乂阿戦記5 第四章 鏨夕は誘拐された友達を助けたい-28 30%の力
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね (o_ _)o
土煙が街を覆い、視界はほぼゼロ。
だが——その闇を割って、巨大な影が降り立った。
着地と同時に、周囲のビル群が一瞬で吹き飛ぶ。
衝撃波が瓦礫を巻き上げ、崩れ落ちる建物が連鎖する。
……奇跡的に死者は出なかった。だが、そこに立つ“何か”を目にした瞬間、人々の心臓は凍りついた。
全長200メートル超。全身を黒い鱗で覆った蛇の巨躯。
見ただけで本能が拒絶する、吐き気すら催す異形だった。
パニックに陥る人々をよそに、スサノオ・ミカドは一歩前へ。
「やれやれ……また面倒ごとか」
低く呟き、肩をすくめるその顔には、余裕しかない。
蛇の怪物が奇声を上げ、鋭い爪で振り下ろす。
——ガキィン!
金属を叩く音と共に、爪は止まった。
スサノオの筋肉は刃も通さぬ壁。皮膚一枚すら傷つかない。
「……三割の力で十分か。やりすぎれば地球が壊れるからな」
そう呟くと、彼の肉体が膨れ上がり始めた。
隆起する筋繊維、きしむ骨格。
服が裂け、大地が揺れる。息づかい一つで空気が震える。
目の前の“筋肉の怪物”に、蛇は威嚇の咆哮を返す——が、通じるはずもない。
スサノオは笑い、右手を軽く掲げる。
人差し指を一本、親指で軽く押さえ溜めをつくる。
「……行くぞ」
——ぴんっ。
放たれたデコピンが、空気を弾丸に変える。
衝撃波は蛇を包み込み、次の瞬間——
その巨体は夜空を裂き、大気圏を突き抜け、宇宙の彼方へと消えた。
一撃。瞬殺。誰も目を疑うしかなかった。
こうして——歪みの怪物は、たった一撃で消し飛んだ。
……はず、だった。
その時、スサノオの巨体がみるみる縮んでいく。
「ポポポポポポ(スサノオ様)……?」
心配そうに見上げるクシナダに、彼は涼しい笑みを返す。
「大丈夫だよ。俺は力が強すぎてね。常に抑えておかないと、地球ごと吹き飛ばしかねない」
そう言って、ふと空を見上げ——表情を変えた。
漆黒の球体が迫ってくる。
直径数百メートル、光を一切反射しない“闇の塊”。
まるで宇宙そのものを切り取って投げつけたかのような、吸い込まれる闇。
(……あれは呪詛玉。怪物の置き土産か。地上に落ちれば人類は滅ぶ)
次の瞬間、スサノオの全身が黄金の光を帯び始めた。
筋肉の怪物が、太陽そのものへと姿を変える。
「——我が名はスサノオ。天照に次ぐ高位の神なり」
宣言と同時に、神力が奔る。
空間が震え、黒球が押し返されていく。
黄金の輝きが闇を削り、呪詛の塊は悲鳴を上げるように形を歪めた。
スサノオは一歩前に踏み出し、両手を広げ——
パンッ、と軽く手を叩く。
……次の瞬間、黒球は音もなく消えた。
「ふぅ……これでよし」
そう呟いた横顔に、わずかな笑み。
その背中は、救われた者たちにとって、まぎれもない“絶対の守護者”だった。
その様子を、物陰から息を潜めて見ていた者たちがいる。
Dr.レコキスタの雇われ兵——スラッグラー、テンタクルルー、ナルチーゾ、ドンファン。
彼らは局鶯を誘拐した実行犯で、自分達が苦労して誘拐した局鶯の情報を、勇者たちに漏らした裏切り者を粛清すべくやってきたはずだった。
だが、さきほどの戦闘を見た今は——
(やっべぇ……あんな怪物に喧嘩売ってたらマジで死んでた……!)
四人とも腰を抜かし、冷や汗が止まらなかった。
……誰もが息を呑んだ。
息が詰まる。あれは怪物でも神話の存在でもない——
ただの“力”だ。
スラッグラーは、膝が勝手に折れるのを止められなかった。
横目で見れば、テンタクルルーもドンファンも同じ顔をしている。
生き物として、あの男を見上げることすら許されない感覚。
(……今のは“力”の断片に過ぎない)
スサノオの笑顔は、なぜかそう告げている気がした。
「おや、お前さんたち、そんな所で固まって何してるんだい?」
低く、よく通る声が飛んできた。
全員が反射的に肩を跳ね上げる。
振り向けば、黄金の後光を背に、静かな笑みを浮かべるスサノオ——。
だが、その笑顔の奥から放たれる圧は、全身の毛穴を総立ちにさせるほど鋭い。
「ひ、ひぃっ……! こ、これはスサノオさん!」
スラッグラーは反射的に地面へ額をつけた。
他の三人も慌てて土下座する。
きょとんとしたスサノオは、次の瞬間——豪快に笑った。
「ハッハッハ! そんなかしこまらなくてもいいさ。怒っちゃいない」
安堵の吐息が漏れる。しかし、全員の額から汗は止まらない。
スサノオはそんな彼らを見て、再び口元を吊り上げた。
「さて——本題に入ろうか」
声の温度が、一瞬で数度下がる。
「お前たち、クシナダの回収かね? それとも“十二月天使”の確保命令を受けてきたのか?」
「じ、実は……その通りで……」
「そ、そうなんスよ……」
「へへっ……」
うなずいたスサノオの眼光が鋭く光る。
「なるほど。じゃあ頼みがある。スラッグラー君、君が呼び出せる一番上の人間を呼べ。“十二月天使”について——百年前の《ラグナロク》を生き延びた古兵として、伝えておくべき話があると伝えなさい」
「イ、イエッサー!」
ドンファンが敬礼し、その場から駆け出していった。
——だが、その報告が届くより早く。
街の上空に、別の影が落ち始めていた。
それは“次の災厄”の到来を告げる、黒い予兆だった。




