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乂阿戦記~勇者✖︎魔法少女✖︎スパロボの熱血伝奇バトル~  変身ヒーローの勇者様と歌って戦う魔法少女は○○○○○○○○○○○○   作者: Goldj


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乂阿戦記5 第五章 吸血女王エリザベート・バートリーの淫靡な宴-9 チェイテ城の宝を狙うカイトーファミリー

作者のGoldjごーるどじぇいです!

この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…

とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!

「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」

となってくれたら最高です。


良ければブックマークして、追っかけてくださいね

(o_ _)o

一方その頃、別の部屋では──


牢の鍵をとっとと外し、悠々と脱獄しているカイトー一味の姿があった。

当たり前のように通路を抜け出し、たどり着いたのはアイナクィンの研究室。


「……うっわ、なにこれ、キッモ!」


「これは……一体……」


カイトー、ハジキ、イアイ、レヴェナ──四人の目に飛び込んできたのは、悪夢めいた光景だった。

部屋いっぱいに膨れ上がった巨大な肉塊が、脈打つたびに湿った音を立て、ぬらぬらと蠢いている。

その表面には人や獣の顔らしき影が浮かび、あちこちから伸びる触手が生殖器のように形を変えては、ゆっくりと空気を切り裂く。

わずかな臭気すら、胃の奥を締め上げるような吐き気と背筋を這い上がる悪寒を誘った。


事前の下調べが脳裏をかすめる──

これは誘拐してきた少女たちを、アイナクィンに作り替えるための装置だ。


そのとき、奥の影から軽い足音が近づいてきた。


「おやおや、これはこれは、皆さんお揃いで。ようこそいらっしゃいましたぁ〜」


現れたのは、九印愛菜だった。

柔らかな笑顔を浮かべながら、どこか愉快そうに言葉を続ける。


「あれれぇ〜? もしかして君たち、ボクたちの仲間になりたいのかな? だったら歓迎するよ♪」


四人は視線を交わし──一斉に叫んだ。


「ふざけるな!!」


「誰がお前らの仲間になるか!」


「アイナクィン! 我らはお前のような化け物とは違う!」


「さっさと消えなさい、この化け物!」


愛菜はやれやれと首を振り、口元に薄い笑みを残したまま、冷たく言い放つ。


「ふ〜ん、そう……じゃあいいや。死んでいいよ」


次の瞬間、全身から奔流のような魔力が噴き出す。

骨のきしむ音とともに手足が膨れ上がり、皮膚は赤黒く変色。

身長は瞬く間に伸び、研究室の天井を押し上げるようにして──十メートルを超える異形が姿を現した。



天井に届く異形を前に、カイトーたちは一瞬、言葉を失った。

人間の形を辛うじて残しているのは輪郭だけ。

骨はねじ曲がり、皮膚は脈動し、全身を覆う触手が生き物のように空気を切り裂く。

赤黒い眼窩がこちらを見下ろした瞬間、空気は一層重く、冷たくなった。


「……こりゃ、洒落にならねぇな」


ハジキが小声で呟く。

だが、次の一手を考える間もなく、背後から別の声が響いた。


『あらあら、これはこれは──皆さんお揃いで……』


ぞわり、と背筋を撫でるような声。

振り向けば、そこには予想外の人物が立っていた。


この基地の警備隊長、ナルチーゾ。

いつも通りのにこやかな笑みを浮かべ、悠然と歩み寄ってくる。


「あなたたち、私の部下になりませんか?」


唐突な勧誘に一同は一瞬目を瞬かせ──しかし即答だった。


「お断りだ!」


四人の声が揃う。

当然だ。

だがナルチーゾは眉一つ動かさず、むしろその笑顔を深めた。


「じゃあ、しょうがないですね。男は皆殺し。そこのレヴェナさんは……サキュバスに加工して、僕たちの奴隷にしてあげますよ♪ 大丈夫、痛くないです。──むしろ、人によっちゃ病みつきになるくらい、気持ちいいらしいですよ?」


淡々とした口調のまま、背筋が凍るような内容を口にする。

笑顔の奥で、瞳が冷たく光った。


ふわりと、甘く陶酔を誘う香りが漂った。

それが鼻腔を満たすにつれ、体は鉛のように重くなる。

手足は動く──だが妙に鈍い。まるで見えない鎖に繋がれたようだった。


「あはははは……ボク特注の香です。天下の大怪盗でも、こうなったら動けませんよね?」



カイトーたちはうつ伏せに倒れ、身動き一つしない。

ナルチーゾはゆっくりと歩み寄り、獲物を眺める肉食獣のように口角を吊り上げた。


「さて……どんな間抜け面で気を失っているやら」


彼はカイトーの肩を掴み、ぐるりと仰向けに転がす。

その瞬間──視界に飛び込んできたのは、無骨なガスマスク。


「き、貴様……!?」


驚愕に染まったナルチーゾの顔が、次の瞬間、怒りへと変わる。

拳を振り上げ、そのままカイトーを叩き潰そうとした──


ゴチン!


