乂阿戦記5 第六章 剛弓覇龍の娘 葵遍と葵寧々子-13 戦闘型12月天使 紫蛇<シダ>
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
一方その頃、クレオラの策略によって紫蛇と戦うことになってしまった神羅と鵺はピンチに陥っていた。
アオネコは真っ先に石に変えられ身動きが取れない状態にある。
朝焼けに染まるチェイテ城。
かつては人々で賑わっていたであろう吸血女王の居城は、今や静寂と破壊の痕跡だけが残る。
城のエントランスで三つの影が対峙する。
その影のうちの2つ神羅と鵺は完全に身動きが取れなくなっていた。
紫蛇の石化のトラップにはまってしまったからだ。
最初神羅達は紫蛇の魔眼から放たれる石化光線に注意を払っていた。
だが、それこそが紫蛇の作戦だった。
彼女は石化ガスを放つ自身の直属のバジリスクを召喚し物陰に待機させていたのだ。
バジリスクは蛇と鶏と合わせたかのようなフォルムのモンスターで石化の能力を持つ厄介な怪物である。
紫蛇に注意が向いていた神羅達はこっそりと巻かれていたバジリスクの石化ガスに気付けず足を石に変えられ、動けなくなっていた。
「ユキル様、ユエ様・・・まさか、こんな形で再会することになるとは遺憾でございます。」
蛇の如き冷たい眼差しを向けるのは紫蛇。
その視線の先には、体を半分だけ石化させ、苦悶の表情を浮かべる神羅と今宵鵺の姿があった。
「・・・くっ、紫蛇さん・・・!」
今宵鵺は、かろうじて動く左腕で盾を構え、紫蛇の攻撃に備える。
時間魔法で、時間を巻き戻し石化前の状態に戻そうとするが、当然それを相手が許すわけがない。
石化状態の回復をさせないように紫蛇は絶えず攻撃を仕掛け続ける。
紫蛇の主武器は鎖鎌だ。
高度に洗練された鎖鎌術の技量を持つ。
鎖のついた分銅をぶんぶんと振り回し、一定に離れた距離から絶えず攻撃を仕掛け、神羅達に回復魔法を使う隙を与えない。
紫蛇の猛攻を前に、鵺の体力は既に限界に近く、神羅を庇うのが精一杯だった。
「・・・鵺ちゃん・・・ごめんね・・・」
神羅は、涙目で鵺を見つめ自身の無力さを嘆く。
その時、紫蛇が自嘲気味にフッと笑った。
「皮肉な話ですね。よりにもよってこの私が、15年前クィン様と亜突様の恋を応援してくださった恩人に刃を向けるだなんて……ですがクィン様の銀の鍵の使用をお止めするわけにはいきません……此度の事変はアイナクィン統括者に成り果てたあの方が、人間に戻れる最後のチャンスかもしれないから……」
紫蛇のセリフに鵺が眉をひそめる。
「紫蛇さん?一体何を言っているの?クィンが銀の鍵を使うのと、彼女が人間に戻ることが一体どういう風に関係するというの?」
紫蛇がクスと笑う。
「ああ、ユエ様はクィン様に殺されたアンドラスさんの素顔をまだ見てなかったのですね。暗殺魔王アンドラスの正体を知れば全てに合点がいくはずです……」
鵺はますます混乱する。
「紫蛇?あなた一体何を言ってるの?」
「ぬ、鵺ちゃん、あの紫蛇って人と知り合いなの?知り合いなら何とか話し合いで解決できたりしないかな?」
神羅が紫蛇の鎖鎌の猛攻を防ぎながら泣き言を言う。
「申し訳ございませんユキル様。我が主の願いを叶えるために、私も今回ばかりは手抜きはできません。お命は頂戴しませんが、主の邪魔にならないようお二人を無力化させていただきます。とは言え、痛い思いはさせたくないので大人しく石像になっていただけないでしょうか? クィン様の目的が達成されたら、アオネコも含め、元にお戻ししますゆえ……」
「そんなこと言われて『はい、おとなしく石像になります!』とか言うわけないでしょ!」
「…まあ…それはそうですよね…」
紫蛇は溜息をつき、鎌を持ったほうの手を構え、神羅達に向かって突進する。
鵺は、必死に盾で攻撃を受け止めようとするが、紫蛇の力は想像を遥かに超えていた。
「バジリコ〜〜ック!!」
彼女は切り札として潜ませていた自分の直属バジリスクを呼び寄せる。
普通のバジリスクより2回りほど大きく、放っている魔力が桁違いに高い。
神獣級と言っても差し支えない強力なモンスターだ。
何と彼女はバジリコックの背に跨り、騎兵のように攻撃を仕掛けた。
キョオオオオ!!
