乂阿戦記4 第六章 強欲の魔王アモンの娘 乂聖羅-18 支配の騎士”塵芥鏖”と戦争の騎士ダークフレイム
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一方その頃、雷音達はと言うと、既に全員ボロボロの状態になっていた。
(くそッ……!このままじゃ全滅だ!こうなったら一か八かアレをやるしかない!!)
そんな考えが脳裏に浮かんだ次の瞬間だった……!!
突如空が暗くなったと思い空を見上げると巨大な黒い塊が出現したのだ。
それを見て誰もが愕然とする。
「あれはまさか!?」
そんな声があちこちから上がるなか、鵺が叫んだ!
「間違いないわ!あれは擬似ブラックホールよ!あれが完成する前に解体しなければ、私たちはあの穴に吸い込まれてしまうわ!!ああ!?だめ、間に合わない!! 急いで逃げて!!!!」
その声を聞いて皆が一斉に走り出す。しかし時すでに遅し……ついにその時が来てしまったのである。
グニャリと空間が歪み、世界が歪んだその瞬間、まるで何かに吸い寄せられるように次々と人が飲み込まれていく。
そして最後に残ったのは雷音と獅鳳だけになってしまったのだった。
「ぎゃははははは!だらしねぇなぁオイ! 魔法学園の生徒さん達よお!」
この部屋の門番支配の騎士塵芥鏖が雷音達を嘲笑う。
白いローブを着た痩躯の男は、右手に黒い玉を持っていた。
黒い玉の中には雷音達の仲間が囚われ気を失っている。
「負けを認めて投降しろよオラァ? てめえら雑魚に、この塵芥鏖様がやられるわけねえだろが?」
そんな彼に対して雷音が啖呵を切るように叫ぶ。
「うるさいっ!黙れぇぇえええ!!!」
その叫びに応えるかのように雷音の体から炎が発生!
ゴウゴウと音を立てて燃え盛る炎を纏いながら、彼は敵に向かっていく!
「いくぞぉぉおおお!!!!」
雄叫びをあげながら突っ込む彼を迎え撃つべく敵も弓を構え放ってきた!
それを難なく躱すとすれ違いざまに蹴りを入れる!
だが、その攻撃は読まれていたらしくあっさりと受け止められてしまった!
「ぎゃははははは!俺様の権能は支配!俺様の視線が届く範囲にあるものはな……質量も速度も、重力も運命も……全部俺が支配できるんだよォ!俺は空間を支配して、てめえの仲間を疑似ブラックホールに捕らえた!てめえの蹴りも支配してまるで効かねぇ、へなちょこキックに変えてやったぜえ!」
(くっ……!やっぱりこいつ強い!! 支配ってなんだよ!? 思ったことが何でも思い通りになる能力だってか!? チートすぎるぞその能力!でも負けねえ!!絶対に倒してやる!!)
雷音一人だと絶対この恐るべき敵には勝てないだろう。
だが、今回彼には味方がいる。
そう、魂の双生児たる龍獅鳳が共に戦ってくれている!
そんな彼が一歩前に出てこう言った。
「ここは任せてくれ」と。
その言葉を聞いた瞬間、雷音は驚きのあまり固まってしまう。
いや、確かに彼に戦いを任せること自体は問題ないのだが、問題は別のところにある。
あの恐るべき塵芥の能力に対しどのように対処するかと言う問題である。
すると今度は獅鳳が口を開く。
「心配しなくても大丈夫だよ雷音。俺には考えがあるからね。だから安心してそこで見ていてほしいんだ。そして奴を分析して作戦を立ててくれ。俺の読みが正しければ一見無敵に見えるあいつの能力にも攻略法がある!というか幸いにも俺たちはそれを持っている!じゃあ行ってくるよ!」
そう言って駆け出す獅鳳の背中を見送ることしかできない雷音であった……。
「おらぁ!!くらいやがれぇ!!!」
そう言うと塵芥は再び矢を放つ。
その数実に20本!!
しかもそれぞれが違う軌道を描きながら襲い掛かってくる!!
まさに絶体絶命の状況下において獅鳳は冷静沈着にこう呟いた。
「……よし、これでいいかな」
次の瞬間、獅鳳の体が光輝き始めたではないか!
