乂阿戦記4 終章 黙示録の赤い竜と滅びの歌 -11 一撃鏖殺!
乂阿烈の絶望的戦闘力にスタンピートは驚愕すると同時に恐怖を覚えていた。
(主、主神級戦力の力……まさかここまでとはな……)
そう思いつつ彼は部下達に命令を下す。
すると周りに散らばっていた兵士達が一斉に集まり始めたではないか!
そして、リヴァイアサンに退避してきたネッソスとエンザに指令を下した。
「ネッソス、エンザ叔父貴、俺とアルカームとプレラーティで乂阿烈を引きつけ時間を稼ぐ。お前達は大魔王ヴァールシファー様をこの船にお呼びするのだ。そしてシークレットルームで滅びの歌を歌っていただくのだ!エンザの叔父貴、11体の影帽子の用意はできているか?破滅の歌を歌わせるための偽の魔法少女たちだ」
それを聞いたエンザは一瞬顔を歪めたがすぐに平静を取り戻す。
「ああ、大丈夫だよん。既に確保してあるぽん☆」
それを聞いて安心したのか、スタンピートは安堵の表情を浮かべつつ指示を続ける。
「よし!ネッソス、お前をリヴァイアサンの臨時艦長代行に任命する。エンザ叔父貴は滅びの歌を頼む!俺は単身で出撃する!はっきり言って俺とアルカームとプレラーティ以外じゃ、奴の前に立つことすらできないだろう……」
アルカームがスタンに尋ねる。
「スタン将軍、勝てる見込みは?」
スタンは武器を刃つき銃からサムライソード和泉守兼定に持ち替えアルカームに答えた。
「……正直言って、勝てる見込みなんてねえよ。だけどな……逃げたら、死なせた部下に申し訳が立たねえ。……もし俺が倒れたら──親父に、いや、“真狂王陛下”に……伝えてくれ」
スタンは艦に残す部下達をグルリと見回す。
「俺の戦いぶりが、少しでも笑えたなら──それで本望だってな」
「りょ、了解ですリーダー!!」
ネッソスがスタンピートに敬礼を取る。それを見て頷くと、すぐさま踵を返して走り出したのである。
向かう先は覇王乂阿烈が待つ地獄の戦場。
地面に降り立ちスタンピートを待ち構えている。
その姿はまさに武神と呼ぶに相応しい威容を誇っていた。
そんな姿に気圧されつつも覚悟を決めた顔でスタンピートは覇王に対峙する。
阿烈を取り囲むように右後ろにアルカームが、左後ろにプレラーティが立つ。
双方の間にはピリピリとした空気が漂い始める。
そんな中、先に動いたのはスタンピートの方であった。
「行くぞ!」
掛け声と共に一気に加速し覇王へと名刀和泉守兼定で斬りかかる。
しかしそんな攻撃を易々と受けるような相手ではなく、無造作に振った腕の一振りで吹き飛ばしてしまう。
「ぐっ……!!」
苦痛の声を漏らすも、何とか受け身をとって立ち上がるがその表情には焦りの色が見えていた。
だがそれを知って知らずか、今度は阿烈の方から攻撃を仕掛けてきた!
その攻撃は至ってシンプルであったが、その一撃一撃が必殺の威力を持っていたため防御するだけで精一杯の状況に陥ってしまう。
「殺ああああああ!!」と叫んだ直後、
プレラーティは舌なめずりをしながら、にやけた笑みで囁く。
「♠︎あ〜たまんないなぁ……殺し甲斐のある筋肉だ♣︎ 折れるかな、切れるかな……どうするぅ?」
「うおあああああ!!」と、鉤爪をしならせたアルカームが吼えた。
「乂阿烈〜! クトゥルフ戦争のとき宇宙の果てに吹っ飛ばされた借り返させてもらうぜ!!」
アルカームは鉤爪を、プレラーティーは大鎌をふるい、スタンピートはサムライソードをふるい攻撃する。
阿烈は3人の連携攻撃を紙一重で躱し続けながら、まるで何かのリズムを取るかのように鼻歌を歌い出した。
阿烈は三人の猛攻を紙一重で躱しながら、武を舞っていた。
それは──まるで生贄を捧げる奉納演武のようだった。
(リズムを取ってやがる……!?)
「ドゥン!タァン!ドゥン!タァン……一撃鏖殺…」
──大武神流・奥義【断神渦輪】!!
「ドゥリャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
それは拳ではなく内腕手刀
いや、もっとわかりやすく言えばウェスタンラリアット!
否、全てを裁く神なる手!!
「「「うげああああああああ!?」」」
乂阿烈の巨腕がスタンピート、アルカーム、プレラーティーの首をまとめて刈り取った。
その一撃で、3人はまるで木の葉のように吹き飛ばされ──
吹っ飛ぶ先は、黙示録の赤い竜の頭部──緑、橙、紫の冠を戴く三首だった。
「「「うああああああああああああああああああああああああ!!!」」」
三人の魔王が激突し、黙示録の竜の首が一気に3つ消し飛んだ!
「好機!!」
目端の効くオームがすぐさま黒炎魔法を唱え、首が再生しないように傷口を焼いた。
「あ、ああ……」
「き、きえる……消えてしまう……」
「私が…消えて…しまう……」
最後にそう言い残しルキフグスの気配はその場から消え去った。
吹っ飛ばされたスタンピート、アルカーム、プレラーティーの3人は瀕死の重症を負いピクピクと痙攣していた。
もう戦える状態ではないだろう。
アルゴー号及び機械神で出撃している勇者一同は覇王阿烈のあまりの強さにしばし放心していた。
しかし、敵のボス達のほとんどが倒されたことに気づき、一同皆歓声を上げた!
「やったぞ!俺達の勝利だ!!」
皆が喜び合っている中、唯一冷静な者がいた。
それは戦艦アルゴー号の参謀プロフェッサー・タットである。
「……まだです!まだ終わっていません!」
皆の歓声を制するように、タットが叫ぶ。
「“残心”を忘れてはいけません!ルシルさんが戻ってこない限り……これは“勝利”ではないのです!」
冷静だが、静かに燃えるタットの眼差しが、最後の戦いを予感させていた。
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