バジリコックの尾撃が鵺を襲う。
「・・・っ!」
盾ごと吹き飛ばされた鵺は、瓦礫の山に叩きつけられ、意識を失いかける。
その時、神羅が叫んだ。
「鵺ちゃん!」
神羅は、自身の身を顧みず、紫蛇に向かって駆け出す。
その手には、震える弓が握られていた。
「・・・私が、鵺ちゃんを守る・・・!」
神羅は、渾身の力を込めて弓を放つ。
しかし、その矢は紫蛇に届くことなく、虚しく空を切った。
バジリコックの羽の羽ばたきで矢が押し返されたのだ。
「無駄ですユキル様! 今の貴方の力では私を倒すことはおろか、バジリコックを怯ませることすらできません!」
紫蛇は感情を押し殺し神羅に迫り、鎖鎌の鎌を振り上げる。
その時、時が止まった。
鵺の時間魔法による反撃だ。
「・・・まだ、終わらせない・・・!」
鵺の時間停止魔法が発動すると、戦場全体が一瞬で静止した。
バジリコックの巨体は紫蛇の右斜め後方、神羅は正面五メートルの位置にいる。
鵺は左側面から盾を構え、神羅との間を風のように駆け抜けた。
そのわずかな距離が、決定打を生む隙となる。
その代償として、鵺の体の石化は更に進行する。
「・・・ユキルを、みんなを、守る・・・!」
今宵鵺は再び盾を構え、バジリコックの攻撃を防ぐ。
そして、隙を見て、背中に隠し持っていた無数の武器を召喚した。
「・・・今度こそ・・・!」
鵺は、ありったけの手榴弾を紫蛇に放つ。
紫蛇はその猛攻にわずかに怯むが、すぐに体勢を立て直し反撃に出る。
今宵鵺の頑張りが女神の奇跡を呼び起こす。
「・・・諦めない・・・!」
神羅は、再び弓を構え、震える手で矢を放つ。
その時、神羅の体が光に包まれた。
「・・・鵺ちゃんの願いを、希望を、私に・・・!」
神羅の祈りに呼応するように、回り中の魔力が集まり神羅の弓に宿る。
それは絶望を打ち砕く希望の光。
「・・・これこそが、私の・・・!」
神羅は、光り輝く矢を放とうとする。
「甘い!」
だがなんと!紫蛇が放った鎖分銅は神羅の弓矢に絡みつき、神羅はまんまと武器を絡み取られてしまった!
武器を封じられた神羅に鎌を構えた紫蛇が迫る!
そこへ、神羅は臆せず前へ出た。
そして、手に持った武器を投げ捨てる。
いや、神器ユグドシラルを一時的に自爆させるため手放した。
「・・・えいっ!」
「!?」
神弓ユグドシラルが爆発し、それに巻き込まれるように紫蛇の鎖鎌も爆発した。
お互い無手になる神羅と紫蛇
そして、神羅はそのまま紫蛇に抱き着いた!
片足にタックルをかけ紫蛇を押し倒したのだ。
「…なっ!?」
神羅のタックルが紫蛇の片足を刈り取った瞬間、
紫蛇の瞳がわずかに見開かれた――それは驚きか、羞恥か。
冷静沈着な女が、戦場で初めて表情を乱した一瞬だった。
そう、魔法少女らしいキラキラした戦い方にこだわる神羅だが、彼女は実父である楚項烈から武術を仕込まれていた。
それも実践的な殺人拳…否、殺神拳大武神流の数々の格闘スキルを!
紫蛇は狼狽するが、もう遅い。
紫蛇は組み敷かれたまま動けない。
見事なポジショニング取りと体重コントロールだ。
「ば、バジリコック!」
紫蛇は召喚獣の助けを呼ぶがバジリコックは鵺の時間停止魔法により見動きがとれない。
動けなくなった魔獣に鵺はトドメとばかりに至近距離からの銃弾を撃ち込もうと銃口を向けている。
そして紫蛇の上には拳にありったけの魔法力を込めた神羅が乗っかって、今まさに拳そこを金槌のように叩き落とそうとしていた。
聖刃から拳底の金槌落としは手を使った攻撃の中でもっとも強力な威力を誇ると聞いたことがある。
紫蛇は青ざめた顔で降参のポーズを取った。
「ま、参りました……石化魔法を解きます。武装解除や魔法封印、拘束無力化も受け入れます。敗北を受け入れて下さい」
「・・・ふぅ・・・」
今宵鵺は勝利した神羅の姿を見て安堵の息をこぼす。
崩れ落ちるように座り込む神羅の肩に、東の空から朝日が差し込んだ。
長い夜が、ようやく終わったのだ。
「ま、参りました……石化魔法を解きます。武装解除や魔法封印、拘束無力化も受け入れます。敗北を受け入れて下さい」
「・・・ふぅ・・・」
今宵鵺は勝利した神羅の姿を見て安堵の息をこぼす。
やっと終わった、これで終わった。




