乂阿戦記5 第六章 剛弓覇龍の娘 葵遍と葵寧々子-15 HEROアーレスタロスvs妖魔将軍リハリア
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
「あとは俺に任せな…」
そう言いながらその男、狗鬼漢児は静かに戦闘態勢をとった。
「まあいいや、邪魔をするなら排除するね」
カマキリのアイナクィンが両腕を振りかぶる。
漢児が身構える。
そして、お決まりの口上を述べる。
「無茶無理無謀と言われようと意地を通すが漢道!!無茶でも壁があったら殴って壊す!無謀でも道がなければこの手で切り開く!無理をとおして道理を蹴っ飛ばす!無茶無理無謀、そんなものは殴って壊せと俺の拳が唸るのさ!それがこのオレよ!不撓不屈のHEROアーレスタロスの生き様よ!!いくぜ、変!神!!!」
蒼い閃光に包まれ、男がアーレスタロスに変身する!
変身が終わるや彼の姿は、その場から掻き消える。
いや、正確には消えたのではない。
目にも止まらぬ速さで駆け抜けたのだ。
一瞬でカマキリのアイナクィンの前に現れたかと思うと、拳を突き出す。
次の瞬間――轟音と閃光が爆ぜ、中庭全体が揺さぶられた。
「え……?」
胸から下の部分を失ったアイナクィンが呆けた声を出す。
砕けた石壁がドミノのように崩れ落ち、砂煙が夜空に舞い上がる。
だが、それも束の間。
「超流星アーレスキィィック!!」
飛び蹴りを放つアーレスタロスが蒼い残光を残し、上半身を粉砕した。
閃光が夜空を裂き、残骸は光となって霧散する。
蒼きヒーローが静かに地面に降り立つと、石畳に焦げ跡が刻まれていた。
戦場の余韻を前に、ただ風だけがざわめきを運んでいた。
そこに駆け寄って来た神羅が驚愕しながら言う。
「漢児さん!? それに絵里洲ちゃんまで……どうしてこんなところに!」
駆け寄った神羅が驚愕の声をあげる。だが漢児は、ニヤリと笑うだけだった。
その時――地面が激しく揺れる。
ズシン! ドスーン!! 地響きが鳴り響き、瓦礫が跳ね上がる。
紫蛇を押さえつけていた黄色い骸骨を中心に、周囲の魔力と砕けたアイナクィンの死骸が渦を巻き、吸い寄せられていった。
黄の巨人が咆哮し、瓦礫と魔力を喰らいながら姿を変えていく。
やがて現れたのは、三メートルを超える巨体。
胸の中央には怪しく輝く一つ目。
その目は血走り、覇王の如き威圧を撒き散らしていた。
「フン……所詮は数打ちのアイナクィンの端末体。貴様ら下等な駒どもなど捨て石よ」
低く、重々しい声が響く。
「だが、肉体を得る契機を作ったことだけは褒めてやろう……!」
その巨人は、豪然と胸を張り、名を高らかに告げた。
「我が名はリハリア=イーグス! 妖魔帝国にその覇を轟かせし大将軍なり!」
地鳴りのような名乗りに、神羅と鵺は思わず後退る。
しかしアーレスタロスは仁王立ちのまま、不敵に笑った。
「大将軍だぁ? 名前も肩書きもでけぇがよ……残念だったな!」
アーレスタロスは拳を打ち鳴らし、青い閃光を纏う。
「俺はそんなもんにビビるヒーローじゃねぇ! デカかろうが強かろうが、ぶち抜いて前に進むのが俺のやり方だ!」
その瞬間、リハリアの巨体が影を裂き、突進してくる。
「ガーハッハッハ! 面白い! 小僧、その意地、試してやろう!」
拳と拳が激突した刹那、雷鳴のような衝撃波が中庭を揺さぶった。
「その程度かよ!」
豪快に笑い、アーレスタロスは膝蹴りを叩き込んだ。巨体が弾かれ、石畳を砕きながら転がっていく。
さらに左腕を振り上げ、掌底を打ち下ろす。瞬間、空気が炸裂し、蒼白の閃光が戦場を覆い尽くした。
残ったのは立ちこめる白煙だけ。
神羅と鵺は声を失い、ただ息を呑む。
