乂阿戦記5 第一章 赤の勇者雷音はミリルと婚約解消したくない-3 アルテミス女学園
はじめまして!作者のGoldjごーるどじぇいです!
この物語は、
勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね (o_ _)o
アルテミス女学園にやってきた3馬鹿達
アルテミス女学園の正門前。
そこに現れたドアーダ魔法学園の三人組――雷音、イポス、アキンド。
その姿をモニター越しに見守っていたのは、学園の生徒たちだった。
「わ、わ……見て見て! ドアーダ魔法学園の殿方たちが我が校にお越しになられたわ! いったいどんな方々なのかしら……早くお会いしたいですわ〜!」
興奮した様子で叫ぶのは、白髪の長髪に長身の美少女、銀雪。
名門貴族出身の才女であり、明るく社交的な性格は誰からも慕われている。
学園内でもトップクラスの人気を誇る、いわば“お嬢様アイドル”である。
彼女が興奮するのも無理はなかった。
なにしろ、来訪者の一人――雷音は、かつての《クトゥルフ戦争》で名を馳せた英雄の卵なのだから。
その隣では、長い黒髪をヘアバンドでまとめた少女が静かに微笑んでいた。
彼女の名は鉄玄。副会長を務める、落ち着いた雰囲気の才媛である。
そして、二人の背後に立っていたのが――
「玄姉、雪姉! 出迎えはアタシに任せてよ! よその学校の男子になめられるわけにはいかないんだから、アタシがビシッと決めてくる!」
ショートカットの茶髪を揺らしながら、拳を握って意気込む少女の名は鏨夕。
アルテミス学園随一の攻撃力を誇る、熱血タイプのエースである。
だが、彼女が駆け出すのを、後ろからのんびりとした口調で止める者がいた。
「あらあら〜、ちょっと待ってくださいよ〜、ユウちゃん〜」
鉄玄がふわっと抱きつくと、夕はたじろぎ、バランスを崩しかける。
「ちょっ、ちょっと玄姉!? 倒れるってば!」
恥ずかしげに頬を赤らめて俯く夕の姿に、銀雪はほほえましいものを見るような眼差しを向けた。
「ユウちゃん〜? お出迎えと決闘は違いますからね〜? お客様に無礼を働いちゃダメですのよ〜?」
銀雪の“お嬢様注意”に夕はこくりと頷き、拳を握り直した。
(よし、やってやるわよ!)
勢いよく飛び出していく背中を、二人は笑いながら見送る。
「……あれ絶対またケンカ吹っかけるわね♪」
その予言は、すぐに現実のものとなった。
――数分後。
雷音・イポス・アキンドの三人は、全身黒焦げにされた状態で簀巻きにされ、客間へと引きずられてきた。
「勝ったよ!!」
満面の笑みでピースサインを決める夕。
その瞬間、鉄玄と銀雪の拳が同時に振り下ろされた。
「「お客様になんてことしてるのおおおおおお!!!」」
固く握られた拳骨は、容赦なく夕の頭を打ち抜く。
「ひぎゃあああああ!! ご、ごめんなさいいいい!!」
地面に崩れ落ち、土下座する夕に、周囲の女生徒たちがざわめく。
「ひ、ひどい……けど自業自得……」
ため息混じりに鉄玄が言う。
「……もういいですから、顔を上げなさい」
おそるおそる顔を上げた夕に、鉄玄は容赦なく言い渡す。
「懲罰室で、水の入ったバケツを両手に持って一時間、立ってなさい」
「うえええええ……」
夕が引きずられていくその横で、まだ意識を失っている三馬鹿が横たわっていた。
しかし、その中の一人が、ようやくうめき声をあげる。
「……ん……」
雷音が目を覚ました。
まだ頭がぼんやりとしていて、周囲の状況がよく掴めていないようだった。
目に映ったのは、銀色の長髪を持つ少女の姿。
凛とした気品と、どこか柔らかな雰囲気を併せ持つ少女が、椅子に腰かけて彼を見下ろしていた。
「あら、起きましたのね」
「……えっと、君は……?」
雷音がゆっくりと身を起こすと、少女はにっこりと笑った。
「私はアルテミス女学園の生徒ですわ。あなたたちが倒れていらっしゃったので、介抱して差し上げましたのよ」
(なんとか夕ちゃんのやらかしを誤魔化さなきゃ!)
