乂阿戦記4 第六章 強欲の魔王アモンの娘 乂聖羅-21 ダークフレイムの正体!
強敵カルノフハートをしりぞけた鳳天は、連絡の途絶えたナイトアーサーの救援に駆けつけるべくダークフレイムの間に馳せ参じていた。
信じられないことにナイトアーサーはダークフレイムに敗れ拘束されていた。
鳳天は部屋に入るなり一目でダークフレイムの力量を察して警戒した。
ダークフレイムも同じようだった。
「ネロ大尉、ナイトアーサーを頼む。……俺は奴の相手をする」
鋭い視線をダークフレイムに向ける鳳天
2人は互いに距離を取りながら相手の出方を窺っていたが、先に動いたのは意外にもダークフレイムの方であった。
彼は両手を広げると高らかに叫んだ。
「来い!!我が炎たちよっ!!」
すると彼の周りに魔法陣が展開されその中から大量の魔物の形の炎が姿を現したではないか!?
それらは皆一様に禍々しい姿をしているが、邪悪な気配は感じず純然たる炎のエネルギーのようだった。
その光景を見て鳳天はこれは召喚魔法ではなく炎の造形魔法だと冷静に分析する。
ここで予想外のことが起こったのだ!
なんと現れた全ての擬似モンスターたちはまるで何かに操られているかのような不自然な動きで一斉に襲いかかってきたのだ!
これにはさすがの鳳天も驚愕し動揺してしまう。
(くっ……!!まさかこんな方法でくるとは……!攻撃パターンが読みづらい!やれやれだぜ、こうなったらこっちも本気を出すしかないようだな!)
彼は覚悟を決めると自身の能力を発動させる体勢に入った。
「我が拳に宿れ、フェニックスヘブン!」
鳳天は改獣フェニックスヘブンの力を拳にまとわせた。
クトゥルフ戦争で女神国最強の剣士"胡蝶蜂剣"と相対した時以来の本気の戦闘モードだ。
「おおおおお、オラオラオラオラオラオララララララアアアアア!!」
フェニックスヘブンの剛腕がダークフレイムの炎獣を次々に打ち砕いていく。
その度に凄まじい衝撃波が発生し部屋全体が揺れるほどだった。
しかし鳳天の表情に余裕はない。
むしろ焦りの色が浮かんでいたくらいだ。
それもそのはず、いくら倒しても次から次へと新しい炎獣が現れるからだ。
ダークフレイムの闘気は底無しか!?
これではキリがないと思ったその時、不意に背後から気配を感じた。
振り返るとそこにはダークフレイムの姿!
炎獣の群を目くらましに後に回り込んだようだ。
咄嗟に迎撃態勢をとる鳳天だったが、次の瞬間驚くべき光景を目にした。
何と突然ダークフレイムの姿がそのまま消えてしまったのである。
(瞬歩無拍子か!!)
鳳天は咄嗟の判断で自身も瞬歩無拍子の足運びでその場から離脱する。
彼がさっきまでいた空間に赤い剣線が閃いていた。
ダークフレイムが腰の剣を抜刀していた。
それは炎の魔剣だった。
「ほう、避けたか。なかなかやるな」
「フン、貴様こそ大した腕前だな」
両者は不敵な笑みを浮かべながら睨み合う。
一触即発の雰囲気の中、両者の激突が始まった!
まず仕掛けたのはダークフレイムの方からだった。
目にも止まらぬ速さで間合いを詰めると、袈裟懸けに斬りかかる。
鳳天はそれを紙一重で躱すとカウンターで拳を繰り出す。
しかし寸手のところで避けられてしまったため、空振りに終わる。
その後も両者一歩も譲らず攻防が続く中、突如ダークフレイムの剣技が変化する。
振り下ろされた一撃を鳳天がガードした瞬間、剣身から紅蓮の炎が噴き出て彼を包み込む。
鳳天はとっさに飛び退こうとするが間に合わない!
炎に包まれる彼を見て勝利を確信したのかニヤリと笑みを浮かべるダークフレイムだったが……!?
「ふん、こんなものか?」
鳳天が無造作に振るった手刀によって生み出された真空波により炎は霧散してしまったのである!
そして鳳天はそのまま反撃に転じると強烈な蹴りを放った!
