乂阿戦記5 第六章 剛弓覇龍の娘 葵遍と葵寧々子-6 イホウンデーの助太刀
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
その表情はとても可愛らしく見えたものの、どこか狂気を感じさせるものだった。
明らかにいつもの神羅よりパワーアップしている。
一体どうして?
強力な自己再生能力とタフネスを持つはずのスラッグラーとテンタクルルーが謎のPower Upを果たした神羅に一方的にボコられたすえ、完全に沈黙していた。
疑問を抱いた鵺であったが、その理由はすぐにわかった。
「にょほほー、あちきの身体強化魔法凄いでしょ?これならどんな敵でもイチコロなんだから!」
そう言って神羅の後ろからひょっこり顔を表したのは十二月天使が一人、イホウンデーであった。
「アオネコちゃーん、無事だったー?なんかスラッグラー達がアオネコちゃんに悪さしようとしてたから、通りがかりのピンク色の魔法少女さんに協力お願いしたよ〜ん♪」
そう言いながらウィンクをするイホウンデー。
その隣では神羅が自慢げに胸を張っていた。
「ありがとうございますです。助かりましたです」
アオネコが礼を言うと二人は照れ臭そうに笑った。
それからしばらくして、鵺がふと気になった事があったので二人に尋ねてみた。
「貴方達二人一体どういう経緯で一緒にいるの?なぜかえらく意気投合してるみたいだけど…それに、さっきの会話の内容から察するにもしかして最初から私を尾行してたとか?」
その問いに答えたのは神羅の方だった。
「そうだよ♪ だって私たちも鵺ちゃんのことが気になって仕方ないんだもん。いつも一緒に居るはずなのに、肝心なところは教えてくれないんだもの」
神羅は腰をかがめ、子供のような瞳で覗き込みながら距離を詰める。その足音が妙に早く、鵺は一歩下がるしかなかった。
「だから今日こそは洗いざらい全部吐いてもらうからね!」
困ったように視線を泳がせる鵺。十五年前の出来事をどう話すべきか、胸の奥で答えはまだ形になっていなかった。
「う〜ん、まぁいっか、とりあえずここを離れましょうよ。こんな所にいたらまた何が起こるか分からないですし……」
神羅の提案に従い、鵺とアオネコが歩き出そうとしたその瞬間――
「ちょっと待つにょーん!」
イホウンデーが両手を大きく広げ、ぴょんと前に飛び出して通せんぼした。袖の奥から鹿せんべいを取り出し、ためらいなく封を破る。
ボリボリ、ボリボリ……咀嚼音が夜気に響く。
「ねぇ、イホウンデーさんって言ったかしら?」
神羅は眉をひそめ、声を潜めた。「あなたの目的は一体何なの? さっき言っていたわよね、私に興味があってついてきたって……」
イホウンデーは頷きすぎて髪飾りがカタカタ揺れる。
「そうだにゅーん、その通りなのだにゃーん。あちきは昔から見てきたんだけど、前世じゃ鵺ちゃんもユキルちゃんも、なんでも一人で抱え込んで仲間に頼らなかった。あれ、もう見ててムズムズしてさ〜」
おどけた口調のまま、ふっと目元を細める。「でも今世のユキルちゃんは違うね。すっごく素直だし、楽しそうだもん。あちき、びっくりしたよ。でも、嬉しいんだ」
「ほえ? 前世?」と首を傾げる神羅をよそに、イホウンデーは話を進めた。
「それよりさ、鵺ちゃんたちはこれからどうするのかな? もしよかったら、あちきらと一緒に来ないかにゃーん?」
アオネコは少し唇を噛んでから、一歩前へ出た。
「……私としては皆さんと一緒に行動したいです。でも、一つだけ条件があります。紅紅花ちゃんをここから連れ出して、私の家で一緒に暮らしたいんです!」
頭を深く下げるその姿に、神羅は思わず笑みを漏らす。
「ふふ、良いわよ。元々そのつもりだったしね。……それじゃ、よろしくねアオネコちゃん。それからイホウンデーちゃん、あなたは?」
「あちきは別にどっちでも〜。鵺ちゃんについていくだけだしぃーん」
「じゃあ決まりね。それじゃ行きましょうか」
四人が並んで歩き出す――
その背後で、夜気がざわめいた。低く唸るような音とともに、月明かりを遮る巨大な影がゆらりと揺れる。




