乂阿戦記5 第二章 翠の勇者獅鳳は雷華と巨大ロボを召喚したい-6 ゲス共が動き出す
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね (o_ _)o
夜の歓楽街――
煌びやかなネオンが揺らめく裏通り、その奥にひっそりと佇むホストクラブ「クラブ・スティグマ」。
ここが、ナルチーゾの根城であり、《銀の鍵》奪取作戦の拠点だった。
ナルチーゾ――本名、成瀬智津夫。
11人委員会・第六席Dr.レコキスタ直属のインキュバスにして、ジュエルウィッチたちを欺くために人間の姿をまとった悪魔。
その美貌と色香を武器に、夜の街を支配している。
この夜も、彼のもとに一癖も二癖もある仲間たちが集められていた。
⸻
まず口を開いたのは、一人の少女。
「ねぇ……お姉様ぁ~。私たち、いつまでこんなこと続けなきゃいけないんですかぁ~?」
気怠そうに頬杖をついて言ったのは、屍紫。
アルテミス女学園に潜入中のスパイにして、“影魔女”の異名を持つ少女だ。
普段は根暗で地味な風貌だが、任務時には冷酷無比な暗躍ぶりを見せる。
そんな彼女の言葉に応じたのは、陽気な声を響かせるカウボーイ姿の中年男だった。
「ヒヒッ、そんなの決まってるだろ?ジュエルウィッチハートの“銀の鍵”の技術データを、丸ごとコピーしちまうまでだぜ?」
男の名はドンファン。異世界スラル出身の元傭兵にして、自称・銀河一の女たらし。
その軽薄な態度の裏には、誰にも言えない秘密があった。彼の正体は、人間と魔族のハーフ――
だが、それを知る者は、今のところ誰もいない。
屍紫がちらりと視線を送った先にいたのは、黒髪の少女。
「……データの転写なんてまどろっこしい真似、非効率ですね。直接、ジュエルウィッチどもを拉致すればいいだけでしょう」
冷え切った声でそう言い放ったのは、葵遍。
タイラント族の魔法使いで、自称十八歳。
鋭い眼鏡の奥に宿る無表情と無感情な口調からは、年相応の感情は一切読み取れない。
育ての親は、かの“剛弓覇龍”葵覇崙。
彼女はその人物こそが実の父だと信じて疑わないが、真偽は定かではない。
「ったくよォ、お前はいつも喋りが固いんだよなァ!もっとこう、人生楽しく行こうぜ? な、笑えって!」
空気を和ませようと笑いかけるのは、このクラブの経営者にして彼らのまとめ役――
巣蔵安三。
異世界スラルで「スラッグラー」の名で知られた大悪魔であり、地上では傭兵稼業を営む裏社会の重鎮。
全身に走る刺青と、過去に“悪鬼絶殺”アン・テイルに敗れた傷が、彼の異様な存在感を際立たせていた。
体液から酸や麻薬を生成するという異能を持ち、戦場でも歓楽街でも悪名高い。
金のために動く、純然たる「悪」だった。
⸻
「で、巣蔵さん。傷の具合はどうです?」
ナルチーゾが問うと、包帯だらけの男が応じた。
「ギクシャクはしてるが、動けねェってほどじゃねぇな」
答えたのは来栖典太、通称テンタクルルー。
触手を操る暗黒の使徒にして、スラッグラーと並ぶもう一人の大悪魔。
先月の“女神アテナ誘拐作戦”でアン・テイルに敗北し、いまだ全快には程遠い。
彼ら全員がスラッグラーの部下であり、元傭兵にして現・暗躍組織の中核メンバーだった。
⸻
「……しかしな、レポートを見る限り、こりゃあ想像以上に面倒だぜ」
スラッグラーがテーブルに投げたタブレットには、ドアーダ学園、アカデミア学園、アルテミス女学園の関係者情報が映し出されている。
「敵に回すとヤバい奴が揃いすぎてる。下手に手を出しゃ、こっちが消されるぞ」
その言葉に、一同の空気が引き締まった。
「……せっかくレコキスタ様直々の依頼だが、これは慎重に動くしかなさそうだな」
「ですね……無策で突っ込めば、名誉挽回どころか死にますよ」
葵遍が冷静に頷き、屍紫は唇を噛む。
(くそ……簡単に終わると思ってたのに)
ナルチーゾは目を伏せ、静かに息をついた。
だが、次の瞬間、彼の脳裏にある男の姿がよぎる。
(……そういえば。あいつは今、どうしてる?)
今作戦に召集した中でも、最強にして最凶の存在。
――暗殺魔王、アンドラス。
だが、この場の誰一人知らなかった。
彼らの運命を揺さぶるのは、外敵でも神々でもなく―
その“魔王”ただ一人であることを。




