乂阿戦記4 終章 黙示録の赤い竜と滅びの歌 -21 怒れる大魔王ルシフェル
「ヴァルシア、我らも勇魔共鳴で対処するぞ。姪のルシルを助けたいんだろ?」
その男、魔王クロウ・アシュタロスの申し出にヴァルシアは満面の笑みで頷く。
すると二人は同時に呪文を唱え始めた!
……その瞬間、辺り一面を覆い尽くすほどの魔力の光が溢れ出し一瞬にして周囲を飲み込んでいったのだった……!
2人の放つ圧倒的なまでのエネルギーを前に戦慄を覚える者達がいたようだが無理もないことだろう──
それを見て羅刹も羅漢に勇魔共鳴を申し出る。
「兄上、我らも勇魔共鳴を果たしましょう!ルシルをルシフェルから取り戻すには兄上の不殺破心拳が必須です!私が兄上の力を底上げいたします!!さぁ行きましょう──」
大魔王ルシフェルは苛立っていた。
元来主神級の力を持つ自分がその力を半分ほどしか使えていない。
さらに敵が予想以上に手強い。
特に鳳天と魔王アシュタロスが厄介だった。
(おのれぇぇぇえ……!!)
内心で悪態を吐きながらも冷静に状況を見極めようとする彼女だったが、ここで思わぬ事態が発生した。
(やめてください。もうこれ以上私の仲間を傷つけないでください!!)
頭の中に悲痛な声が響く。
おそらくはルシル
この体の本来の持ち主
(引っ込んでおれ我が孫よ!私は悪魔の軍勢を復活させ、天上の神々を滅ぼさねばならないのだ!)
「邪影剣デストロイセイバーーー!!」
ルシフェルが必殺奥義を放つ。
狙いはハッキング作業に専念している鳳博らか弱い人間達
必然HEROたるアーレスタロス、ロート・ジークフリード、ナイトアーサーらが肉盾となって彼らを守る!
「ぐわあああぁああ!!!」
「ぎゃああああああっ!!!」
しかし強力な攻撃の前に彼らはあっという間に吹き飛ばされてしまう!
その光景を見たルシルは思わず叫んでしまった。
(みんなー!!??)
だがHEROたちは傷ついた体をムチ打って目の前の敵に集中する。
相手は自分たちよりも遥かに格上の相手だ。
油断すれば一瞬で殺されてしまうだろう。
それでももし万が一にでも自分達が負けた場合、今度は仲間達の身が危ないのだから……。
だが鳳天は冷静に三人のHEROに一旦後ろに下がり回復魔法を受けるよう指示を出す。
「ここは俺と羅漢とクロウで対処するのが上策だ」
その言葉に納得し三人は後方へと下がっていく。
そしてその様子を確認した後、改めて眼前の敵に視線を向けた。
対する敵はこちらを見ながら嘲笑っているようだった。
「ふふふっ、随分と情けない姿になったものだなぁお前たちぃ??」
そんな挑発じみた言葉を投げかけてくる相手に鳳天は毅然とした態度で言い返す。
「ふん、ピーピー喚くんじゃねーババア……てめえみたいな生悪女に頭悪いセリフはかれたら体を貸してるルシルが可哀想だろうが?」
その言葉を聞いた途端、敵の表情が変わる。
明らかに不快そうな表情を見せたかと思えば吐き捨てるように言ったのだった。
「ほざけ小僧がぁ!貴様こそ我を相手にたった三人で挑もうなどと片腹痛いわッ!!!」
「婆さんは算数もできないのか?勇魔をしてるから、実質5人だ。いや、お前の中のルシルも手伝ってくれてるから6人だ!!」
その発言を聞いてさらに顔を歪めると、怒りのままに斬りかかってくる!
それに対してこちらも全力で迎え撃つべく拳を握りしめた時だった────────突然後ろから声が聞こえた気がしたので後ろを振り向くとそこには織音主水の姿があったではないか!?
(えっ……?なんであんたがここにいるの??)
驚くヴァルシア
だが、そんな事は構わず織音主水はルシルに向かって叫ぶ。
「おいコラ、ルシル!いつまで、居眠りこいてヒーローをサボってやがる!先生はお前をそんな風に育てた覚えは無いぞ!早く起きないと、お前が小学生の頃に書き貯めたお前の恥ずかしいポエムをここにいるみんなに読み聞かせるぞおおお!!!」
大魔王ルシフェルは織音主水を嘲り笑う。
「馬鹿め!何を言い出すかと思えば…、そんな手でこの娘が目覚めれば苦労は無……」
突如ルシフェルの脳内にとんでもない大音量の悲鳴がこだました。
(ええええっっ!?何それ聞いてないんですけどぉぉぉぉぉ!!!ちょっとぉおおおお!!やめてぇええええええ!!!主水先生ぇええええええ!!!)
「がああああ?な?な!な?なにい!?」
それを聞いて顔を青ざめさせながら冷や汗を流す悪魔の王の姿はなんとも滑稽であった。
(うわー、おばあちゃん返して! 早く私の体返して! 私の秘密がみんなにバレちゃううう!!)
「ば、バカな……!? こんな……こんなもので……私の意識が!?」
両手で頭を抑え、青い顔でよろめく大魔王ルシフェルに対してニヤリと笑みを浮かべると彼は言うのである。
「……ほうら起きやがったぜ? 覚えとけばばあ! ルシルは真面目だが割とアホの子でポンコツなんだ!!」
と言って勝ち誇ったように高笑いする姿はとてもカッコよかったのだが……最後の一言だけは余計だと思う……。
いやまぁ確かにその通りなんですけどね~…………なんかムカつくわぁ~!やっぱりセンセーなんか嫌いです!…
「ぬうう!小賢しいぞ人間!!我を侮辱しおって!」
怒りに任せて振るった拳が地面を砕くと辺りに土煙が立ち込める!
次の瞬間には地面を突き破って巨大な触手のようなものが飛び出してきた!
群がる触手は、まるで無数の蛇──いや、意思を持つ生物のように蠢いていた。
それらは一斉に襲いかかってきて、次々と生徒たちに襲い掛かっていく!
「くっ……!こんなもの……!」
皆が果敢に立ち向かうも次から次へと襲いかかる触手に対応出来ず苦戦する中、唯一その猛攻を切り抜けたのは二人の生徒だけだった!
一人は狗鬼漢児ことアーレスタロス!
もう1人はレッドことロート・ジークフリードである!
2人ともそれぞれ得意な武器を使って攻撃を回避しながら反撃に転じていくその姿はまさに圧巻と呼ぶに相応しい光景だった!
「ヴァルシア、魔王の力を発動する。異論はないな?」
「ん❤︎ 了解だよアシュ君」
ヴァルシアが微笑み後ろからアシュタロスに抱きつく。
「──この戦いに、終止符を打つ。それが……“漆黒の魔王”の役割だ」
アシュタロスは変身の口上を述べる。
すると彼の体が光に包まれると同時にその姿を変え始めたのだ!
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