乂阿戦記5 第六章 剛弓覇龍の娘 葵遍と葵寧々子-5 神羅セクハラ悪魔をボコる。
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
とりあえずこうしてテンタクルルーは戦闘不能になっていた。
その様子を見ていたアオネコは思わず呆然としてしまった。
目の前で起こった出来事がまだ信じられないといった様子だ。
そんなアオネコの様子を見た今宵鵺はクスリと笑うと手を差し伸べながら言った。
「怪我はないかしら?この前助けてもらった礼は返したわよ」
「え?いや、別にいいですよあれくらい。それにボクは当然のことをしただけですし。むしろこちらこそありがとうございますです!」
そう言って頭を下げるアオネコ。
そんな彼女に向かってにっこりと微笑むと、鵺は優しく語りかけるように言った。
「あら、謙虚なのね。そういうところ嫌いじゃないわよ」
「そうですか……。それより鵺さん、どうしてこんなところに戻ってきたんですか?」
アオネコの質問に一瞬考え込むような仕草を見せたもののすぐに笑顔に戻る鵺。
そしてゆっくりと口を開いた。
「うーん、簡単に言えば偵察みたいなものかな?ほら、一応クィンの動向を色々と調べないといけないじゃない?だからちょっと様子を見に行ったんだけどまさかあんな場面に出くわしちゃうとは思わなかったわ」
そう言って肩をすくめる鵺であったが、その表情からはどこか余裕のようなものが感じられた。
アオネコはその姿を見て少しだけホッとしたような気がした。
どうやらやはり今宵鵺は悪い人ではないみたいだ。
そう思った瞬間だった。
背筋を針で突かれたような鋭い殺気が、空気を一瞬で凍らせた。アオネコは条件反射で飛び退き、振り返る。
灰色の霧の向こうに、いつの間にか立っていた“異物”がぬらりと姿を現した。
しかもそいつはナメクジ怪人のような姿をしていた。
全身が青緑色の光沢の皮膚に覆われており、まるで凶悪なウーパールーパーを思わせるような顔付きをしていた。
それはまさに異形と呼ぶに相応しい存在だった。
その異形を視界に収めた瞬間、胃の奥を冷たい手で鷲掴みにされたような感覚が走り、心臓が跳ねた。
思わず身震いしてしまうほどだ。
そんなアオネコの様子を気にすることなく怪人はゆっくりと鵺に近づいてきた。
「おう、このクソアマ〜!俺の兄弟分に何さらしてくれとんじゃい!」
鵺はすぐに身構えるがその相手、スラッグラーの動きの方が早かった。
一瞬で距離を詰められてしまい、そのまま押し倒されてしまった。
馬乗りになった状態で両手を押さえつけられ身動きが取れなくなってしまう。
必死に抵抗するもののビクともしない。
それどころか徐々に力が強くなっていき骨が軋む音が聞こえてきた。
「ブヘヘへ!まずは溶解粘液で服を溶かし、その後麻薬粘液を擦り付けて天国を見せてやるよ〜!その後は俺様による全身陵辱コースだ!覚悟しな!」
そう言いながら不気味な笑みを浮かべる怪人だったが次の瞬間、彼の顔面が大きく歪んだかと思うと爆発したかのように弾け飛んだのだ。
突然のことに驚くアオネコだったが、すぐに状況を理解した。
そう、彼女は既に次の行動に移っていたのだ。
その証拠に先程まで怪人がいた場所に立っていた。
その手には拳銃型の武器があった。
どうやらそれで怪人を撃ったらしい。
時間魔法を応用して、ナメクジ男が襲いかかってくる前に、あらかじめ銃を打っていたのだ。
スラッグラーが鵺を抑えつけたときに、違う時間の自分が現れ、スラッグラーを撃ったわけである。
アオネコはほっと胸を撫で下ろすと改めて彼女に向き直る。
見ると彼女の顔色は真っ青になっており明らかに様子がおかしかった。
額からは大量の汗が流れ落ちているし呼吸もかなり乱れているように見える。
どうやら、スラッグラーの麻薬粘液を少量ながら浴びてしまったらしい。
「このアマ〜!よくもやってくれたなぁ!」
振り向くとそこには先程倒したはずのテンタクルルーの姿があった。
しかも彼はなぜか全裸姿で身体中傷だらけであった。
いや、人間の姿から悪魔の姿に戻り服が破けてしまったのだろう。
テンタクルルーはそのままこちらに向かって突進してくる。
