乂阿戦記4 終章 黙示録の赤い竜と滅びの歌 -26 魔王戦艦リヴァイアサンvs女神の船アルゴーユグドシラル号
それは戦場にはおよそ似つかわしくない煌びやかな光景。
神樹リトル・ユグドラシルの上に出来た円形魔法陣のステージに12人の歌姫が立つ。
赤衣装の乂雷華、青衣装の狗鬼絵里洲、橙色衣装のスフィンクス・アルテマレーザー 、白衣装の白水晶、黄色衣装のエドナ・ソウル、緑衣装のミリル・アシュレイ、黄緑衣装のセレスティア・ヴィーナス、水色衣装のミスティル・クロケル、銀色衣装のネロ・バーストエラー、紫衣装のブリュンヒルデ・ヴァルキュリア、黒衣装の今宵鵺、そして最後に桜色衣装の乂神羅!
戦場の喧騒とは裏腹に、それはまるで“終焉に捧げる祈りの陣形”であった。
まず最初に動いたのはやはり戦艦アルゴーだった。
副砲である魔導砲を放ち牽制をする作戦のようだ。
ドゴォーン!!という轟音と共に発射された副砲は見事に命中したのだが、効き目はあまりなかったようだ。
どうやらダメージはないらしい。
それどころか逆効果だったようだ。
ルキフグスはその巨体からは想像できないほど俊敏な動きで回避行動を取り始めたのである。
まるで本物のドラゴンのように飛び回る姿は圧巻としか言いようがないほどであった。
更に口から炎を吐き出してきたので、こちらは散開して避けることにした。
「どうする?主砲を使うか?」
砲術長アキンドの問いに兵器長キースは答える。
「いや、相手は素早いし主砲や波動砲は、ここぞと言う時まで取っておこうぜ!!」
そう、アルゴー号は主砲としてプラズマ荷電粒子砲を搭載しているが、これは機関部に負担が大きく連射は不可能。
なので実質的には主武器ではない。
「うん、主砲は機関部に負担が大きく連射は出来ないしな!」
機関長の龍獅鳳が説明する。
「撃てるのは3分に一回か二回、後は福砲その他に頼らざるを得ないな!砲身の冷却が間に合わないとオーバーヒートするから、ここぞというときの切り札に使うべきだ」
「分かった、じゃあ俺が副砲で足止めを……」
そこで言葉を区切るキースだが……次の瞬間には叫んでいた……。
『ブレスがくるぞぉぉおお!!』
その叫び声と同時にルキフグスがドラゴンブレスを吹き放った!
しかも強力なものだ……!
しかし……その時であった……!!
ズガァアアアン!!!
一体の機械神が放った重力魔法がブレス攻撃を打ち消した。
凄まじい爆発音と共に爆煙が舞う中現れたのは…………なんと!?
巨大なロボットのようなものだった……。
一体誰が操縦しているのだろうか……?よく見ると操縦席らしきものが見えるではないか??
まさかとは思うがアレに乗っているのは…………???
やはりそうだっ!!
その正体は戦艦アルゴー号のオーナー、ゼロ・カリオン(乂阿門)と紅茜が乗る機械神アモン・サーガであった。
彼は操縦桿を握りしめると叫んだ。
「こちらアモン・サーガ機! 機械神で出撃できる奴は出撃してくれ! 人選はプロフェッサー・タッドに委ねる!」
「了解した!」
タットの指示の下、出撃できる機械神数体が飛び出した。
「オノレこしゃくな!」
ルキフグスが対抗して巨大悪魔を召喚する呪文を唱える。
「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり。影より蘇よれ、冥界より起き上がれ。吾の呼び声を聞き、我前に現れろ。我が命、汝の契約となせん!」
20メートル級の巨大悪魔達が次々と召喚される。
封印が弱まりつつあるコキュートスの氷から、悪魔たちが次々と氷の封印を打ち破り、召喚に応じているのだ。
だが彼らもまた本来の契約者大魔王ルシフェルを失い不完全体となっている存在たちだ。
(本来の力を取り戻す為にも、奴ら魔法少女達を喰らわねばならぬ!)
そしてルキフグスはその巨体を揺らしながら、敵陣アルゴー号に向けて前進し始めたのだった。
一方その頃、アルゴー号の他の者達もそれぞれ戦闘準備に入っていた。
狗鬼漢児と鮫島アクアが乗るアーレスタロス機
レッドとフレアが乗るロート・ジークフリード機
アン・テイルと迦楼羅スモモが乗るマルコシアス機
乂羅漢と乂羅刹が乗るケルビムべロス機
キラグンター・ドラゴニアとティンク・ヴェルが乗るスリーピングシープ機の5体が出撃したのだった。
アモン機は魔槍を構えて戦艦体ルキフグスに斬りかかった。
「うおおおおお!!」
「甘いわぁあああ!!!」
ガキンッ!
