乂阿戦記4 終章 黙示録の赤い竜と滅びの歌 -16 世界最強の覇王vs魔界最強の大魔王
一方その頃、今や残る頭が1つだけになった黙示録の竜の隣にて、対峙する2つの人影があった。
1人は覇王乂阿烈
もう1人は蟷螂の面相のただならぬ雰囲気を持った黒髪長髪の初老の男
男は11人委員会第10席"蟷螂闇輝"王秀明であった。
2人が睨み合う中、先に口を開いたのは王の方だった。
「まさか、スタンが…、娘婿がここまで追い詰められることになるとは思わなんだ……」
王は静かに呟いた。
そう、スタンピートの亡き妻ルナ
ルナは王秀明の娘であった。
すると、それに対して阿烈は鼻を鳴らすと言った。
「ふん、スタンの経緯は聞いている。おしきことよ。叶うなら奴を将軍として、我が軍に引き入れたかった。だが仕方あるまいて、こうやって敵対したからには容赦はせん。ジュエルウィッチを戦争や政治のダシに使おうと言うやつは生かしておけぬのだ!」
阿烈が答えると、今度は逆に王秀明に問うた。
「それにしても、お前が何故このような場所に?」
王はその言葉にニヤリと笑うと答えた。
「知れたことだ。もうじき戦争が始まる。昔使っていた鎧を久々に袖に通そうと思ってな……」
それを聞いた瞬間、阿烈の目の色が変わった!
鋭い眼光を放つ瞳には明らかに怒りの色が浮かんでいる。
「悪魔王に戻るつもりか王秀明?いや、憤怒の魔王シャイターン……」
「ふふふ、懐かしい呼び名だな……武道家として修行をこなしている間は使うことのなかった名前だ」
王が静かに呟くと、次の瞬間目にも留まらぬ速さで拳を抜いた!!
「うおおおおおおっっっっ!!!!」
裂帛の気合いと共に振り下ろされる拳を阿烈も同じく拳で受け止める!
「ぐうぅ……!」
衝撃により地面に亀裂が走る!
「はははははっっっ!!!!相変わらずの怪力だなぁ……!」
笑いながら言う王に対して、阿烈の表情もまた笑っていた……!
「お前も老いてなお腕は衰えていないようだな!」
両者一歩も引かずに打ち合い続ける……!!
世界最強の覇王vs魔界最強の大魔王
それは荒野に轟く、死闘の咆哮
荒涼とした大地を舞台に、二人の男が拳を打ち合う。二人の拳が交錯するたびに、大地は裂け、空気が震えた。
修羅の覇王の渾身の一撃鏖殺拳が、悪魔王の鋭い蟷螂十段突きと激突する。
衝撃波が周囲を飲み込み、砂塵が舞い上がる。
二人の拳がぶつかり合うたびに、火花が散り、地響きが轟いた。
死を呼ぶ舞、そして閃光
悪魔王は、まるで蟷螂のようにしなやかに動き、阿烈の死角を突こうとする。
その身のこなしは、まるで死を呼ぶ舞のようだった。しかし、阿烈はそれを冷静に見切り、その攻撃をかわす。
そして、一瞬の隙をついて、剛拳を繰り出した。
百龍の如く飛び交う拳が悪魔王を襲い、彼は地面に叩きつけられた。
大魔王の咆哮が上がる。
しかし、悪魔王は諦めない。
彼は起き上がり、再び覇王に立ち向かう。
しばらく打ち合った後、互いに距離を取った2人だったが、これは本当にただの戯れに過ぎない。
なぜなら、両者共に殺気が無いからだ。まるで子供が遊んでいるかのような感覚に近いだろう。
しかし、それだけでこの空間を満たしている圧力は凄まじいものがある。
現に他の者達はこの空間に踏み入ることすらできずにいるのだから……
「ふむ、やはりお前は良い腕をしているな……久しぶりに楽しい時間を過ごせたわ」
満足げな表情で語る王に、阿烈は微笑みながら答えた。
「ふ、何をいうかと思えば、当然であろう!なにせ儂は修羅道より這い上がった存在なのだからなぁ。生き方に迷いなど一つも無い!」
その言葉を聞くと、王は再び笑みをこぼした。
「ふふふ、そうだったな。お前のような男がなぜ人間のままなのか不思議でならん」
そう言って、頭が1つだけになった黙示録の竜に向け手をかざした。
すると透明の冠を抱く龍の目に意識の光が灯る。
透明の冠が黄緑色に輝く。
黄緑の冠の龍は滑らかな動きで首のない頭部の焼き付けた後の部分を喰らい切った。
即座に6つの首が再生する。
その後7頭の黙示録の竜は見る間に小さくなって人型になった。
否、鎧になったと言う方が正しいか。
そう、王秀明と黙示録の竜の関係はアングとケイオステュポーンの関係と一緒だった。
人間体の武道を極める為に捨てた悪魔王としての本体、それが黙示録の竜だ。
そして今目の前にいる個体こそが王の真の姿であった。
その姿はまさに威風堂々たるもので、見ただけで分かる程の圧倒的な力を感じさせる威圧感を放っていた。
留守を任せるため適当に入れたルキフグスの人格とは明らかに格が違った。
黙示録の竜だった鎧は王秀明の影の中に引きずり込まれるように消えていく。
まるで古の神が、自らの神殿を畳むように。
「さて、鎧も回収したことだし帰らせてもらうとしよう」
王秀明は乂阿烈に背を向け歩き出す。
「待て、孫の行く末を見届けなくて良いのか?」
乂阿烈が空中戦艦リヴァイアサンのほうに目を向ける。
「ああ、ルシルのことか…、長女のヴァルシアもおるし心配いらん。あの子がうまくやってくれるさ。それに……」
そう言うと王はニヤリと笑う。
その顔には自信が溢れており、決して孫娘は負けることはないという強い意志を感じさせた。
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