乂阿戦記5 第五章 吸血女王エリザベート・バートリーの淫靡な宴-16 クロウのレポート
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
(o_ _)o
その頃、アルテミス女学園・生徒会室。
午後の日差しが差し込む室内では、三人の少女が円卓を囲み、香り高い紅茶を嗜んでいた。
生徒会長――銀雪。
雪のように白い髪と穏やかな微笑を湛えるその姿は、外見こそ柔らかだが、元冒険者仕込みの鋭い観察眼を隠し持っている。
副会長――鉄玄。
漆黒の髪をまとめ、凛とした瞳で周囲を見渡す彼女は、柔和な物腰の奥に暗殺者のような動きと戦闘技術を秘める。
そして書記――鋼灰。
明るい声と底抜けの笑顔が印象的だが、書類処理も分析も超一流の切れ者だ。
三人が他愛もない話を交わしていたとき、重い扉が静かに開いた。
現れたのは一人の男子――クロウ。女学園の生徒ではないが、何度もこの生徒会室に顔を出してきた人物だ。
彼の姿を見た瞬間、三人の表情が同時に変わった。
ここに彼が現れるのは、ただ事ではない。
「姉上――情報屋から連絡だ。今代のアイナクィン統括者、クィンクィーンが目覚めた。……そして今、“銀の鍵”を巡ってユエと交戦中らしい」
短い報告に、室内の空気が一気に張り詰める。
銀雪がカップをそっと置き、静かに息を吸った。
「……銀の鍵所持者の捜索は中止だ。というより――すべての銀の鍵が、一か所に揃っている」
クロウの報告に動揺が走る。しかし三人はすぐに表情を引き締めた。
過去にも、似たような危機を経験してきたからだ。そのたびに困難を打ち破ってきた――今回もそうできるはずだ、と信じている。
クロウは鉄玄を真っ直ぐに見つめ、さらに続ける。
「状況を整理する。
エリザベートの居城には赤、桜、紫、黄緑の鍵を持つアン・ユエ(今宵鵺)が潜入している。
チェイテ城には11人委員会が集めた黄色、緑、白、橙色の鍵が保管中だ。
そこへ灰色と水色の鍵を持つネロとイブが、ユエの援軍として現れた。
そして、この情報を流した男――ロキ。おそらく黒と蒼の鍵を所有している。
……つまり、この瞬間、十二本すべての銀の鍵がチェイテ城に集結している」
銀雪と鋼灰が、息を呑んだ。
クロウは低く続ける。
「この時代にクィンクィーンが目覚めた以上、“三聖塔の門”を開く『時空大鍵』が生まれるのは時間の問題だ。
クィンクィーンは十二の鍵をひとつに合わせ、『時空大鍵』を復活させる巫女。
最近各地に現れている“歪み”の怪物どもは、その復活の予兆で召喚された存在と見て間違いない。
……つまり、この惑星・地球は再び滅びの危機に晒されている」
静寂を破ったのは鉄玄の一言だった。
「……でも、まだ希望はあるんでしょう?」
クロウは頷き、声を強める。
「『時空大鍵』は“混沌の大渦”のエネルギー源だ。混沌の大渦からは歪みの怪物が生まれ、原初のエクリプスの命令どおり地球を滅ぼそうと動く。
逆に言えば――『時空大鍵』の復活を阻止すれば怪物は生まれない。もちろん、三聖塔の門は開けられなくなるがな」
三人は互いに視線を交わし、覚悟を決めたように立ち上がった。
「時空大鍵の復活を阻止するには、どう動くべきかしら?」銀雪が問う。
「今の私たちは情報屋です。レスナス様に働きかけ、各地の勢力を動かしましょう」鉄玄が冷静に答える。
「ドアダ、龍麗国、11人委員会ソロモン派、アシュレイ族、乂族、ジャガ族……鍵に関心を持つ連中は多いですしね」鋼灰が頷く。
クロウは懐から一束の紙を取り出し、机に置いた。
「俺は直接、チェイテ城に向かう。委員会第九席“闇王”からエリザベートの監視を頼まれている。
……知り得る限りの情報をレポートにまとめた。これをレスナスに渡し、どう情報操作するか決めてもらえ」
「さっすがクロウ君、仕事早っ!」鋼灰が感嘆する。
「任せて。必ず届けるわ」銀雪が微笑み、紙束を手に取った。
鉄玄が一歩前に出て、短く告げる。
「行きましょう――私たちの戦場へ」
三人と一人の足音が、静かに生徒会室を後にした。