鵺とアオネコは咄嵯に身を翻すと、相手の攻撃を躱すことに成功した。
しかし、完全に避けきることは出来ず脇腹を少し切り裂かれてしまった。
痛みに耐えつつなんとか距離を取ろうとするが、テンタクルルーはそれを許さなかった。
今度は尻尾を伸ばして攻撃を仕掛けてきたのだ。
鵺は咄嗟に回避しようとしたが間に合わず捕まってしまった。
そのまま締め上げられてしまう。
「ぐうっ……!」
苦痛の声を漏らす鵺だったが、その直後異変が起きた。
皮膚の奥で熱が暴れだし、全身を内側から焦がしていく。
血の流れが早鐘のように耳の奥で鳴り、視界の端が赤黒く滲む。
鼻を突く甘ったるい薬品臭が肺を焼き、指先から力が抜けていった。
原因は明らかだった――さっき浴びたスラッグラーの麻薬粘液だ。
幻覚作用を持つ成分が血に溶け、神経を狂わせているのが自分でもわかる。
意識が遠のく前に抜け出さなければと焦るが、四肢が鉛のように重く動かない。
息を吸うたびに胸が締め付けられ、心臓の鼓動すら相手の締め付けと同じリズムで圧迫されていく。
テンタクルルーはそれを楽しむかのように、さらに力を強めた。
さらに追い討ちをかけるかのように、もう一人の男が近づいてきた。
その男スラッグラーはテンタクルルーと同様に全身をドロドロの粘液覆われた状態になっていた。
「ブヘヘ、イキのいい黒猫ちゃんだぜ〜、待ってろ、今たっぷり可愛がってやるからなぁ」
男は口から唾液を垂らしながら近づいてくると、鵺に向かって手を伸ばしてきた。
その手から逃れようとする鵺だったが、身体に力が入らず上手く動けない。
やがて男の手が鵺の身体に触れると、その瞬間全身に電気が走ったような感覚に襲われた。
「んっ!?」
思わず変な声が出てしまう鵺。
慌てて反撃に出ようとするが遅かったようだ。
二人のあくまに挟まれる形で拘束されてしまっているこの状況は非常にまずいと言えるだろう。
このままでは間違いなく負けてしまうだろう。
何とか抵抗しようと試みるものの、思うように力が入らない上に相手は二人だ。
とてもじゃないが逃げられそうにない。
するとその時だった。
背後の空気が爆ぜ、風が巻き込む。
「ウォラー! ばっちい手で鵺ちゃんに触んなああッ!」
声と同時に、闇を裂いて飛び込んできたのは怒気を全身に纏った神羅だった。
足音が石畳を叩くたび、長く伸びた影が鵺の足元まで迫る。
握られたメリケンサックが月光を反射し、刃物のような閃きを放つ。
一歩、また一歩──獲物を仕留める猛獣のように間合いを詰め、呼吸すら合わせた刹那。
「──マジカル☆ナッコー!」
掛け声と同時に踏み込んだ一撃は、空気を裂きながら一直線にテンタクルルーの顎を撃ち抜いた。
骨の砕ける鈍い音とともに衝撃波が四方へ走り、石畳が低く唸りを上げて震えた。
粘液が飛び散り、焦げた薬品臭が夜気に混じる。
テンタクルルーは悲鳴を上げ、膝から崩れ落ち、痙攣しながら沈黙した。
それを見たスラッグラーは驚きに硬直したまま言葉を失っている。
何しろ、いきなり現れた少女が一瞬にして仲間を沈めたのだから当然だ。
一方の鵺は、神羅の姿に安堵を覚えながらも、熱と眩暈に意識が揺らぎ、不安が喉元に引っかかっていた。
自分は今、まともに動けない──それが悔しかった。
そんな心の揺れを読み取ったのか、神羅は一瞬だけ鵺の肩に手を置き、ニヤリと笑う。
「鵺ちゃん、心配なんて似合わないよ。後は全部、あたしに任せな」
耳元で囁く声は不思議と温かく、それでいて刃のように鋭い。
そして彼女は腕をまくり、メリケンサックを回転させながらスラッグラーへ向き直った。
その瞳には確かな決意と、逃げ道を塞ぐ獣の光が宿っていた。
次の瞬間、地面をえぐる勢いで踏み込み、目にも止まらぬ速さで拳が閃く。
スラッグラーの頭部が仰け反り、粘液を撒き散らしながら巨体が後方へ吹き飛ぶ。
石畳に叩きつけられた衝撃で周囲に細かな水滴が雨のように降り注ぎ、異形はそのまま動かなくなった。
戦場に残ったのは、荒い呼吸を整える鵺と、口元に満足げな笑みを浮かべる神羅だけだった。
夜風が熱を奪い、粘液と薬品の匂いだけが余韻のように漂っていた。




