乂阿戦記5 第四章 鏨夕は誘拐された友達を助けたい-21 囚われたスパイ屍紫(かばねむらさき)
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね (o_ _)o
それからしばらく移動を続け、ついに目的地――アルテミス女学園の校舎へと到着した。
白亜の壁に優雅な尖塔が聳え立ち、季節の花々が風に揺れる。初等部・中等部・高等部、それぞれの棟は庭園で繋がれ、まるで王宮のようだ。
俺たちは案内役に従い、自分たちの教室へ向かった。
⸻
扉を開けると、すでにクラスメイトたちが席に着き、こちらを注目していた。
局鶯さんへの自己紹介が始まる。まずは俺の番だ。
「はじめまして、私は雷音と言います。これから一緒に戦うことになりますので、よろしくお願いします!」
深く頭を下げると、教室内にパチパチと拍手が広がった。
胸の奥の緊張が、少しだけほどける。
順番に挨拶が進む中、一人だけ明らかに浮いている小柄な少年がいた。
気になって近づく。
「あのー、すみません。少しいいですか?」
肩を震わせて振り返った少年の髪は雪のように白く、瞳は翡翠色。透き通る肌は妖精のようだが、その表情には影が差していた。
年齢は九歳ほどだろうか。
「……あ、あの!ぼ、僕は鶯谷姉さんの弟の輝印といいます。地下基地ではご迷惑をかけました。お姉ちゃんを取られると思って冷静さを失って……反省してます。これからは心を入れ替えて頑張ります!」
小さな体を折り曲げ、深々と頭を下げる。
慌てて手を伸ばす。
「そんな……謝る必要なんてない。君が自分の意志で行動できたこと、それだけで立派だと思うよ」
言葉を受けたフィインは目を丸くし、ふっと笑った。
今度は先ほどよりも深く丁寧にお辞儀をする。
自然と俺も笑みを返していた。
こうして新たな仲間を得たことで、俺たちの絆はさらに強まった――そう感じられた。
⸻
……その頃、別の場所。
「……ここは……?」
瞼を開いた瞬間、鉄の匂いと湿った空気が鼻を刺す。
粗い石壁、錆びた鉄格子。両手両足は縄で固く縛られ、わずかに動くたび皮膚が擦れて痛む。
牢屋だ。
足音。
顔を上げると、格子の向こうに現れたのはクラスメイト――久印愛菜。
唇がゆっくりと吊り上がる。
「目が覚めたようだね……」
瞬時に悟った。
人間に擬態するアイナ・クィーンの秘密を探ろうと接近したが、正体を見抜かれ、逆に捕まったのだ。
愛菜の瞳は愉悦で満ちていた。
「泣くほど嬉しいのかい?」
嘲る声音に、反射的に睨み返す。しかし、その視線はまるで獲物を弄ぶ猫のように、彼女をますます楽しませるだけだった。
重い扉が開く音が響いた。
入ってきたのは、漆黒のロングコートに身を包む長身の男――11人議員会第七席、七大魔王の一人、アスモデウス・サンジェルマン。
「……やあ、愛しの屍紫君。こうして再びお会いできる日を、私はどれほど夢見たことか」
彼の声は、柔らかく、それでいて底知れぬ毒を含んでいた。
「まさか君が裏切るとは思わなかったよ。ああ、いや――裏切りというのは不正確ですね。君はもともと龍麗国の二重スパイ……そう、“最初から私の物ではなかった”のだから。……もっとも、今となってはどうでもいいことですが」
足音を響かせ、ゆっくりと距離を詰めてくる。
背筋が凍る。視界が狭まる。
「お、お願いです……!なんでもしますから、命だけは……!」
彼は一瞬だけ目を細め、口元を上品に歪めた。
「ふふ……甘く囁く君の声、久しぶりに聞きました。いいでしょう。――許してあげますよ」
安堵の息が漏れた、その瞬間。
「……ただし、君をこの世界で最も愛らしく、最も無慈悲な存在に“仕立て直す”ことを条件にね。君を、私のアイナ・クィーンの魔法少女にするのです」
心臓が跳ねた。
「な……そんな……! 私は私でいたい! システムの奴隷になんか……!」
「抵抗する姿も愛しい……ああ、その瞳が私の色に染まる瞬間を、どれほど待ち望んだことか」
屈強な兵が牢に踏み込み、肩と腕を掴む。
足が引きずられ、視界が揺れる。
心臓が早鐘を打つ――もう終わりだ。
その時、鋭い声が響いた。
「待ちなさい!」
振り向くと、光を背負った少女が立っていた。
その名は――神羅。