鋭い金属音が響き、ナルチーゾの動きが止まる。

カイトーが背中から取り出したフライパンを、渾身の力で振り抜いたのだ。

衝撃に目を回し、ナルチーゾは糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


「……さて、残るはあのデカ物だな」


カイトーが視線を上げる。そこには、天井を圧する巨体──変貌した愛菜の姿。


「拙者に任せろ!」

背後から声が飛んだ。振り返れば、刀を携えたバットー・イアイが立っている。

カイトーが頷くと、イアイは刀を鞘に収めたまま構え、大きく息を吸った。


床を蹴った瞬間、姿が霞む。

目にも留まらぬ速さで巨体へと迫り、横薙ぎに斬り払う──が、手応えはない。


「……む?」


足元が揺れた。地面を突き破り、無数の触手が噴き出す。

ぬるりと絡みつき、四肢を締め上げる。さらにスライム状の粘液が足元から這い上がり、動きを封じていく。


「くっ……!」


必死にもがくが、締め付けは増す一方。

「ぐっ……ぬぅ……!いえああああ!!」


挿絵(By みてみん)


裂帛の気合と共に鞘走り──一瞬の閃光が触手を断ち切り、拘束を解いた。



拘束を解かれた愛菜は、咆哮と共に新たな動きを見せた。

巨体の口が開き、粘液が滝のように吐き出される。

それは床に広がる間もなく凝固し、やがて人型を象り始めた。


ずるり──

その姿はまるで粘土で作られた人形。

腕と脚をゆっくりと伸ばし、ぎこちなくも確かな歩みで近づいてくる。


間合いまで来ると、顔面の粘膜だけがずるりと剥がれ落ちた。

そこにあったのは、目も鼻もない──黒い穴のような口だけ。

その口がにやりと裂け、イアイめがけて襲いかかる。


「……っ!」


本能が警鐘を鳴らし、イアイは地を蹴って後方へ跳んだ。

次の瞬間、彼がいた場所を巨大な口が覆い、床を嚙み砕く音が響く。

噛まれていれば、一瞬で肉片だった──そう思うと背筋が冷えた。


その間にも、異形は執拗に追う。

イアイが躱すたび、口が空を裂き、破片が飛び散る。


銃声が響いた。

「おらァッ!」

ケンジュー・ハジキが弾丸を浴びせる。

何発も命中するが、怪物は怯まない。皮膚が金属のように弾き返している。


「……効いてねぇな」

さらに追い撃ちの弾丸が飛ぶが、それは逆効果だった。

異形は怒り狂い、突進してくる。


速い──!

回避しようとするも、巨体の勢いが勝る。

イアイもハジキも、逃げ切れない──そう思った瞬間、人影が割って入った。



その男こそはなんと天下一の大剣豪

黒天ジャムガ!!



黒き剣士は剣を構え、異形を正面から迎え撃つ。


空気が一瞬、凍りついた。

刹那の静止──そして一閃。

斬撃の光が走り、空気そのものが裂けたような音が響く。


異形の巨体はぴたりと動きを止め、その場に立ったまま沈黙する。

苦悶の声すら上げず──次の瞬間、全身が崩れ落ちた。


粘液が床に広がり、肉塊だったものはただの溶解した残骸へと変わる。

戦闘は、一瞬で終わっていた。


「なんと!……終わりの線を、無理やり浮かせおった!アレは剣技というよりは仙術……否、生まれ持っての異能の類……」

イアイの瞳が見開かれる。

剣士のみが見抜ける、存在の終焉を示す線──それを、ジャムガは異能と剣術で強制的に引き出し、断ち切ったのだ。


ジャムガは血の匂いも気にせず、剣を軽く払って鞘に収める。

そしてカイトーの方へ振り返り、口元に薄い笑みを浮かべた。


「よう、カイトー。借りは返したってことでいいか?」


カイトーは眉をひそめる。

「借り? 俺は別に、お前に貸しなんて作った覚えはないぞ。むしろ助けてもらった方だ」


「……お前、うちの鵺に気を使って銀の鍵を譲ってくれただろ?」


カイトーはわざと肩をすくめ、視線を逸らす。

「さあな。何のことだか」


「まあいいさ。勝手に俺がそう思ってるだけだから、気にすんな」


「ケッ、勝手にしろい」


短いやり取りの後、二人は互いに背を向けた。

蒸発していく怪物の残骸が、湿った匂いと微かな熱気を残す。

そしてその残り香は、これからの戦いがまだ終わらないことを、嫌でも告げていた。

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