やがて煙の帳を切り裂いて現れたアーレスタロスは、不敵に笑んで言い放った。
「デカい図体のわりに……やけに素早いなおっさん」
その直後、背後から低い声が響く。
「フン、貴様こそ小兵のくせに大した攻撃力だ。防御をしていなければ、確かに危なかった」
振り返ると――巨人がいつの間にか背後に立っていた。
「それにしても小僧……気配を消して背に立ったというのに、なぜ気づいた?」
「簡単なことだ。アンタは“気配を消したつもり”なんだろうが……強ぇ奴と戦いてぇって欲がダダ漏れなんだよ!」
アーレスタロスは口の端を上げて嗤う。
「アンタ、俺にワクワクしてんだろ?」
「ガーハッハッハ! この時代にも“武士”がいたか! 我が名は――妖魔帝国にその覇を轟かせし大将軍、リハリア=イーグス! 小僧、名を名乗れ!」
「名乗る時は全力でだ!」
アーレスタロスは拳を突き上げ、夜空へ叫ぶ。
「俺の名はアーレスタロス! ――蒼きHERO、アーレスタロスだ!!」
「アーレスタロス……ふ、貴様が今代の蒼の勇者か。屈指の猛者・狗鬼マルスに比べ、どれほどの力を持つか見せてもらおう!」
リハリアの咆哮が轟き、巨体が黒い残光を引きながら突進する。
大地は割れ、瓦礫が宙を舞った。
「上等だ、派手にやろうぜ!」
アーレスタロスも真っ向から飛び出す。
轟音――!
拳と拳が激突し、稲妻のような閃光が夜空を裂く。
空気が震え、衝撃波が波紋のように広がっていく。遠く離れた神羅と鵺にも風圧が叩きつけられ、思わず腕で顔を庇った。
「おおおぉぉ!!」
「ぬぅぅん!!」
押し合う両雄。
だが次の瞬間、リハリアの動きが止まる。
巨体を絡め取る黒い鎖――紫蛇の術だ。
「やれやれ……先に死にたいか、紫蛇?」
嘲笑と共に筋肉が膨れ、鎖はブチブチと裂けていく。
「馬鹿め! アイナクィン最強の聖刃ならまだしも、貴様の術で妖魔将軍を縛れるものか!」
リハリアの掌から、漆黒の気弾が放たれた。
轟音と爆光が走る。紫蛇は直撃を避けたが、余波に呑まれ吹き飛ばされる。糸の切れた人形のように地面へ崩れ落ちた。
「紫蛇っ!」
神羅が叫ぶ。その声をかき消すように、アーレスタロスの怒声が轟いた。
「おい神羅! 鵺ちゃん! 紫髪の姉ちゃんを連れて退け! ここは俺が引き受ける!」
「は、はい!」
神羅と鵺、アオネコは紫蛇を抱え、戦場を離脱する。
残されたのは、二人。
「さて……二人きりだな」
アーレスタロスが構えを取る。
リハリアは二振りの黒曜剣を顕現し、舞うような連撃を浴びせる。
ギィィン! ガキィン!
甲高い金属音が連続し、火花が散る。
漆黒の斬撃が矢のように飛ぶが、アーレスタロスは最小限の動きで受け流す。
火花が装甲を走り、剣圧が地面を削り取った。
「くっ……さすがに重てぇな!」
それでも一歩も退かず、隙を狙って拳を打ち込む。
拳と剣が交差するたび、戦場は閃光に包まれ、瓦礫が爆ぜ飛ぶ。
それはまるで、鋼鉄の勇者と暗黒将軍が激突するメタルショーのクライマックスだった。
「まだまだぁっ!!」
蒼光を纏い、アーレスタロスが拳を振り抜く。
リハリアは黒曜剣でそれを受け止め、衝撃波がさらに戦場を荒れ狂わせる。
――その時だった。
空間が歪み、夜空が裂ける。
眩い亀裂が広がり、異様な気配が溢れ出す。
「なんだ!? 新手か!」
「ぬぅう……この気配……あの霊獣か……!」
アーレスタロスが目を凝らす。
裂け目の奥から現れたのは、金属質の外殻に覆われた異形。
異常に長い四肢、背を反らすたびに軋む関節が耳障りな音を立てる。
「……こいつはまた、厄介そうだな」
蒼のヒーローの眼が鋭く光り、次なる嵐の到来を告げていた。




