乂阿戦記4 終章 黙示録の赤い竜と滅びの歌 -5 歴代ヴァールシファーの記憶
異世界で目覚めたら、クラスメイトの親が殺し合いの劇を強要してました。
ブックマーク大歓迎!!
ここは、どこだろうか……。真っ白な空間が広がっている。
上も下もわからないような、そんな不思議な感覚に囚われていたその時、突如として声が聞こえてきたのである。
(あなたは選ばれたのです……)
……誰だ?
どこから聞こえてくるんだ……?
(あなたはこれから魔界へと旅立ちます)
……え?ちょ、ちょっと待ってください!いきなり何を言い出すんですか!それにここはどこです……?どうして私はこんなところにいるんです!?
(あなたには今から異世界に行ってもらうことになります)
そんな勝手なこと言われても困るんだけど!?
そもそもなんで私なんですか……!他にももっと適任者がいるんじゃないんですか!?例えばほら勇者とか……!
(それはあなたが最も相応しいと判断されたからです)
いやいやいやいや無理ですって絶対無理だってば!!!!
……こいつ、マジで聞いてない。
っていうかまずあなたは誰なんですか?!
なんか声的に女性っぽい気がするけど……。
とにかく、早くここから出してください!!
必死に訴えかけるものの相手には全く聞こえていないのか全く取り合ってくれない様子だった。
それどころかさらに話を進めてくる始末である。
いい加減我慢の限界を迎えつつあった私に構わず、謎の声はどんどんと言葉を紡いでいった……。
もう嫌だ耐えられない……!!
そう思い始めた頃のことだった。
突然目の前に現れた巨大な扉が開かれていくと同時に眩い光が差し込んできたかと思うと一人の人物が姿を現したのだった───。
******
「──ねぇ君、ちょっといいかな?」
声を掛けられ振り返るとそこには一人の男性が立っていた。
年齢は20代半ばといったところであろうか。
長身瘦軀という言葉がぴったり当てはまるような細身の身体つきをしている男性だった。
顔立ちは非常に整っており美形と言って差し支えないだろうと思われたのだがどこか胡散臭さを感じさせる雰囲気を纏っており妙な違和感を覚えさせられたのも事実であった。
──この人一体誰なのかしら……?
訝しむような視線を向ける私に対して彼はにっこりと微笑みかけてきたのである。
……気持ち悪い……。
って言うか私、この人と会ったことがあるような?
確かクトゥルフ戦争で暗躍した邪神ロキ……
でも戦場であった彼より年がいっている……
どちらにせよ正直言って苦手なタイプだ……
そう思いながら一歩後退ると、すかさず距離を詰められてしまったことでますます警戒心を強めることになったがそこで不意に彼の口から発せられた言葉に耳を疑った。
「君は今の生活に不満を感じていないかい?もし良かったら僕のところに来ないか……?」
「……えっ……?」
思わず間抜けな声が出てしまった私を他所に男性は続けるようにして言葉を発した。
「僕等は君を歓迎するよ……!さぁおいで……!ようこそ邪神軍へ!」
そう言って手を差し伸べられた瞬間、背筋に冷たいものが走るような感覚に襲われたため慌てて手を振り払った。
その瞬間、なぜかはわからないが頭の中に警鐘が鳴り響いているような気がしてならなかった。
──この男は、危険だ。
だがそれと同時に、目の前の男性のことが気になって仕方がなくなってきている自分に気づき始めていた。
まるで魅了の魔法にでもかけられたかのような気分だった。
不思議と不快感はなかったように思う。
むしろこのままついて行きたいと思う気持ちすらあったほどだ。
そのため無意識のうちに一歩踏み出そうとしたところでハッと我に返ったことで我に帰ることができたようだ。
危ないところだったわ……!
もう少しで洗脳されるところだったかも……!!
気をつけないと!
そう自分に言い聞かせることで何とか冷静さを保つことに成功した私は改めて目の前の男性を睨みつけることにした。
するとその視線に気付いた男性が苦笑いを浮かべながら謝罪してきたではないか。
「ごめんごめん驚かせちゃったみたいだね〜お詫びといっては何だけど今から面白いショーを見せてあげるよ!」
そう言われて興味を持ってしまった私が大人しく付いていくことにした結果
─そこは薄暗い劇場のような場所であり、座席は全て埋まっていたことからかなりの人気であることが窺えた。
舞台には絢爛な幕が降り、軽やかな音楽と共に照明が点いた。
一体何が見られるのだろうかと思いワクワクしながら待っている。
──その瞬間、私は目を疑った。
出てきたのは……クラスメイトたちだったのである!!
驚きのあまり声を上げそうになったところを隣の男に口を塞がれてしまいそのまま座らされてしまうことになったわけだがその間もずっと頭の中は混乱状態が続いていたことは言うまでもないだろう。なんでみんなが出てくるんだ……?
まさか誘拐された……!?
いやでもそんなはずはない……だってここにいるってことは少なくとも無事ってことだし??
じゃあ一体どういうことなんだろう??
理解が全く追いつかず困惑しているといつの間にか劇が始まっており内容は驚くべきものだった─────
それは彼らが演じる寸劇のようなものだったのだがその内容というのが何とも酷いものであり、見ているだけで不快になるようなものばかりだったために怒りを通り越して呆れ果ててしまっていたほどだった。
だってクラスメイト一人一人の親達が、王様の席を巡って争い合い、自分の子供達に殺し合いをさせる劇だったからだ。
さあ、愛しい我が子よ!
最後に残った子の親が王様になれる!
一族繁栄の為に魔法少女バトルロワイヤルを生き残るんだ!
という、理不尽極まりない内容だったからだ。
しかも全員が全員ノリノリで演じているものだから余計にタチが悪いというかなんというか……とりあえず言えることがあるとすれば1つだけだった──────親達は紛れもなく正気を失っているということである。
(どうしてこんなことに……)
嘆きながらもなんとかこの場を切り抜ける方法を考えるべく思考を巡らせていると、不意に後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには見知った顔があった為思わず安堵してしまったのだがよく見ると様子がおかしいことに気づき警戒していると、その人物はニヤリと笑いながらこう言ってきたのである────
「……やぁ、久しぶりだね」
声は懐かしい──でも、瞳が知らない。
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