乂阿戦記5 第二章 翠の勇者獅鳳は雷華と巨大ロボを召喚したい-3 父との特訓
作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね (o_ _)o
その頃、闘技場の外にはすでに大勢の観衆が集まっていた。
ドアーダ魔法学園の学生を中心に、アカデミア学園、アルテミス女学園の関係者までもが見守るなか──
注目を集めていたのは、かの《クトゥルフ戦争》や《ギガス・オブ・ガイア事件》で名を馳せた若き英雄たち──
雷音と獅鳳による、封獣搭載型プラモロボの模擬戦だった。
「雷音と獅鳳!?マジかよ!このカード、もはや本戦より熱いじゃん!」
「今撮っとけ!あれ動画回せ回せ!!」
「よっしゃああ!我らが雷音兄貴ぃぃぃ!!」
「いやいや、俺は獅鳳派だ!あの冷静さこそ“勇者”の風格だ!」
騒ぐ観客たちをよそに──
当の本人たちはというと、意外にも無邪気に目を輝かせていた。
「わぁ……プラモロボって、実際に操縦するとこんな感じなのだねぇ〜」
「ははっ、ヤバいなこれ……楽しすぎる!」
試合が始まる前だというのに、まるでオモチャを与えられた子供のように純粋な笑顔を浮かべている。
そんな中──
「始めっ!」
タット先生の号令とともに、模擬戦が幕を開けた。
⸻
開始早々、先手を打ったのはミリル。
ドアーダ軍の20メートル級汎用量産型プラモロボ《紫電》。
その一機に、ミリルは自らの封獣──《ドゥラグラグナ》の魔力を注ぎ込む。
すると、紫色の平凡な機体が、まるで翠色の雷の竜神に変貌したような姿へと変形し始めた。
「うおお……あれが……」
獅鳳が目を細める。
「“ドゥラグラグナ機械神形態(仮)”……! ……くっ、俺より先に雷音に使われるなんて……ちょっと悔しい……」
小声でこぼす獅鳳の肩を、雷華がポンと叩く。
「気にすんな。あれはシミュレーション用のデータ再現よ。
実体じゃないし、今は“君の封獣の本質”を知ることが先。──いくよ、獅鳳!」
彼女の手が、別の《紫電》に触れる。
今度は紅に染まり、頭部が鳳凰のような形状に変化した。
「雷華も、クトゥグァで来たか……!」
フィールドに立つ二機。
翠の雷獣 vs 紅の炎竜。
その威容はモニター越しでも“本物の機械神”と見紛うほどに凄まじく──
観衆は一瞬、言葉を失った。
だがすぐに、巨大ロボ同士が剣を交えると──
「うおおおおおお!!」
「やべえ!あれヤバすぎ!!」
「本物の怪獣映画じゃんか!!」
歓声は爆発した。
実際には40センチサイズのプラモデル。
しかしモニターに映るその姿は、まさに“異界の戦神”そのものだった。
⸻
両機が拮抗していたその時──
ズン……ズン……ッ!!
「……え?」
突如、地響きのような重低音がフィールドを揺るがした。
空気が震え、空間が歪む。
そして──
上空に、巨大な影が姿を現す。
「っ……な、なにあれ!? 誰の機体!?」
ミリルが思わず声を上げた。
フィールドのモニターに映し出されたその存在は──
紫色の重厚な金属装甲。禍々しい異形のシルエット。
全長20メートル(※実際は40センチ)とは思えぬ“王の威圧”を放っていた。
「っ……あれ……あのフォルム……まさか……」
雷音の顔が青ざめる。
「……おい獅鳳、お前んとこの親父さん……永遠田左丹の戦闘形態、“ナイトホテップ”に……似てないか?」
その問いに、獅鳳は迷いなく頷いた。
「間違いない。あれは……父上だ」
観衆も、試合を観ていた教師たちも一様に動揺するなか──
ナイトホテップの紫の機体が、無言でゆっくりと降り立った。
そして。
「さあ、始めようか」
静かに、だが威厳に満ちた声が会場全体に響き渡った。
⸻
「お、おい!? なんで獅鳳の父ちゃんが出てくるんだよ!?!?」
雷音が絶叫する。
「いやマジであの人強いから無理だって!!てか、お前の親父さん“ドアダのCEO”だろ!? なんで学生の模擬戦に特攻してんだよぉ!!」
動揺して後ろにのけぞる雷音を、タット先生が一喝した。
「何を騒いでいる! ナイトホテップ将軍は君たちの特訓のため、わざわざ来てくださったのだ。
貴重な機会だぞ。全力で向かってこい!」
「ぬあああああああ!?!?」
悲鳴を上げる雷音をよそに──
「……かかってこい」
ナイトホテップが、構えた。
一瞬。
紫の機体が霞のように消え、目にも止まらぬ速さで距離を詰め──!
「なっ──!?」
雷音が反応するより早く、拳が突き出されていた。
──ズガアアアン!!