「幸いこの施設の壁材は磁性を帯びている。俺の術式が活きる場だ──!」
床に手を起き電磁石の力を発動してるのだ。
電磁力に引っ張られ矢が落ち床に張り付く。
「ケ!小細工を!!」
だがそれだけではないようだ。
なんと刺さったはずの矢が再び浮き上がり一斉にこちらへ向かってきたのである!!!
それも先程よりも速度を増してだ!!!!
これにはさすがの獅鳳もかなり驚いた様子であり動揺を隠しきれないようであった……!!
しかしまだ余裕はあるようで不敵な笑みを浮かべていた…………
「はあ!」
獅鳳は電磁力の出力をより高く上げ、より強く矢を地面に押さえつける。
その時だった!!!!!!
ズガァァアアアン!!!!!
凄まじい轟音と共に突如天井が崩れ落ちてくる!!
獅鳳が戦っている最中、突然天井に大きな亀裂が生じたかと思うとそこから大量の水が流れ込んできたのだ!
これにより一階は完全に埋もれてしまい、二階部分も一部が崩壊してしまうほどの被害が出てしまった。
「ぎゃはははは!さあコレでもう電気は使えねえな?感電しちまうもんなあ?」
勝ち誇ったように笑う塵芥だったが、そんな彼とは裏腹に獅鳳は全く焦っていなかった。
むしろ笑っているくらいだったのだから……。
そしてその理由はすぐに判明することとなる。
なぜなら獅鳳が口を開いたからだ。
「いや、使えるさ……」
その言葉に一瞬呆気にとられたような表情を浮かべた塵芥であったが、その直後とんでもないことが起こったので思わず驚愕してしまう!
なんと先程まで崩れかけていた瓦礫の山の中から、無数の小さな光の粒が出現したのである!!
その光景を見た雷音は目を見開き叫んだ!
「あれは……!」
間違いない!
電磁力をまとった砂鉄だ。
どうやら彼は事前にこの建物内に仕掛けをしておいたようである。
そしてそれらを同時に操作する。
砂鉄が一斉に動き出し、塵芥めがけて一直線に向かって行く!
当然塵芥もただではすまないはずだと思い身構えた!!
なんと塵芥の体に付着した砂鉄がみるみる形を変えていき、そのまま敵の動きを封じてしまったのだ!!!
(なにぃ!?)驚く暇もなく全身を拘束されてしまった塵芥は身動きが取れなくなってしまう……。
そんな彼を嘲笑うかのように獅鳳は言った。
「これでお終いだ」
その言葉を聞いた瞬間、塵芥は獰猛な肉食獣のように歯を剥き出しにして笑い出した。
「ぎゃははははは!調子こいてんじゃねぇぞ三下ぁ!この程度でこの塵芥鏖様を止められると思うなよ!!」
そう叫ぶと全身に力を込め始める!! すると次第に見えない手に引っ張られ、拘束している砂鉄が剥がれていくではないか!
それを見た雷音は思わず息を飲んだ……!
「馬鹿な!あの状態から脱出するだと!?」
獅鳳も予想外だったのか驚きを隠せない様子だ。
だがすぐに冷静さを取り戻し次の手を打ってくる!
「ならばもう一度動きを止めるまでだ!」
そう言うと再び砂鉄の弾丸を発射させる!!
それは見事に塵芥に命中したが、みえない壁に反射され獅鳳に向けて弾き返された。
「うお!?」
とっさに雷杖ドゥラグラグナで砂鉄の弾丸を防ぐ獅鳳だったが、そのあまりの威力に後方へと吹き飛ばされてしまう!!
明らかに獅鳳が放った弾丸の倍以上の威力だった。
「……っぐう……!」
なんとか踏みとどまったもののダメージは決して少なくはなかったようで苦しげに呻いていたが、それでもまだ闘志を失ってはいなかったようで鋭い眼光で敵を睨みつけている……!!
