乂阿戦記5 第四章 鏨夕は誘拐された友達を助けたい-11 羅刹vs八尺の女
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね (o_ _)o
黒外套の兵士たちを蹂躙していたのは、姉――羅刹の自己世界具現化魔法だった。
焼け焦げた骨の兵士を操り、次々とスラッグラーの手勢を撃ち抜く。
着弾点は空洞化し、舗装は抉れ、地面ごと沈む。
命名も術式も彼女の完全自作。その威力は常識外れだった。
「ぐっ、くそったれぇぇ!」
スラッグラーが咆哮し、全身から溶解粘液を吹き出して突撃する。
だが羅刹は一歩も動かず、指先から白光を弾丸のように放った。
命中と同時に、奴の右腕は粉砕――悲鳴が路地裏に響く。
「口ほどにもねえな。……臭ぇ場所だ、さっさと殺して――ん?」
その視線の先。
黒服の巨女が、ぎこちなく歩み寄ってくる。
二メートル四十の異形。八尺女。
「ぽぽぽぽぽ……」と不気味に嗤いながら。
羅刹は舌打ちし、指先を向ける。
閃光が八尺を飲み込み、影も形も消し飛ばす――はずだった。
だが次の瞬間、無傷のまま再び姿を現す。
「……なんだと!?」
返答代わりに、八尺の両腕が羅刹の首を締め上げた。
骨が軋むほどの力。だが羅刹は逆に嗤う。
「くっ……!くは!くははははは!グギャギャギャギャギャギャ!!」
予想外の八尺の戦闘力に乂羅刹の闘争本能に火がついた。
ニヤリと笑みを浮かべると、両手から強力な魔力を放ち始めた。
すると、地面から無数の骸骨が現れ、一斉に八尺に襲い掛かってきたではないか。
「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ!」
それに対して、同じく魔力を放出し迎え撃つ八尺だが、次々と現れるスケルトンたちに押され始める。
しかしそれでもなお諦めることなく戦い続けるのだった。
羅刹と八尺が激闘を繰り広げる中、スラッグラーはここぞとばかりに逃げ出した。
「ナメクジ男が逃げた!」
羅刹の戦闘を遠巻きに見ていた葵遍が叫んだ。
「追って下さい! あいつが局鶯ちゃんの居場所を知っています!」
鏨夕、神羅、束緑が一斉に駆け出す。
だが見た目に似合わず、スラッグラーの脚は驚くほど速かった。
粘液で路面を滑るように走り、みるみる距離を広げる。
「くそ、速すぎる……!」
追跡が諦めムードに傾きかけたその時――
空が裂けた。
巨大な影が降下し、轟音と共に地面に衝突。
爆風が瓦礫を巻き上げ、砂煙が辺りを覆う。
視界が晴れると、そこには血まみれで昏倒したスラッグラーの姿があった。
「はーい♪ 追ってるみたいだったから、私が捕まえてあげたわよ♡」
軽やかな声と共に現れたのは、クラスメイトのリリス・ツェペシュ。
得意の隕石魔法で頭上から一撃を叩き込んだのだ。
地面にはクレーター。威力は相変わらず桁外れ。
「ねぇ、このナメクジ……前にウチのアテナちゃんを攫おうとした悪魔じゃない?」
リリスの後ろから、もう一人ひょこっと顔を覗かせる少女がいた。
セレスティア・ヴィース。手にはチョコレートクレープ。
どうやら二人は街でデート中だったらしい。
セレスティアは甘党の美少女。だがその瞳はスラッグラーに向けて鋭く光る。
「……やだ、この男、私の胸ガン見してない?」
両腕で豊満な胸を押さえ、冷ややかな視線を浴びせる。
だがスラッグラーは、いやらしい笑みを浮かべ舌なめずり――
ぶるんぶるんと揺れる胸に思わず見とれてしまうスラッグラ-であったが、すぐに我に帰ると再び暴れ出した。
「むぐううう!!ふごおお!!このメスガキ共が!!極道者に喧嘩売るたあいい根性してるじゃねえか??ぶへへへ、こいつぁ躾がいがありそうだ!!」
スラッグラーは粘つく笑いを漏らし、ねっとりとした舌なめずりをする。
「躾がいがありそうだぜ……」
一歩、また一歩と雷音達へ迫る。
「こいつ……!」
雷音が拳を握った瞬間、スラッグラーの掌から飛び散ったのは半透明の粘液だった。
それは生き物のように雷音の身体に絡みつき、瞬く間に硬化する。
「なっ……!? 身体が動かねぇ!」
粘着質の拘束が腰から脚までを包み込み、力任せに引き剥がそうにもビクともしない。
「ぐひひ……女をこうやって縛って、嬲るのがよぉ……俺の趣味なんだよ」
いやらしい声音と共に、スラッグラーの手が雷音の腰へ這い上がる。
「げえ?お、おい、ばか、やめろ!」
「おっほぉ……いい声出すじゃねぇか、もっと聞かせろや」
ぬめる指先が腹部から下へ滑り、腰回りを探る――
そして、スラッグラーの顔が歪む。
「な……なんだと……!? テメェ、男じゃねぇか!」
その瞬間、動きが止まった。
雷音はギロリと睨みつけ、短く吐き捨てる。
「見りゃわかるだろ。気安く触んな、変態ナメクジ!」
次の瞬間、雷音の膝が鋭く跳ね上がった。
ドゴッ! と鈍い音が響き、蹴りはスラッグラーの股間を直撃。
「ぐぼぉっ……!」
悪魔の顔が苦悶に歪み、泡を吹きながら地面に崩れ落ちた。
――クリティカルヒットである。