「ぎゃああああああああああ!!!」
紫の拳が雷音の機体を吹き飛ばす。
一撃で、地面に深くめり込むほどの威力。
「な、なんだよ……これ…防御したのに、全然防げてねぇ!!」
その間にも、獅鳳も果敢に攻撃を仕掛けていたが──
「遅い」
ナイトホテップの足払い一閃。
「ぐわああああああ!!!」
獅鳳の機体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。
⸻
「何をやっている。お前たちの持ち味は何だ」
ナイトホテップの声が響く。
「雷音は雷。獅鳳は炎。
自分の“最強技”を簡単に捨ててどうする?奇策に走るのは、勝てる戦でこそやるもの。
普段の武器こそ、お前たちの誇りのはずだ」
2人は言葉を失いながら、再び立ち上がる。
だが──
「……よし。お前たち、封獣を“交換”しろ」
「えっ……?」
ナイトホテップは淡々と続けた。
「雷音は《クトゥグァ》に、獅鳳は《ドゥラグラグナ》に。
──己が使い慣れたものに戻れ。
新しい力を求めることは悪くない。だが、己の軸を見失えば、死ぬ」
その言葉に──2人は、真剣な表情で頷いた。
⸻
封獣の装備を変更し、再起動する2人。
雷音は剣を構えると同時に、目の前の岩を叩き斬った。
ズバァンッ!
岩が真っ二つに裂け、雷が駆け抜ける。
「……よし!」
その様子を見て、ナイトホテップはにやりと笑う。
獅鳳も、新たにドゥラグラグナの力を宿した機体を見つめながら呟いた。
「これなら……いける」
その目には、確かな自信が宿っていた。
そして──
その成長した息子を見たナイトホテップの瞳にも、どこか柔らかな光が宿っていた。
「よし。来い」
再び戦闘姿勢をとる父。
再起した雷音と獅鳳が、今、師父と向き合う──!
──轟雷と紅炎が、再び大地を焦がす!
封獣を入れ替え、完全覚醒した雷音と獅鳳の機体が疾駆する。
雷杖を宿した獅鳳の機体は、翠の風と雷を纏い、まるで雷神の如く駆ける。
一方、雷音の剣に宿る紅蓮の《クトゥグァ》は、燃えるような赤き光を放ち、剣を構えるたびに空間を灼いていた。
「今度こそ……やるぞ、雷音!」
「ああ、いこうぜ獅鳳!“師匠”を超えるために──!!」
2機が真っ直ぐに紫の巨躯へ向かって突撃する。
対するは、機体を動かす素振りすら見せず、悠然と仁王立ちするナイトホテップ。
「来い」
その一言と同時に──風が止まった。
静寂を切り裂くように、2機が同時に左右から飛びかかる!
「紅蓮閃雷剣!!」
雷音が斬りかかる!
「風牙迅雷斬!!」
獅鳳が巻き上がる風と共に突き刺さる!
炎と雷、二つの力が交錯し、紫の機体を挟み撃つ──!
だがその瞬間、ナイトホテップの右腕がわずかに動いた。
ゴォン!
空気が押し潰されるような音と共に、衝撃波が走る!
2機の剣が──
「折れたっ!?」
「うそ……!」
ナイトホテップの拳から放たれたのは、重力すらねじ伏せる拳圧だった。
だが──!
「まだだッ!!」
雷音が叫ぶと同時に、破損した剣を投げ捨て、右手を突き出す。
「雷華っ!!」
「任せて兄貴!!」
なんと別機体の副操縦席の雷華が手を掲げると、空間が波打ち、雷音の機体に一筋の閃光が走った。
封獣遠隔補強リンク──《クトゥグァ・コードリチャージ》!
新たな剣がその手に形成され、紅蓮の刀身が脈動する!
「ふん……面白い」
ナイトホテップが構える。
その瞬間、後方からもう一人の声が飛んだ。
「雷音、前行きすぎ!獅鳳、こっちも雷華みたいに援護するから雷音と連携するのだっ!!」
ミリルも雷華のように封獣遠隔補強リンク──《ドゥラグラグナ・コードリチャージ》!
周囲の空気が渦を巻き、風が怒り、雷が咆哮する。
「風雷連撃・ライトニングストームっ!!」
獅鳳が叫ぶと同時に、上空から雷撃と突風がナイトホテップの機体に襲いかかる。
今度は──ナイトホテップの肩が大きく揺れた。
「……効いてる!?」
雷音の目が見開かれる。
「今だ獅鳳っ!!」
「行けっ雷音!!」
2人の声が重なった瞬間、獅鳳の機体が跳ねた。
足元から立ち上る緑の稲光と共に、封獣の竜槍が出現する。
それを真っ直ぐナイトホテップに向けて突き出した──!
「貫けぇぇぇぇっ!!」
ズゴォォォォォォンッ!!!
衝撃。
空間が弾け、モニターの中で光が弾ける。
紫の巨躯が、一歩──後退した。
それは、模擬戦が始まって以来、初めてのことだった。
⸻
──数秒後。
観衆がようやく我に返ると、会場は歓声と拍手で包まれた。
「勝った……のか!?」
「いや、違う……ナイトホテップ将軍は──」
モニターの中。
紫の巨体は、僅かに肩を揺らし──
「見事だ。合格だ」
そう言って静かに、機体を下ろした。
⸻
模擬戦は、こうして“引き分け”として幕を閉じた。
だがその中身は──彼らにとって、確かな一歩だった。
雷音は、雷華と拳を合わせる。
「サンキューな、妹!」
「ふふ、兄なら当然よ」
獅鳳は、崩れた槍を見つめながら、そっと呟いた。
「父さん……俺、やっと一歩近づけたのかもしれないな」
左丹は、遠くからその言葉を聞いていたが、何も言わず──
ただ、背中を向けて去っていった。
その背は、どこか誇らしげであった。