なんと戦艦体ルキフグスは人型に変形し右手の装甲でアモン機の攻撃を防ぐ!
ルキフグスの頭部にはヤギの角が生えていた。
その変形はどこか不完全で、不気味な“神と獣の継ぎ接ぎ”のようでもあった。
彼はニヤリと笑うと言った。
「くっく……なかなかやるのう強欲の魔王……!!」
「ち、化け物め!」
続いてアモン機が蹴りを放つがこれも防がれてしまう。
だがその瞬間、背後から別の機体が現れルキフグスを銃撃する!
ドガッ!バキッ!グシャッ!
『ぐぁあああ!!』
それはブルーとグリーンの2体のマシン、アーレスタロス機とスリーピングシープ機だった。
「ふ、今のはどうかな?」
「おいおい、俺たちの事も忘れるんじゃねぇぞぉ?」
2人はそれぞれの武器を構えると再び攻撃を仕掛けた。
ガギィン!!ズバッ!!
「ちっ……!」
「はぁーー!!!」
ブォンッ!!!
ルキフグスは背中から無数の触手を生やして振り回してくる。
「うわっ!?」
「おっとっ!?危ねぇじゃねぇか!!」
間一髪で避ける2人。
すると今度は後ろから巨大な影が迫ってきていた。
「グルルルァアアアアアア!!!!」
「おわっ!?」
現れたのは20メートル急デーモンの群れであった。
彼らは口から炎を吐きながら襲い掛かってくる。
「くそったれぇえええ!!」
「しゃらくせぇえええ!!」
アモン機とアーレスタロス機は次々とデーモンを倒していく。
その様子を見ていたティンクは呟いた。
「やれやれ……みんな張り切っちゃってまぁ……」
彼女はため息をつきつつ魔法陣を展開するとそこから光の矢を放った。
「くらいなさい♪」
ヒュンッ!シュバババッ!! 放たれた光の矢は数十本に分裂し、敵を次々と貫いていく。
更に別の場所でも激しい戦闘が行われていた。
「うらぁああああ!!」
「おらぁあああああああ!!」
「うりゃあああ!!」
ロート・ジークフリード機が愛剣バルムンクを閃かせ、ケルビムべロス機が左右の腕から生えた鉤爪で敵を裂く。
マルコキアス機が空から炎の氷柱を降り注ぐ。
現在召喚されている悪魔は上級の大悪魔ばかり
まだ未熟な雷音や神羅達では手に余る相手ばかり
武仙級の機械神使いである彼らでなければ対処できなかっただろう。
だから雷音達は戦艦アルゴー号で力を合わせて戦う。
「先生、今です!友軍機が敵を牽制してくれているうちに、本艦は人型変形をしましょう!」
タットはオームの提案を即座に承認した。
「対邪神用攻撃機関──始動! 対神破魔術式、展開せよッ!!」
一斉に動き出すブリッジクルー。艦内警報が唸り、モニターにはシステムコードが次々と表示されていく。
『対神破魔術式“アルゴー・ユグドラシル”展開開始──』
巨大な戦艦アルゴー号が、音を立てて変形を始めた。
巨大な艦首が割れ、装甲が展開。艦体各部から関節が露出し、艦橋が頭部ユニットへと変貌する。
それはまさに神話の巨人のごとき姿──
全長三百メートル超の超巨体!戦艦が、人型ロボへと変わる!!
戦艦は戦艦のままで終わらない。
この世界に抗う最後の希望、その名が──アルゴー。
その姿はまさに圧巻であり、神々しき威光を放っていた……!
その姿に、戦場の者たちは“まだ終わっていない”という希望を見た──。
「くっ……これがアルゴー号の……真の姿ですか……!」
ルキフグスが不快な歯軋りし音をたてる。
敵味方を問わず、戦場の全員がその姿に一瞬、息を呑む。
だが、その感傷に浸る暇はない。さらなる“切り札”が、今放たれんとしていた。
人型となったアルゴー号の右腕が、ギギギと唸りながら砲身へと変形する。
そこから現れたのは、桁違いの威圧感を放つ巨大砲──
“プラズマ荷電粒子砲”、発射準備完了!!
