乂阿戦記4 終章 黙示録の赤い竜と滅びの歌 -6 叔母さんと5歳ショタの駆け落ちの記憶
「ねえ知ってる? 実はこの演目ね私が考えたんだよ~!どう?ビックリしたでしょ?龍龍月、ああ違う、今はヴァールシファーって言うべきかな?」
そう言って得意気に胸を張る彼女に対して呆気に取られてしまったもののすぐに気を取り直して問いかけた。
なぜこんなことをしたのかと尋ねると、予想外の答えが返ってきたため戸惑ってしまうことになるのだった……。
「全ては敬愛すべき我が全能神様の渇望を癒す為……ヒト種を次のステージに進化させる為……あの方を無限の孤独から解放させることが我が願い」
そんな支離滅裂なことを言い出したかと思えば今度は突然泣き出してしまう始末である……正直言って関わりたくないタイプだと直感的に悟った瞬間でもあった……。
あれ?
何かこの人もクトゥルフ戦争であった気がする?
というか1対1の激闘を繰り広げた覚えがある。
たしかナイア……
けど、今そんなことより情報が欲しいと考え直し、彼女を落ち着かせることに専念したのだ……!
それからしばらくの間説得を続けた結果ようやく落ち着きを取り戻してくれたようでホッと胸を撫下ろしていたところ突如場面が変わったかのように周りの景色が変わると同時に目の前に現れた人物を見て驚愕することとなった……!
なぜならそこにいたのは………
…………………えっ……??????
ヴァルシアさん?
目の前にいたのは私の叔母であるヴァルシア・エンジェルだった。
しかしその恰好はいつものような凛々しいものではなく何故かメイド服姿であった。
なんでこんなところにいるんだろうと考えているうちにいつの間にか距離を詰められていたらしく、わたしの隣にいた黒髪長髪の美少年に駆け寄り、そのまま抱きしめてしまったのだ。
突然のことで頭が追いつかずに混乱していたが、そこで初めて気づくこととなる。
彼女の身体が小刻みに震えているということに───!?
一体どうしたというのだろうかと思っていると、抱きしめる少年の耳元に囁やく言葉に耳を疑った……!!
「イドゥグ様!もうどこにも行かないでください……!このまま私と逃げましょう!王座も、お母上の命令も、仇討ちも何もかもすべて忘れ私と一緒に魔界の果てに逃げましょう!!」
なんて言いながら泣いてしまった。
どうすればいいのか分からないじゃないか!!??
困惑する私をよそに彼女は泣き続けるばかりで埒が明かないと思った私は仕方なく話を聞くことにしたのだが、その内容というのがあまりにも衝撃的過ぎたせいで頭の中が真っ白になってしまった程だ!
なんと今の私はルシルではなくリュエルだった。
クラスメイトの龍獅鳳君の亡くなった母親龍龍月
そして気づく、これは夢なのだと
いや、夢というよりは過去の緑のジュエルウィッチ達の記憶を追体験してると言うべきか……。
それもかなりリアルな感覚を伴っていてまるで現実の出来事のようだと思ってしまうほどだったのだ。
そんな中、ふと思い出した。
本来の私は今どうなってるのだろう?
早く自分自身の正気を取り戻し、仲間を、クラスのみんなを助けに行かなくてはいけない!
父スタンピートのテロリズムに学友達を巻き込ませてはいけない!!
そう思った瞬間に意識が覚醒し始めてきたのを感じたところで目が覚めたようだ…………良かったぁ〜!!!!! あぶなかったー!!!
もう少しで完全にあっち側の住人になるところだった!!!
危うく洗脳されるとこだった!!
よし、落ち着いたことだし状況確認しようかしらね。
まずは現在地の確認よね、ここはどこなのかを確認しないと始まらないわけだし!
えっと、現在位置は、
んんっんッッ?!
ちょっとまってぇえええええええええぇぇぇええっっっっっっ!
どうして私が世界最強の魔女羅刹さんと戦ってるんですかあああああ!?!??
(しかも機械神で!!しかもなんか私、体の自由が効かない!)
「グギャギャギャギャギャギャ!狂愛アアアアアアアア!!」
「フシュウウウウウウウウウウ!ルアアアアアアアアア!!」
羅刹操るケルビムべロスvsルシル操るラ・ルシファー
その激闘は
熾烈を極め、辺り一面を破壊し尽くしていく。
──まさに、魔界を滅ぼす悪夢の再演だった。
破壊の限りを尽くし、最強の魔女に喧嘩を売ってしまっている。
そんな光景を目の当たりにしたルシるは、体の自由が戻った時、自分は一体どうなってしまうのかと考えてしまい、恐怖のあまり泣きそうになっていた。
(あうう、タット先生、主水先生、鳳天さん助けて〜〜)
ああ、でも、もうこうなったら覚悟を決めるしかない!
そう、今の私には味方はいない!
頼れるのは自分だけなのだと思い知らされた気がしたのだ。
すると突然頭の中に声が聞こえてきたような気がした。
その声はとても優しくて慈愛に満ち溢れたものだった。
『ルシル!ルシル!!』
と言うような声が聞こえた瞬間、私の意識は再び暗闇へと沈んでいったのである……。
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↑イメージリール




