乂阿戦記5 プロローグ 変身ヒーローの勇者様と歌って戦う魔法少女は女学生誘拐事件を調査する
はじめまして!作者のGoldjです!
この物語は、
勇者✖魔法少女✖スーパーロボット✖邪神✖学園✖ヒーロー✖ギャグ✖バトル…
とにかく全部乗せの異世界ファンタジー!
読んでるうちに、
「あれ?これ熱くない?」「このキャラ好きかも?」「展開読めない!」
となってくれたら最高です。
書き溜めは125万文字以上! 続きもたっぷりあります。
良ければブックマークして、追っかけてくださいね
第五部
プロローグ
「うわぁあああっ!」
ミリルに「浮気者!」と叫ばれ、包丁を振りかざされて――そんな悪夢から雷音は目を覚ました。
「……ったく、なんちゅー夢だよ……」
ベッドの上でため息をつく。自分の名前は乂雷音。ドアーダ魔法学園中等部一年生。最近、妙に生々しい夢ばかり見る。
「あーもう……ミリル、マジで夢の中くらい勘弁してくれよな」
そうつぶやいて、雷音はいつも通りの朝を始めるのだった――。
家の前にはバス停があり、そこからバスに乗って通学している。
「お、雷音おはよう」
「ん? ああ、おはよう」
そこで後ろから声を掛けられて振り返った。
そこには俺と同じ制服を着た男子が立っている。
「お前またギリギリまで寝てただろ?」
「いやー悪い悪い。昨日遅くまでゲームしててさ」
「まったく……どうせ夜中までエロ動画とか見てたんじゃないのか?」
「ばっか! そんなんじゃねーよ!」
こいつは俺の魂の双子の『龍獅鳳』だ。
入学前からの冒険仲間で家が近所ということもありずっと一緒に通学してる。
背が高くイケメンでスポーツ万能、勉強もそこそこできるというまさに完璧超人だ。
まぁ、俺と容姿が全く同じだから当然なんだけどな(ドヤ顔)
俺とは全く同じにして真逆のコインの裏表の存在だよな……。
「じゃあなんのゲームやってたんだよ?」
「エロゲー」
「ぶふぅっ!?」
思わず噴き出してしまった。
「げほっごほ……」
「おいおい大丈夫か?ジョークを間に受けるなよ?」
獅鳳は心配そうに声をかけてくる雷音に軽く手を振りながら、口の中の唾を飲み込む。
「あ、当たり前だろ?ね、念の為聞くけど本当にジョークだよね?エロゲーは18歳になってからだよ?」
「エロゲーじゃねーよ、ドラマティックなギャルゲーだよ。主人公とメインヒロイン2人を中心にした三角関係のドラマで、主人公が振った相手に刺されて生首になったり、ヒロインAが振られて屋上から飛び降りたり、主人公刺したヒロインBがヒロインAに首掻っ切られて殺されたり凄いんだこれが!」
「ちょ!それ明らかに18未満がやっていいゲームじゃないよ!!」
「あ、やっぱ獅鳳もそう思う?これアキンドのオススメなんだけど、ハマったら夢見が悪くてさー、刃物持ったミリルに追いかけられる夢見ちゃったよ。あ、でも今度一緒に俺んちでゲームプレイしようぜ?」
「や、やだよ!雷音の家には雷華ちゃんがいるじゃん!雷華ちゃんにギャルゲープレイしてるところ見られるのはちょっと……恥ずかしいよ……」
「……そうか。じゃあ仕方ないな」
雷音は残念そうな顔を浮かべながらゲームの話はこれでおしまいにする。
「そうだ!今度の祝勝会お前ももちろん参加するよな?ルシルが主役なんだぜ!」
「ルシル奪還作戦成功の祝勝会だろ?もちろん参加するよ!ミスティルさんがおごってくれるから、豪華なご馳走食べ放題じゃん!絶対行くっての!」
「よし決まりだな。それじゃあ俺は放課後買い出しに行ってくるわ。主役のルシルに何かプレゼント買ってやろうぜ。何がいいと思う?」
「うーんそうだな……女の子への贈り物ならアクセサリーとか化粧品かな」
「なるほどなー了解っと」
2人は雑談をしながら歩いているうちに学校の校門が見えてきたのでそのまま入っていった……。
(あぁそうそう主水先生から預かってたルシルのポエム帳も返してやらないとな。2〜3ページほど読んじゃったけど、怒ったりしないよな?)
午後、雷音は聖剣ラ・ピュセルを抜刀したルシルに追いかけ回されていた。
「うあーーん!雷音さんどうして私のポエム帳を読んだりしたんですか!?
もう恥ずかしくて死にたくなりますよぉ〜!!」
いやなんで読んだだけでそんな恥ずかしがるのこの人!!??
後から剣を振り回しながらずっと追いかけてきてるし怖いんですけど!!??
もう泣きそうなんですけど!!!???
なんで俺がこんな目に遭わないといけねーんだよ畜生ぉぉぉぉぉ!!!!!! 数分後、ようやく気が済んだのかルシルは剣を納めて落ち着いたようだった。
そして泣きながらこんなことを言ってきたのだ。
「私なんか生きててもしょうがないです……死ぬべきなんです……」
ああなんて頭がかわいそうな子なんだこの人は……。
よしこうなったらあの手を使ってみようじゃないか……!
ふふふふふ……!!
「悪かったよルシル。実は今日の祝勝会でお前にささやかなプレゼントを買うつもりいたんだけど、どうだ放課後一緒にそのプレゼントを選ばないか?お前だってサプライズでいきなり当たりかハズレかわからないプレゼントもらうより、選んで買うプレゼントの方が嬉しいだろ?」
するとどうだろう?彼女は目を輝かせてこう言ったのだ!!!