「照準、補正完了ッ!」
「撃てぇぇぇえええええええ!!」
轟音と共に、超高熱のビームが空間を引き裂いた。
一撃。
それだけで──二十メートル級の悪魔たち、数百体が音もなく蒸発した。
空間が震える。
熱風が渦を巻く。
ただの武器ではない。“神殺しの閃光”が、戦場を塗り替えたのだ。
「きいいいい!!ルシフェル様を、ルシフェル様を返しなさいいいいいい!!」
300メートル級の戦艦人型ルキフグスが、金切り声をあげながらアルゴー号に襲いかかる。
その全身から、ミサイル、レーザー砲、機関砲──ありとあらゆる火力を叩き込んでくる様は、まさに“憤怒の魔王”の異名にふさわしい。
いまや魔王戦艦リヴァイアサンは、まるで理性を失った神の断末魔のように、火力を無差別に吐き散らす“暴走戦艦”だ──
「うお!?あの野郎、めちゃくちゃだ!!」
「何をあんなに焦ってやがる?」
アモン機から阿門の冷静な声が返ってくる。
「おそらく奴は俺の親父、覇王乂阿烈の乱入を恐れてるんだ。覇王乂阿烈がこの戦闘に割って入ってきたらワンパンで終わるからな……」
その回答にテイルが尋ねる。
「なるほどな。で阿烈館長はこの戦いに引き続き介入してきたそうなのかな?」
阿門は首を横に振り応える。
「残念ながらその可能性はなくなった。と言うのも蟷螂闇輝…いや、真憤怒の大魔王シャイターンの介入があった。ここ魔界は奴のテリトリーだ。奴がわざわざ姿を現したと言う事は、これ以上魔界で暴れるなら、自分も黙ってはいないと言う無言のアピールなんだろう。めったなことで主神クラスの激突は発生させるべきじゃない。親父の助力はあてにしないほうがいい」
「了解した」
テイルはため息をついて返答した。
(まさかここまで来てそんな展開になるとはなぁ……まあ仕方ないさ……)
そう心の中で呟くのだった……。
そんなやり取りの間にも事態は大きく動いている。
ドガアアアアアンン!!!
ゴオオオオオオオオオオン!
激しい爆音と共に爆発が巻き起こり、大量の煙が上がる中――300メートル級の巨大カラクリ達が殴り合う。
まるでSF映画のワンシーンのような光景が繰り広げられているではないか……。
戦況はさらに激化する。
ドガアアアアアアンッ!!!
ゴオオオオオオンッ!!!
──火花が散る。煙が巻く。
爆発音とともに、巨体同士の拳が交差する!
「おらぁあああ!!!」
紅蓮の拳が唸りを上げた。
突貫したのは、ロート・ジークフリード機。
ビーストモード発動──『ロートドラッヘファウスト』!!!
一撃でルキフグスを吹き飛ばす!
「ぐはっ……!?」
大地に叩きつけられるルキフグス。
すぐに起き上がるが──その眼前に、アーレスタロス機が突き立つ。
「喰らえッ! 超鉄拳!!」
「くそがぁあああ!!!」
凄まじい拳の一撃が炸裂、ルキフグスの体勢を大きく崩す。
「奥義──《猛虎彗星脚》!!」
ケルビムべロス機が追撃の飛び蹴りを叩き込む!
「ぐうぅっ!!」
さらに──
「ほうぉぉぉぉチャチャチャチャ……ほわぁりゃあっ!!」
マルコキアス機が怒涛の連撃を叩き込む!
──もはや、圧倒されるばかりのルキフグス。
なんとか距離を取ろうと後退を図るが──
「逃さぬでござる!!」
アモン機、空中から急降下!
『断空・阿修羅一閃』!!
副操縦士紅茜の技だ。
ズシャァアアアアンッ!!!
着地と同時に巨大な衝撃波が走る。
ルキフグスはかろうじて直撃を避けたが、装甲の一部を斬り裂かれていた。
巨神の威容に亀裂が走る。ルキフグス、その不滅と思われた肉体に“終わり”の兆しが現れた。
彼が頼みとした大悪魔の軍勢
その動きは精彩に欠いていた。
「ふん……ルキフグスの召喚した悪魔どもは強力だが、指揮系統が壊滅してる」
「阿烈館長がスタン将軍を潰してくれたおかげだ。奴が軍勢を指揮してたら……我々は地獄を見ていた」
阿門が通信を飛ばす。
「タット艦長! アルゴー号の反物質エネルギー、チャージは完了したか!?」
即座に、戦艦アルゴー号からの返答が響く。
「こちらアルゴー号、準備オッケー!」
戦局は、ついに決着の局面を迎えようとしていた──!
ルキフグスが体勢を崩してる隙に雷音達は一気に勝負を決めることにした!
https://www.facebook.com/reel/519588847590572/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0
↑イメージリール動画




