乂阿戦記5 第六章 剛弓覇龍の娘 葵遍と葵寧々子-19 六道魔人
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
阿烈の姿を見て高らかに笑うスサノオミカド。
しかし次の瞬間、その笑みは凍りついた。
突如、闇を裂いて飛来した銃弾が炸裂する。
アーレスタロス、レッドキクロプス、そしてスサノオミカドの間に火花が散った。
「何だ……!?」
誰も撃った姿を目にしていない。
代わりに、漢児とレッドの足元の大地が揺れ、一つの影がゆっくりと浮かび上がる。
影は人の形をとり、やがて輪郭が明らかになると──スサノオの顔に驚愕が走った。
「……これは驚いた。このチェイテ城の“真の城主”がお出ましか。」
そこに現れたのは、白衣のような装束に身を包んだ金髪赤眼の少女。
赤い瞳が炎のように妖しく輝く。
少女は不敵に微笑み、声を響かせた。
「久しぶりね──冥獄巨人、スサノオミカド♪」
アイナクィン統括者・クィンクィーン。
数名の部下を従え、堂々と姿を現した。
スサノオが鼻を鳴らす。
「ふん、久しいな。今世はその体に降臨しているのか?……お前が来たということは、やはり“あの連中”の復活が近いのだろうな。」
その言葉に、ロート・ジークフリードが眉をひそめる。
「“あの連中”だと……? 一体何が復活するというのだ?」
クィンは肩をすくめ、紅い唇に妖艶な笑みを浮かべる。
「六道魔人よ。──あなたが知らないなんて意外ね、ロート。ファウスト博士から何も聞かされていないの?」
「なっ……! 今、お前……亜父の名を口にしたか!?」
ロートが息を呑む。驚愕の表情に、クィンは愉快そうに唇を弧にした。
「ふふ、やっぱり知らされてなかったのね。じゃあ特別に教えてあげるわ。
時空大鍵の復活が近づくとき、必ず〈歪み〉が生じる。──妖魔界、天界、修羅界スラル、地球、邪神界、そして翠の魔界。この六つの世界から生まれる“怪物”たちのことを、私たちは六道魔人と呼んでいるの。」
「六道……魔人……」
アーレスタロスが思わず呟く。重苦しい響きに、その場の空気が揺れる。
クィンは舞台女優のように片手を翻した。
「仏教でいう六界と同じ対応関係よ。翠の魔界は地獄界、黒の宇宙・地球は人間界、灰色のスラルは修羅界。黄金宇宙のオリンポスは天界、九重に分かれた紫の妖魔宇宙は畜生界、黄緑の邪神宇宙は餓鬼界に相当するわ。」
そこでわざと間を置き、唇を近づけるように囁く。
「その歪みから生まれる六体の魔人は、世界を滅ぼすために存在する……。しかもね、その中の一人があなたの亜父──ファウスト博士。」
「……馬鹿なっ!」
ロートが叫ぶ。怒りと動揺が入り混じった声が石壁に反響する。
クィンはそれを楽しむように紅の瞳を細めた。
「信じたくないなら信じなくてもいいわ。でも事実よ。黄金宇宙出身のケイオステュポーンも六道魔人のひとりだった。ただし二人とも今は輪廻を経て存在が揺らいでるから、純粋なカテゴリからは外れてるけどね。」
彼女の口元から漏れた笑みは冷ややかで、しかしどこか艶を帯びていた。
「残りの四体? 巨竜王や博士に匹敵する化け物ばかり。ああ、ちなみに一人は──11人委員会の第十一席に座っているわ。」
「……っ!」
その言葉に場の全員が凍りつく。
クィンはため息を吐き、くすりと笑った。
「世界を滅ぼす魔人が、陰から世界を支配する委員会の一員……笑えない話でしょう?」
クィンはため息を吐きながらも、瞳は楽しげに輝いていた。
スサノオが腕を組み、問いを投げる。
「……で、その第十一席ナイ神父殿から城主エリザベートに指令が下った、というわけか。龍麗国との戦争に備え兵を集めろ。時空大鍵を復活させろ……そうだろう?」
「ご名答♪ でも私はパス。だって私たちアイナクィンは“崩壊を防ぐ”ための管理者だもの。時空大鍵の完成なんて冗談じゃないわ。」
スサノオの目を真っ直ぐに射抜き、挑発的に微笑む。
「今この場で争っても、得られるものなんてない。委員会はもう十二の銀の鍵を集めようとしている。最後の水色の鍵が揃えば……六道魔人の復活は止められない。──ねぇスサノオ、今は無駄に戦っている場合じゃないでしょう?」
「……断ると言ったら?」
スサノオは即答した。
クィンはわざと深くため息を吐き、肩をすくめる。
「焦らすわね。でもいいわ。あなたの本心が“世界の崩壊”ではないことくらいわかってるから。今は声掛けだけにしておく。」
彼女の瞳が一瞬だけ冷たく光る。
「けれど──もし本気で委員会の犬になり、大鍵を復活させようとするなら……その時は容赦しないわ。」
一触即発の気配が走ったが、スサノオはすぐに肩を落とし、戦意を解いた。
「……ふふ、冗談が過ぎたな。これ以上はやめておこう。事態は上司クロウ・アシュタロスに伝える。彼は大鍵を復活させないために鍵を集めている。勘違いして攻撃するなよ、クィン。」
「ええ、わかってるわ。」
クィンは小さく頷き、赤い瞳を細める。
「それじゃあ私は蛇王ナイトホテップに会いに行く。彼は水色の銀の鍵を持ち、自ら囮となって他の十一本を引き寄せようとしている。あの人、強いのよね……できれば話し合いで済ませたいところだけど。」
溜息をつき、ひらりと裾を翻す。
次の瞬間、クィンクィーンの姿は影とともに掻き消えた。
残されたアーレスタロス、ロート・ジークフリード、スサノオミカドは、互いに視線を交わすと黙ってその場を後にした。
──こうして現在の時間軸は幕を閉じ、物語は過去へと遡る。
次に語られるのは、クィンクィーンと亜突の出会い。
今代の魔法少女統括者と、血塗られた宿命を背負った青年の物語が、今始まろうとしていた。