「ぐはっ!?」
まともに喰らって吹き飛ばされるダークフレイム。
そんな彼に追撃をかけようと距離を詰めようとしたとき、今度はダークフレイムの方が懐に飛び込んでくる。
「うおおおおおおっ!!」
雄叫びをあげながら突進してくるダークフレイムに対して鳳天もまた真っ向から迎え撃つべく身構えるのだった。
「オオオオ!ラララララララァッ!!」
「かああああああああ!かあぁっ!!」
フェニックスヘブンの万物を砕く拳が、ダークフレイムの炎をまといし剣撃が、無数の残像を残し激しくぶつかり合う!
双方の激しい激突で凄まじい衝撃波がそこら中に飛び火していく!
「ひええええ!!」
鳳天に同行してきたイポスが悲鳴をあげている。
「ひ、ひくぞイポス上級兵!あの二人の戦いは明らかに上級武仙同士の闘いだ!破壊の中和が行えない我等がこの場にいても鳳天殿の足を引っ張るだけだ!我らはナイトアーサー殿を担ぎ撤退する!!」
イポスとネロは気を失っているナイトアーサーを担ぎ、激闘が続く部屋を後にするのだった。
………………………………
戦いが始まって既に1時間以上経過しているが未だに決着がついていなかった。
互いに肩で息をしており満身創痍といった様子だが、それでも尚二人は立ち上がって拳を交え続けていたのだ。
「そろそろ決着をつけようぜ……!」
「……望むところだ!」
2人は同時に動いた! 互いの全力を込めた一撃を放つために呼吸を整える。
静寂が訪れる……。
1秒が10分に感じるほど張り詰めた空気の中で先に動いたのは鳳天の方だった。
彼は大きく踏み込むと渾身の右ストレートを叩き込む!
だが、ダークフレイムはその拳を難なく受け止めるとその腕を絡め取って立関節技を極めようとする!
鳳天は瞬時に反応して掴まれた腕を外すと左の裏拳で攻撃するがこれも受け止められてしまう……!
そこから先はまさに一進一退の攻防が繰り広げられていった。
(強い……!流石は噂に名高い銀河連邦ナンバーワンヒーローということか……!!)
(野朗、やるじゃねぇか!まさかここまで苦戦させられるとは思わなかったぜ!!)
そんな感想を抱きつつ、2人は次の一撃で勝負を決めるべく最後の力を振り絞り必殺の構えを取る!
「いくぜぇぇぇっ!!」
「きなっ!」
2人がそう叫ぶと同時に全力で駆け出していく!
そして次の瞬間、2つの影が交差したかと思うとそのまま動かなくなった。
「ち……」
「相打ちか……」
お互い激しく息を切らせ座り込んでいる。
ダークフレイムの仮面がビキビキと音を立て亀裂が入っていく。
やがて音を立てて崩れ落ちた中から現れたのは金髪長髪の偉丈夫であった。
その偉丈夫の素顔を見たとき、鳳天は目を見開き驚いた。
何故ならそこにいたのはかつてクトゥルー教団やメフィストギルドと何度も死闘を演じ、世界の危機を幾度も救ってきた英雄だったのだから……。
「……貴様、生きていたのか……?」
その言葉に男は首をかしげ、たずね返してきた。
「? 俺を知っているのか? もしかしてあんた俺の知り合いか? もしそうだとしたら悪いな。今の俺は記憶を失っているんだ。」
そう言って立ち上がると彼は鳳天に背を向け逃げ出した。
彼がボスのスタンピートから受けた任務は時間稼ぎ。
大魔王の復活を果たすまでの間、銀河連邦最強のフェニックスヘブンを足止めすることである。
充分な時間は稼いだはずだ。
義理は果たした。
そもそも、自分の本当のボスはスタンピートではない。
ジルドレェ財団のCEOミスティルが彼の本当のボスだ。
(……ったくウチのCEOは何をとち狂って地球に投降なんかしたんだ? おかげで裏切りを帳消しをしてもらうためスタンピートに顎で使われる羽目になっちまったよ……それにしても、フェニックスヘブンのさっきの反応が気になるな。あいつ俺の失った記憶について何か知っているのか?)
そんなことを考えながら、彼は一人戦場を後にしたのだった。
その後、しばらく経って調息でようやく回復した鳳天は急いで仲間たちのもとへ向かった。
ついさっき目にしたダークフレイムの正体を、どのタイミングで仲間達に明かすべきか思案しながらも、今は任務を優先することを考えた。
(……やれやれだぜ。生きていたのか……シグルド・スカーレット)
そう、ダークフレイムの仮面の下の正体
その男は織音主水と双璧なした、元HEROランキング一位の伝説的英雄
初代ロート・ジークフリードことシグルド・スカーレットであった!!
https://www.facebook.com/reel/424683557299727/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0
↑イメージリール動画