一方その頃、別の部屋の攻略に向かっていたナイトアーサー達はというと……。
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「ガハッ!!」
銀河連邦ヒーローランキング三位のナイトアーサーが完膚なきまでに叩きのめされ膝をついていた。
「つ、強い!強すぎる!この強さ…フェニックスヘブン級じゃないっスか……」
ナイトアーサーは圧倒的なまでの力の差を見せつけられ愕然としながらも何とか立ち上がろうとするが、もはや立ち上がる気力すら残っていない状態だった――
戦争の騎士ダークフレイムはナイトアーサーに止めを刺そうとはせず、悠然と腕を組み見下ろしている。
「無駄な抵抗はよせ、おとなしく投降すれば命までは取りはしない」
しかしそんな彼の言葉などまるで聞こえていないのか、ナイトアーサーは再び立ち上がり拳を構えるのだった……。
(俺は今、ピンチに陥っている……何故なら目の前に立っている戦争の騎士によって窮地に追いやられているからだ……くそっ!どうすればいいんだ……?このまま大人しく捕まってしまうしかないのだろうか? いやダメだ!そんな事したら同行した仲間達が危険に晒されてしまうかもしれない……それだけは何としても避けなければ!でもどうやってこの状況を切り抜ける……?考えろ!考えるんだ俺!!…………そうだ!そうだよ!!俺にはまだアレがあるじゃないか!!!これを使えばなんとかなるんじゃないか!?よし決めたぞ!早速使おう!!さぁ来いこいこいッ!!!!)
ナイトアーサーは聖剣エクスカリバーの力を借り磁力の力を発動しようとする。すると、そんな彼の行動を察知したのか、戦争の騎士が剣を構えて突進してくる……!
それを見た彼は慌てて剣を盾のように構えて防御体勢を取るのだった……!!
「ぬおおおおおおっ!!!」
直後、激しい衝撃と共に火花が飛び散る……!!
(ぐっ!!なんてパワーだ……!!だがボクも負けちゃいねぇ!!この剣に誓おう。いかなる敵にも屈せぬことを──それが、騎士の矜持だッ!!!)
気合いを入れ直し、両手でしっかりと柄を握り直すとさらに力を込めていく……!!
そしてついに敵の力を上回り始めたのか徐々に押し返し始めるのだった……!!
(よっしゃあ!!行けるぜぇぇぇっ!!!!!)
だがそれは勘違いだった。
押し負けたのはナイトアーサーの体勢を崩すためのフェイクの引き技だったのだ!
ナイトアーサーは引き寄せられる風に前のめりに転倒する。
そしてダークフレイムにより一瞬の間に背後に回られたことで無防備になった背中を鞘を納めたままの剣で関節部を打ち抜かれたのである!
「カアアアアアアアア!!」
裂帛の気合とともに、放たれる突きの攻撃は二度三度ではなく何度も何度も執拗に繰り返される!
ガコ、ガコ、ガコ!
身体中の間接を外され糸が切れた人形のように倒れるナイトアーサー
あまりの激痛に悲鳴を上げずにはいられないほどの苦痛であったに違いない……。
身体中の関節を外されたのだから!
だが流石は銀河連邦ヒーローランキング三位の男!
「引き寄せろ!エクスカリバーーーーーー!!」
ナイトアーサーは最後の力を振り絞り、磁力を操って、鋼鉄製の巨大な扉をダークフレイムに投げつけた!
「……見事だ」
ダークフレイムが初めて鞘から剣を抜く!
「これが君の全力に対する俺の返事だぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その瞬間、眩いばかりの光が溢れ出す! そしてその光は一瞬で膨張し爆発的なエネルギーへと変換される!
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
次の瞬間、とてつもない轟音とともに鋼鉄製の扉が吹き飛ばされた!
「ぐわぁぁぁあっ!?」
爆風に巻き込まれ壁に叩きつけられるナイトアーサー。
その衝撃で鎧の一部が剥がれ落ち、素顔が露わになる。
その顔は端正で美青年と呼ぶにふさわしいものだった。
そんな彼の顔が今、苦悶に歪んでいる。
口から血を流し、息も絶え絶えといった様子だ。
ダークフレイムは素早い当身の一撃でナイトアーサーの意識を奪う。
これ以上この敬意あるべき敵を苦しめたくなかったのだ。
その後気を失ったナイトアーサーの関節を元に戻し、緑の鎖が描かれた巻物を取り出す。
巻物から緑の無数の鎖が現れ、気を失っているナイトアーサーを拘束した。
こうして戦いは終わったのだった……。
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↑イメージリール動画