口調はお嬢様そのものだが、どこか優しさを感じさせる言い回しだった。
警戒心を抱くどころか、雷音は自然と礼を述べていた。
「ありがとう。助かったよ」
隣でイポスとアキンドも目を覚まし、のそりと体を起こす。
「う〜ん……夢かと思ったけど……」
「現実だな。頭いてぇ……」
雷音は体を伸ばしながら、ぼんやりと呟く。
「たしか……学園に来て、生徒と話をして……で、いきなり殴られて……」
「ルキフグス軍団の残党がボスの復讐に来たのかと思ったよ……」
そんな二人の冗談に、銀髪の少女――銀雪がくすりと笑みを漏らした。
「ふふっ、お元気そうで何よりですわ。ところで、あなたたち……ドアーダ魔法学園の生徒さんでいらっしゃいますよね?」
(よし!上手くごまかせそうですわ!)
「ああ、そうだよ」
雷音が頷いたそのとき。部屋の隅に気配を感じた。
ちらりと視線を向けると、茶髪ショートの少女――鏨夕が、こそこそとこちらの様子を窺っていた。
その視線は明らかに“敵意”を含んでいる。
彼女がこちらへ近づこうとした瞬間、銀雪が声を上げた。
「そういえば、まだご挨拶が済んでいませんでしたわね。私はこのアルテミス女学園の生徒会長、《銀雪》と申します」
(夕ちゃん!要らないことしないで!)
「私は副会長の鉄玄です。こちらの鏨夕も含めて、三人とも今回の学園対抗ロボ競技の出場者です」
「……もしかして君たちって、“対魔忍者姉妹”か?」
雷音の問いに、イポスも興奮気味に身を乗り出す。
「テレビで見たことある! サインもらっていいですか!?」
鉄玄が目を輝かせて笑顔を返す。
「まあまあ♪ そんなに喜んでいただけるなんて、光栄ですわ」
が、そこに割って入ってきたのは、やはり鏨夕だった。
「ちょっと! ワタシたちを無視して話を進めないでよね! アンタたちに言いたいことがあるの!」
「えっ、スマホ交換の話?」
呑気なアキンドの言葉に夕の眉がぴくりと跳ね上がる。
「……スマホじゃないわよ!!」
「まあまあまあ、落ち着いてよ」
雷音が慌てて仲裁に入ったところで、鉄玄がタイミングよく声を挟んだ。
「皆さん、まずはお茶でも飲みましょう♪」
それを聞いた一同は、ようやく落ち着いた様子でリビングへと移動していった。
⸻
ふかふかのソファに腰を下ろすと、雷音は本題を切り出した。
「実は……俺たち、君たちに協力をお願いしたくて来たんだ」
「協力?」
銀雪たちが首を傾げる。
雷音は、これまでの経緯を簡潔に語った。
――アカデミア学園との対抗戦に勝てなければ、ミリルとの婚約は破棄されてしまう。
しかも相手の代表・リーン・アシュレイは規格外の実力者で、ドアーダ学園の戦力では勝ち目がない。
そこで、アルテミス女学園に協力を求めに来た……というわけだ。
銀雪は腕を組み、しばし目を伏せる。
やがて、静かに問いかけた。
「つまり……次の対抗戦に勝たなきゃ、ミリルさんとの婚約が終わってしまう。
それで、私たちに力を貸してほしい――そういうことですわね?」
「……ああ」
雷音が頷くと、銀雪はふっと微笑んだ。
「ええ、いいですわよ〜♪」
「……え? いいの?」
あっさりとした返事に拍子抜けする三人。
だが、すぐに銀雪のトーンが変わる。
「ただし、条件がございますの」
一瞬で空気が変わった。
雷音の背筋に緊張が走る。
「……条件って、なんだ?」
銀雪の隣で、鉄玄が真剣な眼差しを向けてくる。
「最近、私たちの周囲で妙な事件が続いているんです。
学園対抗戦の代表選手ばかりが、何者かに襲われかけているんですの」
「今のところ警察沙汰にはしていませんが……これは偶然とは思えません」
銀雪はカップを置き、表情を引き締めた。
「対抗戦までの間……私たちのアルテミス女学園の護衛についていただけませんか?」
雷音たちは一瞬、息を呑む。
“護衛任務”という、予想外の提案。
だが、銀雪の眼差しには一切の冗談が含まれていなかった。
その瞳には、かすかな“怯え”さえ宿っているように見えた。
(――冗談じゃない。これは本当に、何かが起きてる)
雷音は無言で頷くと、拳を握りしめて言った。
「……分かった。引き受けるよ」
そう答える声に、覚悟の色がにじんでいた。




