乂阿戦記5 第三章 紫の邪神ロキは銀の鍵を巡り奔走する-4 龍麗国内乱の兆し
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね (o_ _)o
――首都郊外・古びた洋館の一室。
重厚な調度品に囲まれた部屋の中央、テーブルを挟み、赤いスーツの男と黒服の男が対峙していた。
カードを伏せる指先に緊張が宿る。
ポーカーの勝負も、最終局面に入っていた。
「覇王達と11人委員会のジュエルウィッチハートをめぐる争奪戦だが、争奪品がいつの間にかジュエルウィッチの嬢ちゃん達から12の『銀の鍵』に切り替わっちまったな……」
低く呟いたのは、黒服の男・ケンジューハジキ。
赤スーツの男がニヤリと口元を歪めた。
「情報戦の勝者は――阿門か。あいつはなにより家族を守るのが最優先だからな。
雷華、ブリュンヒルデ、迦楼羅スモモ……あの3人の鍵はもう体外へ取り出されてるはず。宝物庫かどこか、安全な場所に保管済みだ」
彼の名は、カイトー・ランマ。
天下に名を轟かす大泥棒。だが、その視線は鋭く、何かを見通していた。
すると、部屋の扉が音を立てて開いた。
「おっと、お待たせ。いやー、道が混んでてね!」
にこやかに入ってきたのは、紫スーツの青年――露木ロキ。
テーブルに置かれた水差しを手に取り、一気に飲み干すと、意味深な笑みを浮かべて告げた。
「面白い話を聞いたよ。今代のジュエルウィッチ達……実は誰一人、“銀の鍵”を体内に宿していないらしい」
「……なに?」
「全員分、鍵は抜き取られ、それぞれの勢力が保管してるそうだ。
もう魔法少女が狙われる心配はない。鍵は完全に“モノ”として流通してる。
ちなみにこれが、証拠だよ」
ロキが懐から取り出したのは――銀色に鈍く輝く、まぎれもない“銀の鍵”。
瞬間、カイトーとケンジューの目が鋭くなった。
それを見て、ロキは悪戯っぽく微笑む。
「まず、乂雷華・ブリュンヒルデ・迦楼羅スモモの3つは乂族。
イブとネロの2つはドアダ帝国。
白水晶の鍵はナイア。
クレオラの鍵はメフィストギルド。
アテナの鍵はオリンポス。
アリスとルシルの2つは銀河連邦――もっとも、あそこも11人委員会の飼い犬だけどね。
だから、実質この2本は“レコキスタのじいさん”の管理下にある。
葵遍の鍵はミスティル。
最後のニカちゃんの鍵は……この通り、僕が持ってるわけさ」
「なんで俺たちにこんな大ネタを?」
「答えは簡単――君たちを“仲間”に誘いたいんだ」
カイトーが目を細めた。
「……仲間、だと?」
ロキは座り直すと、ゆっくりと語り始めた。
「これから龍麗国で内乱が起きる。建国王ゾディグと現支配者ユドゥグの親子による骨肉の戦争だ。ドアダ帝国はゾディグ側につく。三聖塔を巡る争奪戦が始まる。封獣、改獣、銀の鍵――すべてが一堂に会する可能性がある」
「……つまり、“開門条件”が揃うと?」
「その通り。12の“銀の鍵”。12人の“転生者”。三聖塔。
それが揃えば――アカシックレコードが開かれる」
沈黙が走った。
やがてカイトーが口を開く。
「……そしてそのアカシックレコードを、お前が手に入れるつもりか?」
「違う」
ロキの瞳は、どこまでも真っ直ぐだった。
「ボクはただ、“救いたい”だけなんだ。愛する人を、自分の手で」
その言葉に、カイトーの胸中が微かに揺れる。
ロキは続ける。
「君たちは最強の大泥棒。常識の枠外で生きる者。
そんな君たちにしかできない任務がある。どうだい、興味は?」
そう言ってウインクをするロキに対して、カイトーランマは嫌悪感と奇妙な好感を抱きつつも冷静に考えることにした。
この男の目的は一体何なのか?
何が目的なのか?
ただ、はっきりわかることがある。
この男は世界にとってろくでもなしだが、特定の人間に対しては真摯で優しい。
コイツはどんな犠牲を出そうが、気に入らない世界の理はめちゃくちゃにして、自分が気に入った相手のハッピーエンドを願う自己中心的な神様なのだ。
今コイツは善悪や損得ではなく、気に入った誰かを助けるべく自分勝手に動いているのだろう。
邪神と呼ばれるのも納得の危険な男だ。
正直言って関わりたくない相手ではあるが、無性に気に入らないから全力で張り合ってみたくなる。
こう見えてカイトーも義理人情に厚い男である。
変えられるなら変えたい世界の理がカイトーにもある。
世界を救い殉死する女神と彼女を救いたくて仕方ない不器用な少女をいい加減にしがらみから解放してやりたい……。
「いいだろう、その話乗ってやるよ」
「えっ?!」
予想外の返事に思わず驚きの声を上げるロキ
ケンジューハジキが目を見開いた。
「お、おいおい、マジかよ!」
ロキも驚いた表情を崩せない。
「まさか本当に協力してくれるなんて……!」
「勘違いするなよ。俺たちが動くのは、自分の流儀のためだ」
「……ああ、それでいいさ。じゃあ、さっそく動こう。龍麗国で合流する仲間を紹介する」
カイトーが立ち上がる。
「一つだけ条件がある」
「なんだい?」
「俺たちは裏社会の住人だ。だが、お前のやり方で“表の道”も用意しろ。それくらいはできるだろ?」
「任せて。“神様”ってのは、器用で自己中で……だからこそ、なんでもできちゃうんだ」
3人の視線が重なる。
世界が揺れようとしていた。
――その中心に、彼らが立つ。