「はい♡喜んで♡」
ふははは!かかったなぁ!!
チョロい!
計画通りだぜ☆ 〜〜〜〜〜〜
というわけで俺たちは今街に来ていた。
とりあえず今日はルシルとゆっくりプレゼント選びをできる……かと思ったのだが、面倒臭いオマケがついてきた。
ルシルの親代わりの師匠織音主水先生だ。
『放課後に男女が一緒に街にくり出すなどけしからん! 間違いがおこらないよう。俺が監視する!』と言って俺たちに張り付いてきている。
うーむ、この親バカ……
今はちょうど夕方なので夜までに何かいい物が見つかるといいのだが……
「さて、まずは何から探そうかな〜」
そう言いながら周囲を見渡すとたくさんの店が目に入った。
その中でも特に目を引いたのは宝石屋だった。
どうやら女性向けの商品を多く取り扱っているらしく、店内にはキラキラと輝く装飾品がたくさん並んでいる。
その中から俺は一つのペンダントに目をつけた。
それは綺麗な青い石のついたシンプルなデザインだったが、はっきり言って学生が買うようなものではない。
(うーんさすがにこれは高すぎるかな……?)
そんなことを考えているうちに織音先生が声をかけてきた。
「どうした雷音?」
「……いえ別になんでもないですよ」
そう言うと彼は俺の視線の先にあるものに気付き納得したようにうなずくと言った。
「……なるほどなそういうことか……」
……なんだか嫌な予感しかしないのだけど気のせいだろうか……?
そんなこんなでしばらく歩いている内にあっという間に時間は過ぎていくのだった……。
2人が去った後のデパートにて……
-----------バァン!!-------
3人の女生徒が勢いよく雷音のそばに近づいてきたかと思うと、彼女たちは口々に叫んだのである……!!!
「ちょっとどういうことなのだああああああ!?雷音、なんでルシルと一緒にお買い物してるのだああああ!??」
なんと二つ年下の婚約者ミリルがプリプリと怒って雷音に詰め寄って来た。
「憤慨……まさかあの二人付き合ってるんじゃ……?」
ジトーとした目つきで白水晶が雷音を睨んでる。
その言葉を聞いたもう一人の同行者も騒ぎ始めた。
「嘘じゃろぉおおお!?ありえないぞ!!ワシの可愛いい妹を差し置いて浮気するとは!!これだから乂族の男は信用ならならんのじゃ!!」
なんと最後の一人はミリルの姉、異世界スラルの盟主国アシュレイ族の第一王女ミレニア・アシュレイさんだった。
彼女はミリルが大人に成長したような容姿をしていて、思わず雷音も『わ、ミリルのお姉さん相変わらず美人!』となるほどの美貌の持ち主だ。
「え?あ、いや、ミレニア義姉さん、誤解ッス!!ルシルとはそんな関係じゃないですって!?」
雷音は必死に弁明するがミリル達は聞く耳を持ってくれないようだ……。
なんでこんなことになってしまったのだろう……?
そう思いながらも雷音は必死で説明を続けるのだった……。
「はぁ、疲れたぁ〜……」
ようやく帰宅した雷音はベッドに倒れ込みながらため息をついた。
今日は本当に色々なことがあった気がする。
まあ一番印象に残ったのはやはり織音先生だろうなぁと思うわけだが……。
それにしても今日のことは忘れられないだろうなと思った。
なにしろあの後、織音先生に散々説教されたのだから……。
曰く、『そもそもお前は婚約者がいるのに、気軽に他の女をデートに誘ったりしたら、そら相手は怒って当たり前だろ?つーかうちのルシルちゃんに変な色目使ったら先生承知しませんよ!?』とか親バカ丸出しの説教を喰らってしまった。
ほんとに友達としてルシルの無事を祝いたかっただけなのに〜!
と思いつつも、やっぱり脇が悪いのは自分なので黙って聞いておくことにしたのだ。
だが、やはり釈然としないところがあったのは確かだった。
しかし冷静に考えるとミリルからすれば確かに軽率な行動であったのは間違いないわけで、そこは反省すべきところだとは思う。
そんなわけで、さすがに悪いことをしたという気持ちはあったので素直に謝罪することにした雷音なのであったが、肝心のミリルはと言うと全然納得してない様子だったらしく、白水晶に聞いたら帰ってからもずっと拗ねてしまっているらしい。
(明日あいつに何かプレゼントでも買ってやろうかなぁ?あぁ、でもこのことがバレたらクラスのみんながまた俺のことをロリコンだとか言って冷やかすんだろうなぁ……)
そんなことを考えると憂鬱になってしまうのだが、それでも雷音は一生懸命考えることにするのであった……。
翌朝、登校した雷音にミリルが駆け寄ってきた。
「た、た、た、大変なのだ雷音! このままだと……私たちの婚約が破棄されてしまうのだぁああ!!」
「……はいぃぃぃぃ!?」
いきなり泣きついてきたミリルに、雷音は目を白黒させる。
聞けば、昨日の“浮気現場”に激怒したミレニア姉が、一族の父トグリルと神子リーンに直訴。婚約を白紙に戻すよう正式に要求したという。
雷音は呆然としたまま、ただ一言――
「……俺、そんなつもりじゃなかったのに……」
少年の軽率な一歩が、やがて世界を揺るがす波乱の始まりとなるとは、この時まだ誰も知らなかった。




