
彼の実戦に基づいた叩き上げの格闘術 と苛烈な獄炎の魔力は、まさに脅威の一言だった。
激しい激闘が 、互いの力を最大限に引き出し、一歩も譲らない攻防を繰り広げる。
戦闘は激しさを増す。
ルドラの炎撃が奔流となり、空を赤黒く染める。
ラスヴェードは銃火を連射しながら、間合いに入れば鋭い肘打ちと回し蹴りで応戦する。
互角。
一進一退。
見る者の脳裏に浮かぶのはただ一つ──「この一騎打ち世界が裂ける」という予感だった。
「……ルキユ」
セイ・ズーイが小声で副官に囁く。
「やっぱり出し惜しみは無理だな。想像以上にルドラは強い。ウチの最強でも互角……このままじゃ押し切れねぇ」
ルキユは一瞬逡巡するも、目を細めて頷いた。
「……あれを使うのね」
「そうだ。エクリプスの力を……」
ルキユは一瞬難色の表情を浮かべたが、静かに目をつぶり、わかったと答える。
「「我ら悪魔の契約の元に集い、呪われし力発動せん!我らは我が憎悪の半身となりていざもろともに蹂躙せん!悪魔共……」」
セイとルキユが最悪の魔女の力を発動しようとしたその時である。
二人が秘術を発動せんとした刹那──
──空気が変わった。
「……?」
全員が同時に天を仰ぐ。
厚い雲を裂き、巨大な影が夜空を覆っていた。
「な、なんだありゃ……!」
兵士たちの声が震える。
光が差した。
強烈な光柱が空から地上へと突き刺さり、戦場を真昼のように照らし出す。
目を眩ませた隙に、重厚な金属の影が降下してくる。
──空中要塞バエルスター。
覇星の使徒が誇る切り札が、ついに姿を現したのだ。
戦場が凍りついた。
七罪の兵も、魔影も、十大将軍すらも。
その威容の前では、誰一人として軽口すら叩けなかった。
光柱が収束したとき、戦場の空気は一変していた。
空中要塞バエルスターの艦底ハッチがゆっくりと開き、重々しい足音がこだました。
そこから現れたのは、一人の男──否、その存在自体が帝国の象徴であった。
「……!?」
七罪の魔女も、十大将軍も、そして兵すらも息を呑む。
白銀の法衣に身を包み、黒髪の長い髪を背に垂らす。初老の面差しに刻まれた皺は深いが、その瞳だけは老いを知らぬ鋭さを放つ。
冷酷な理知と圧倒的な支配者の自信──ただ立つだけで空間を支配する覇者の風格。
「……ゴーム・ソウル様!」
ドルガが膝を折り、額を地に伏せる。
「大王様……!」
ルドラもまた、父にならい深く頭を垂れた。
将軍たちが一斉に跪く。兵たちも次々に剣を下げ、誰一人として頭を上げられない。視線を交わしただけで膝が折れる──その威圧こそが王の証だった。
「双方……そこまでだ」
怒鳴るわけではない。ただ低く、落ち着いた声音。
だがそれだけで、戦場の喧騒は掻き消えた。
誰も逆らえない。声を発することすら許されぬ覇気が、空気を押し潰す。
セイ・ズーイが唇を噛み、僅かに汗を滲ませる。
「あんたまで……女神国最後の王、ゴーム王……!」
ゴーム・ソウルはゆるやかに手を掲げた。
瞬間、空中に巨大な魔法陣が展開し、光が走る。
映し出されたのは豪奢な玉座の間──龍麗城であった。
「七罪の魔女たちよ」
ゴーム・ソウルの声が再び響く。
怒りも憎悪もない。ただ決して抗えぬ強者の冷徹な意志。
そして映像が揺らぐ直前、王は静かに告げた。
「これは歴史の転換点だ」




